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外国人エンジニアが日本で働きたがらない理由

Why foreign tech professionals do not want to work in Japan

2017.05.26

Updated by Mayumi Tanimoto on May 26, 2017, 09:49 am JST

書籍の取材のため、イギリスの北部や地方を回っています。

イギリスの地方の多く、特に北部というのは、製造業や重工業、それらを支える炭鉱で栄えていた所が多く、80年代のサッチャー改革で、イギリスが金融や情報産業で稼ぐようになってからは斜陽の一方で、その多くは過疎化しています。EU離脱に投票したのもそういう過疎地が少なくありません。

サッチャー首相が生まれ育ったグランサムという街もその典型で、駅の周辺はスプレーの落書きだらけ。街の中心部からはチェーン店すら撤退しシャッター商店街化しています。倒産した店屋は東欧の食材店に入れ替わり、街の風景は、どうみてもチェコやブルガリアの田舎町です。

街を歩いているのは、白人の老人、物乞い、リコーダーを吹いて唸っている頭のおかしい男、東欧から出稼ぎに来た若い人達ばかり。街を歩いていると聞こえるのはポーランド語やリトアニア語で、露出度の高いヒョウ柄の服を来たギャル系化粧の東欧の母親は、大勢の子供を連れて歩いています。イギリスは医療費が無料なのでどんどん産むのです。

こういう街は不動産も生活費も安く、場所によってはロンドンまで通勤するのも不可能ではないこともあります。

しかしIT系の技術者や管理者はこういう街には絶対に住みません。グループウェアやVoIPを使いこなせば遠隔で仕事は可能ですし、時々打ち合わせに行くことだって可能です。そもそもロンドンの会社は在宅勤務を進めている所も多い。しかしこういう街の不動産がロンドンの数分の一で、治安がよく、物価が安くても、住みたがりません。

ITの発達で遠隔で仕事できる時代になったのに、人はどんどんロンドンやケンブリッジやオクスフォードに吸い寄せられています。高収入のテック系の人々が集まる地域の不動産はどんどん高騰し、物価も人件費も上がります。

これはイギリスだけではなくカリフォルニアやニューヨーク、オースティン、トロントのようなテック系企業が集積する街も同じです。国内だけではなく海外からも人が集まってきます。私が学生だった20年ぐらい前は、ITが発達すれば人は分散し、大都市集中も緩和するとかいわれていたのに、なぜか反対になっているのです。

なぜテック系の人々は特定都市に集まるのか?

仕事があること、報酬が得られること、住環境が良いことも重要ですが、刺激を得られるコミュニティの有無が思った以上に重要です。

リモートで仕事できるとはいっても、ビジネスのアイディアや技術の情報交換には対面が重要ですし、非公式な集まりからアイディアが浮かんで起業に発展することもある。創造性の高い人達と集まっていれば色々学べますし刺激も多い。

したがって、遠隔で仕事できるのにも関わらず、人は特定地域に集中します。シリコンバレーやケンブリッジの魅力というのは、創造性の高い人に出会えるコミュニティがあることです。このコミュニティこそが、アイディアや仕事が産まれる「仕組み」です。

シリコンバレーでプログラマをやっていたアメリカ人の友人が一時期東京で働いていましたが、一番の不満は、テック系のコミュニティが薄いので、相談したり、議論できる人が少ないこと、自分の組織外の人と出会う機会も限られていることでした。彼は起業志向だったので、東京は一緒に何かやろうという人が少ないことにも失望していました。

日本政府は高度人材の受け入れを増やすために、新たな在留資格を設けたり、永住権取得期間の短縮を打ち出していますが、優秀な人材は何を求めて移動するかというのが全くわかっていないという他ありません。

そもそも日本は賃金は安いし、テック系人材の評価も低い。就労環境も悪いのですが、一番欠けているのが、「コミュニティ」です。

これはビザの要件を緩和とか、高い報酬を出すだけでどうなるという話ではないのですが、気がついていない人が多いような気がします。日本の外を見たことがない人、体験したことがない人が多いからでしょう。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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