| 前の記事 | ユーザーとキャリアの協業でカバレッジを広げるキャリアIQの技術 | 最近の ニュース |
99ドル定額制をフィールドテスト中のベライゾン。バージンは40ドルのモバイルBB | 次の記事 |
|---|
この「青」の周波数帯では、上記のようにハーモナイズが難しいことは重々承知しているが、それでも敢えて、筆者は日本でも900MHzとのペアでなく、米国と極力合わせた700MHz内でのペア割り当てをすべき、とかねてから主張している。それはなぜか。
まず、筆者の「世界のモバイル事情」連載でも何度か述べ、またこの記事でもこれまで見てきたように、「ユーザーのニーズ」が米国と日本は似ている。米国と日本は先進的なユーザー(上位レイヤーのアプリやサービスを提供する企業も含む)を多く抱え、ニーズが先にあって無線容量が逼迫し、必要に迫られて新技術・新周波数を先行して導入するが、あとに続く欧州・新興国との間にギャップができるという経緯を経ることが多かった。
米国のネット企業が主導する「クラウド+モバイル」への趨勢の中で、米国同様にこうした使い方に敏感なのが日本のユーザーである。動画などのリッチメディアや、ユーザー生成コンテンツの利用も進んでいる。欧州や新興国ユーザーが「音声+SMS」から「クラウド+モバイル」へと移行するにはまだ時間がかかり、そのニーズが周波数需要に反映されるのはまだ先のことだろう。とりあえず米国と周波数・方式を合わせておけば、iPhoneのような新しい端末や、クラウド系の新サービスをいち早く日本でも展開できる。日米市場では、そうしたユーザーのニーズに引っ張られて、先端のサービスが生まれてくる。
また、今後のIT産業の大きな方向性としても、米国と同じプラットフォームを使って、アプリやサービスを迅速に対応することができ、また日本のベンダーが米国に対して売り込むチャンスもできる。この分野での主戦場は、現在のところ米国と日本。端末もインフラ機器も、新興国を従えた欧州が物量で世界を制覇してしまった現在、ハードウェアで日本ベンダーがかつての栄光を取り戻す余地は少ないが、最先端のアプリやサービスの市場はこれから作っていくものなので、挽回は可能だ。
さらに、それであっても700MHzで十分な帯域を確保することが物理的に不可能ならば仕方ないが、現状を見る限り、調整は可能なのではないか、と筆者には思える。アナログ跡地に隣接して、たまにしか使わないと言われる放送用FPUが占有する部分があり、ここを次世代用に開放することはできないか。あるいは、アナログ跡地のうち一部をITS(高度交通通信システム)にも割り当てることになっているが、それは本当に必要なのか。現在の住民に、例えば費用を払ってお引越しいただく(地上げとは言わないでおこう)といった調整はできないのか。
確かに、こうした調整には時間も手間もかかる。(日本でも周波数オークションができれば、こうした「お金」での迅速な調整が容易になると思われるのだが、それはまた別の話。)また、日本独自周波数にしてしまえば、国内機器メーカーの市場を守ることにはなるだろう。しかし、こういった保護主義政策は国内メーカーの競争力をますます失わせることになり、長期的には害となりかねない。LTEは多くの周波数に対応できるよう規定されており、デュアルバンドのチップを作って異なる周波数に対応することはもちろん可能だが、全世界のわずか3%しか加入者のいない日本に、例えばアップルが迅速に対応モデルを作ってくれるかどうかは大いに疑問だ。
つまり、例え話的に言えば、米国と異なる周波数を使うと、日本でiPhoneが使えなくなってしまう可能性があり、そうなればユーザーは不便になり、アプリやクラウド(企業向けも含む)でも日本が「ガラパゴス化」する。
「ユーザー・ニーズが引っ張る」日米の市場特性と、「クラウド+モバイル」の今後の産業趨勢を鑑みて、日本でも米国と700MHz周波数をあわせる長期的な利点のほうが、調整コストや日本の機器ベンダーが(今や小さくなってしまった日本国内の)市場を失うリスクと比べて、もっと大きいと筆者は考えている。
海部美知(かいふ・みち)
ENOTECH Consulting代表。NTT米国法人、および米国通信事業者にて事業開発担当の後、経営コンサルタントとして独立。著書に『パラダイス鎖国』がある。現在、シリコン・バレー在住。
(ブログ)Tech Mom from Silicon Valley
(英語版ブログ)Tech Mom Version E
| 前の記事 | ユーザーとキャリアの協業でカバレッジを広げるキャリアIQの技術 | 最近の ニュース |
99ドル定額制をフィールドテスト中のベライゾン。バージンは40ドルのモバイルBB | 次の記事 |
|---|