WWNトップ » 3.11からのレポート 震災と今後のコミュニケーション

3.11からのレポート 震災と今後のコミュニケーション

3.11からのレポート 震災と今後のコミュニケーション

ISN公開セミナー「東日本大震災と自治体ICT」レポート【後編】

2012.01.25

「震災時に発生する業務をSaaS化して国が提供すべき」仙台市 今井建彦氏

最後に登壇したのは、仙台市総務企画局情報制作部三時謙情報政策課長の今井建彦氏。「東日本大震災における自治体の対応」と題して、仙台の被災と復興状況、およびその過程から、自治体復旧のためにあらかじめ準備しておくべき枠組みについて述べた。


仙台市総務企画局情報制作部三時謙情報政策課長 今井建彦氏

仙台市は、市街地こそ大きな被害はなかったが、湾岸部はかなり酷い状況で、内陸部に最大で5キロメートルまで津波が侵入している。津波以外にも地滑り被害が数多く発生しており、昭和30〜40年代に開発された造成地を中心に、約2千件にもなるという。

その中で情報システムについては、直後の停電によって多少の損害はあったものも、サーバーについては被害はなかったという。13日に電気が復旧してからは、サーバー機能を徐々に回復させていった。

ネットワークに関しては、仙台においても固定電話がつながりにくい状況が続いていた。また、インターネット接続も断線によって東京のIXから切断されてしまったため、仙台市のウェブサイトが外部から見えない状態となった。これは、東京のデータセンターに仮ウェブサーバーを設置することで対応した。

このように仙台市としては、システムに大きなトラブルが亡かったものの、周囲の自治体を見ていると、庁舎や情報システムそのものを失ったことにより、自治体としての機能を十分に発揮できない自治体が発生していることに気がついたという。さらに、罹災証明の発行や、避難所運営など震災時特有の行政事務が急増したことも上げられるという。

それに対して「自治体がなくなってしまうと、災害復旧ができないことになる。自治体の機能が失われたときに、迅速に復旧させるための枠組みを作っておく必要がある」と今井氏は考えているという。

自治体業務復旧のための枠組み整理にまず必要なのは、そのための訓練された人だ。さらに、それを支えるための情報システムも必要となる。これらを用意しておいて、いざというときに投入することで、素早い自治体機能の復旧が可能になる。さらに、自治体の規模が大きければ大きいほど、カバーするためのリソースも大きくなる。今井氏は「こういったものは一つの自治体が作るのではなく、国に支援をお願いしたい」という。

また、災害時の通信確保についても、ケータイの特定周波数を確保し、それに合わせて事業者間で共有可能な移動基地局を投入するといった、枠組みを作っておく必要があると提言した。

また、震災時に発生する業務は、ある程度、定形化できるもの多いため、マニュアル化することが可能だという。仙台市にもピーク時には他の自治体や国などから、延べ300人程度の応援職員が駆けつけた。しかし、そういった人たちは、仕事に慣れた頃に帰ってしまうため、業務効率が悪い。さらにどういった業務は、法律の改正によって修正も必要となるので、そういったフォローもしつつ、SaaS方式で国が自治体に公開することを要望したいという。

「地方自治情報センターでオープンソースソフトで用意しているが、例えば仙台なら100万人分のデータをインプットしなければならないと、サーバーを買ってきてソフトをインストールしデータを入れなければならない。しかし"買う"というのは自治体としてはやりにくい。そのため国に常設していただいて、自治体が利用する方がよい。そうすれば他の自治体からの支援にも行きやすくなる」(今井氏)

最後に、東日本大震災被災地自治体ICT担当連絡会(ISN)の発起人のひとりとして、ISNの活動の中で、こういった発表の場を今後も作っていきたいと、決意を述べて発表を終えた。


1  2  3  4

クロサカタツヤ(くろさか・たつや)
株式会社企(くわだて)代表。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)在学中からインターネットビジネスの企画設計を手がける。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、次世代技術推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事。2007年1月に独立し、戦略立案・事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策・ M&Aなどのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。

バックナンバー記事一覧