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中国オンラインゲーム市場シェア57%のテンセントが世界を飲み込む日

2013.09.11

Updated by Tomonari Nomura on September 11, 2013, 12:30 pm UTC

7月の下旬に上海で開催されたChina Joyというゲーム展示会にいってきました。学生たちの夏休みにあわせて開催されるため、最高気温は40度に達する超猛暑の中、中国のゲーム市場の勢いを肌で感じてきました。そこで、今回は中国のゲーム市場をおさらいしてみましょう。

中国のゲーム市場の90%超はPCオンラインゲーム。2017年にはほぼ倍の168億ドルに成長

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(出典:IHS Game Intelligence, 2013.8 )

2000年以降、政策として中国ではコンソールゲーム機の販売と輸入が規制されてきました。欧米ではゲームに対する支出額の6割近くがコンソールゲームへ使われていますが、中国ではその代わりにPCゲーム市場が異常に肥大し90%超のシェアとなっています。そしてその規模は89億ドル(2012年)と、米国のコンソールのパッケージゲーム市場をすでに20億ドル上回っています。更に、IHSでは5年後の2017年には約2倍の168億ドルまで成長すると予測しています。

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(出典:IHS Game Intelligence, 2013.8 )

そして、巨大な中国のオンラインゲーム市場の半分近くを支配している会社がテンセント(騰訊)です。2011年時点で38%だったシェアは翌年の2012年には43%、そして今年の1Qでは57%、とその勢いをますます加速し、2位以下を大きく引きはなしています。

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市場環境の変化をチャンスに変えてゆく投資巧者 テンセント

テンセントという会社、この連載を読んでいる方はほとんどご存知の方が多いでしょう。昨年ゲームパブリッシャー世界最大手のEAとアクティビジョン・ブリザードの年間売上をはじめて抜いて世界1位のゲーム会社となったというニュースも記憶に新しいでしょう。最近ではユーザ数が4億人を超えたWeChatを持つ会社として、更につい最近発表された中国インターネット100社番付2013で1位になったというニュースもありました。

私がChina Joyで上海に滞在している間にアクティビジョン・ブリザード社とその経営陣が率いる投資会社ASACが、親会社である仏大手メディア企業ビベンディに対して80億ドル規模のMBOを行い独立するというニュースが発表されました。かなり大型です。初回報道からやや情報が錯綜はしましたが(同行していた同僚のアナリストにもホテル滞在中にも電話取材がきたりする一幕もありました)、結果的にテンセントはそのASACを介して約5億ドルの間接出資することでアクティビジョン・ブリザードの6%のシェアを持つ大株主となりました。テンセントがあのアクティビジョン・ブリザードの大株主になるとは、時代を感じざるをえません。

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(出典:IHS Game Intelligence, 2013.8 )

テンセントを不動のNo1に押し上げた2つのフラッグシップ・ゲームがあります。CrossfireとLeague of Legends(LoL)というゲームでMOG(Multiplayer Online Game)と呼ばれるジャンルのものです。従来オンラインゲームで主流であった大規模参加型のMMOG(Massive Multiplayer Online Game)に対して、比較的に少人数でパーティーを組んで遊ぶ形のMOGが欧米では盛り上がりつつあり、その市場を中国に生むきっかけとなったのがCrossfireでした。自社のメッセージングサービスQQ のユーザへの訴求もうまくいったこともあって、テンセントのオンラインゲーム売上の25%を占めるゲームにまで成長しました。しかし、これはライセンス契約で取得したゲームでした。
そして2011年に、テンセントは当時の自社最高額となる3.5億ドルでRiot gameを買収し、MOGとして欧米圏で大人気であった「League of Legends(LOL)」を今度はIn-houseゲーム(自社開発)としてポートフォリオに組み込むことに成功します。

Crossfireは大成功を収めました。しかし同時に、収益源の大半が他社からライセンスされたゲームに依存している状態はとても不安定です。過去に中国のThe9という会社がWoWというブリザード社の世界的MMOGのライセンスを取得し成功をおさめました。その結果、2008年当時で会社全体売上の91%をひとつのゲームが占めるという状態になってしまいました。しかし、その翌年になんと契約更新に失敗するという惨事に見舞われ、(その結果、その年の売上は前年比で56%(1億1600万ドル)も下落してしまいました。)。そういった意味でラインセンスと自社開発(in-house)のポートフォリオをバランスよく保有することは、キラーゲームが生まれた次のフェーズにおいて、重要な課題となります。

この点においてRiot gameの買収は大きな意味を持ちました。結果的にLoLは中国のMOBA市場(Multiplayer Online Battle Arena)の65%シェアを占有する怪物ゲームに育つと同時に、欧米のゲームコミュニティにアクセスできるようになったテンセントは海外進出へ大きな布石を手に入れることとなったのです。
その後、テンセントはアクティビジョン・ブリザード社と長期的な戦略的提携を結び、世界トップのFPS(一人称シューティングゲーム)型MOGゲームである「Call of Duty」の中国オンライン版を開発すると発表しました。さらにゲーム市場のもう一方の雄であるEAとも提携し、FIFA ONLINE3を2013年Q4にリリースすると発表しています。このゲームは韓国のネットカフェで6%のアクティビティシェアを持つ人気ゲームです。このようにテンセントはポートフォリオの改善の手綱を緩めません。

テンセントはCrossfireとLoLの2つのゲームを収益エンジンとして更に投資を加速させています。2012年3月韓国のメッセンジャーアプリKAKAO TALKに6,290万ドルを出資し13.8%の株式を取得、2012年7月、EPICゲームに4億ドル出資し40%のシェアを獲得。そして今月は冒頭に書いたアクティビジョン・ブリザード社に5億ドルを出資して6% の株式を取得し大株主になっています。ちなみに、テンセントはfacebook等への出資で有名なロシアのYuri Milner率いるDigital Sky Technologies(DST)にも2010年に3億ドルの出資で10%超の資本参加をしています。

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テンセントの次の狙いはもちろんモバイル

スマートフォンのインストール数の予測(2017年)
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(出典:Mobile Tecnology Intelligence 2013.8 )

中国といえば今も昔もオンラインゲーム大国です。しかし、そのセグメントの中でも市場環境は変遷しています。2012年のPCオンラインゲーム市場全体は前年比で25%成長(88億6千万ドル)でしたが、その中身を見ると、MMOGが年間16%成長である一方、MOGが年間49%成長と急速に拡大しています。また、伝統的にクライアント型ゲームが長らく主流でしたが、徐々にブラウザ型カジュアルゲームも成長し始めており、中小型ゲーム会社の登竜門の様相を見せています。そして、中国でもいよいよスマートフォン・タブレット上でのゲームの波が押しせようとしています。今回の上海出張で大手各社とミーティングをしてきましたが、みな一様にモバイルへの意気込みを語っていました。

いま、中国のゲーム市場は、クライアント/ブラウザやPC/モバイルといったプラットフォームの多様化、そしてMMOG・MOG等のゲームジャンルの変遷など様々な環境変化の軸が交錯する中で、同時にライセンス/インハウスのポートフォリオ管理や投資戦略などが求められる難しい時期にあります。特に今年以降はモバイルの波に注目です。中国はスマートフォンの普及ポテンシャルはとても高いですが、3rd PartyのAppsマーケットがそれなりの規模で乱立するなど非常に特殊な市場です。その中で、ついにWeChatのゲームプラットフォームもリリースされました。全方位的なテンセントがこの複雑な中国市場をどう攻略していくか、に注目です。

今回使用したデータの引用元

ゲーム・インテリジェンス
モバイルテクノロジー・インテリジェンス

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野村 友成(のむら・ともなり)

米系調査会社IHSのテクノロジー部門でAPACリージョナルSMEとシニア主席アナリストを兼任。コンシューマーエレクトロニクス・メディア・テレコム/モバイル分野における海外市場の調査コンサルティングと、日・中・韓のビジネス開発を担当する。慶應義塾大学院メディアデザイン研究科修士修了。1978年生。