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インサイド・アウト

RIMの本当の危機とは

2011.06.20

「カナダの誇り」としての悩み

問題は、この危機からの出口をどこに求めるかである。

欧米的には、どこか有力なところに買収してもらうことで、既存のユーザーへのサービスを続けられるようにすることが、最も一般的な解である。

しかし、ここで問題になるのは、RIMはカナダの会社であることだ。カナダはかつて、ノーテルが世界で活躍していたことでもわかるように、高い技術を持つ「テレコム王国」であった。テレコム・バブルの後遺症でノーテルが解体されてしまった現在、「テレコム王国カナダ」の誇りを受け継ぐ最後の砦がRIMなのだ。

一方、現在スマートフォンで成功しているのはシリコンバレーの会社ばかり。過去まで遡っても、上述のパームに加え、前図の上から二番目の「サイドキック」を出したデンジャーもシリコンバレーのスタートアップだ。パームは同じシリコンバレーのHPが買収したのに対し、デンジャーを買収したのはよそ者のマイクロソフトであったが、創業者アンディ・ルービンはその後Android社を設立してグーグルに売却、現在はグーグルAndroidの総帥となっている。いわば、日本企業内で人が異動するのと同じで、会社がなくなっても、人はシリコンバレー内でぐるぐる廻り、脈々とDNAが受け継がれている。

話を戻すと、そういうわけで、RIMの売却先候補として名前があがるのは、シリコンバレーの会社か、マイクロソフトか、少し前にはノキアなど、「外国の会社」ばかりなのだ。カナダ政府やカナダ国民の感情としては、どうも上手くいかないように思う。

同じように業績が悪化し、マイクロソフトが買収するとの噂が絶えないノキアも、同じ悩みを抱える。フィンランドのGDPの3%を生み出す同社を、アメリカの会社に売却するというのは、フィンランド政府・国民としては許しがたいだろう。ノキアがシンビアンを捨て、Windows Phone7をプラットフォームとして採用すると発表した直後に、ノキアの組合が反発し、辞職する従業員が相次いだと言われている。

国籍の話だけではない。前述のデンジャーは、マイクロソフトが買収した後、結局うまく活かすことができず、かつての人気端末サイドキックは消滅、後継となるはずだったKINは、発売してすぐに撤収という大恥をかいて、デンジャーのDNAはもうほとんど残っていない。マイクロソフトが買収した会社がたどる末路の典型であり、RIMもノキアも、そうはなりたくない。しかし、韓国や中国の会社が相手では、ますます文化摩擦が大きい。

実は企業のIT管理者にとっては、今でもiPhoneやAndroidよりも、ブラックベリーのほうがありがたい。すでにサーバーがはいり、業務フローもそれに最適化されている中で、iPhoneやAndroidに対応するのはコストも手間もかかる。セキュリティも心配だ。しかし、従業員、特に偉い人たちは、今や流行遅れになったブラックベリーではイヤで、カッコイイiPhoneを使いたい。

ブラックベリーに対する、根強いニーズは今でも存在する。RIMもそれはわかっていて、新発売のタブレット「Playbook」でも、企業ニーズ対応を中心に据えている。しかし、スマートフォンの大衆化の大波の中で、このニーズにきちんと応えるためには、OSやデザインやマーケティング面でもiPhoneやAndroidに対抗しなければならず、それだけの規模を確保する方法として、適切なパートナーが見つからない。

スマートフォン業界の人もエネルギーもますますシリコンバレーに集中する流れの中で、RIMのDNAをうまく継承して育てる方法が見つからない。RIMの悩みは深い。


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海部美知海部美知(かいふ・みち)
ENOTECH Consulting代表。NTT米国法人、および米国通信事業者にて事業開発担当の後、経営コンサルタントとして独立。著書に『パラダイス鎖国』がある。現在、シリコン・バレー在住。
(ブログ)Tech Mom from Silicon Valley
(英語版ブログ)Tech Mom Version E

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