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世界の話題

第四次世界周波数バトルを斬る

2010.08.20

2. 「iPhone 3G」の奇跡

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(cc) Image by Gonzalo Baeza H

それでもなんとか、3Gでは、緑色の「IMT-2000」の周波数帯にほぼ全世界の主要キャリアが集まり、無線方式もついに統一された。

形の上で3Gにそろったといっても、キャリアが設備投資を行ってサービスを展開しなければ意味がない。

日本では、過密東京で2Gユーザーが爆発的に増えて無線容量が逼迫し、必要に迫られ、2000年代前半には早々に3Gが広がった。2G上で「iモード」が人気を博し、「モバイル・データ」に対するユーザーニーズが早いうちから盛り上がったことも手伝っている。

一方米国では、ベライゾンは2G・3Gの間で後方互換性のあるCDMA2000系技術だったため比較的迅速に移行が進んだが、AT&Tは互換性のないTDMAからW-CDMAへの移行であり、同じ周波数帯内で2Gユーザーを収容しながら少しずつ移していくため展開が進まなかった。それでも、2005年頃からの「Web2.0」ブームに乗ってモバイル・データへの注目が高まり、米国の3G展開も本格化した。

欧州ではさらに3G展開は遅れた。欧州の3Gオークションはバブル末期に当たってしまい、バブル崩壊後、免許料と設備投資の両方が重くのしかかって、キャリアの展開ペースが遅れた。また、モバイル・データへのニーズも日米ほど強くない。このため現在でも、主要都市ではまだよいが、少し郊外に出ると3Gはない、という状況が続いている。(「世界のモバイル事情・欧州編(4)」参照)

現在、アップルのiPhoneやiPadは、世界でほぼ同時に発売され、また主要都市どこに持って行ってもそのまま国際ローミングできる。当たり前のように感じるが、実はこうした各国キャリアの長い間にわたる苦労と投資の末、ようやく周波数と方式が統一され、サービスも先進国ではほぼ出揃った成果なのである。

携帯電話端末の分野としては全くの新参者であるアップルが、短期間にこれだけ世界で広く普及したのも、このためである。販売面だけでなく、同一のハードウェアで対応できるために、量産効果は大きい。以前のように各国ごとにバラバラだったら、それぞれの国の仕様に対応する技術者を大量に抱え、販売網とまとまった生産量を持つ既存ベンダーに、アップルが勝てたかどうかわからない。

そして、今後は後述のように、また周波数と方式が地域ごとに分散していきそうな勢いであり、すべての条件がそろった今、見事に大当たりした「iPhone 3G」は、まさに「奇跡」のようなタイミングである、と筆者は思っている。


海部美知海部美知(かいふ・みち)
ENOTECH Consulting代表。NTT米国法人、および米国通信事業者にて事業開発担当の後、経営コンサルタントとして独立。著書に『パラダイス鎖国』がある。現在、シリコン・バレー在住。
(ブログ)Tech Mom from Silicon Valley
(英語版ブログ)Tech Mom Version E

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