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バーチャル空間 (読み)ばーちゃるくうかん

マンガみたいな日本語だなと見るたびに思うが日本語にはない概念なので訳しようがない。仮想空間と訳す場合もあるが、virtual と仮想は全然違うし。

バーチャル空間を仮想空間と訳すとお尻がムズムズする理由

2019.03.22

Updated by on March 22, 2019, 15:05 pm JST

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仮想空間と訳したいのはやまやまだし、それで済ませている場合も多いように見えるが、日本語の「仮想」は「事実でないことを仮にそう考えること、仮定しての想像」もっと端的に云って「実体がない」的なニュアンスだが「バーチャル」は真逆で「本質的」とか「実質的」であり、「バーチャル・リアリティ」は「実質的リアリティ」になる。この組み合わせならそれなりにわかるが、ここで「バーチャル」を「仮想」に入れ替えると「仮想リアリティ」になって頭がクラクラしてくる。
なんでこうなるかというと日本と西欧では科学に対する認識に基本的なずれがあるからかもしれない。いまさら云うまでもないが、科学というのは測定可能なものしか対象にしない。言い換えるなら数値や数式として表現可能なものしか相手にしない。で、この数値や数式によって表現可能な空間をバーチャル空間と呼ぶのである。だから「実質」なのであり「仮想」みたいな曖昧なものが入り込む隙間はない。が、現実から数値や数式を抽出して作った空間なんだからシミュレーション空間、擬似空間とも云えそうな気はする。ここまでくれば「なら、仮想空間でもいいか」という気分になる。
何が言いたいかというと、一事が万事で、こういう翻訳にまつわる言葉のトラップがたくさんあるので気をつけないとなぁ……ということだ。あ、そうそう似た言葉に「サイバー空間」というのもある。英語だと cyber space だけど、これはバーチャル よりも雰囲気的に使える言葉で、しかも日本語には似た概念すらないのでそのまま「サイバー空間」とか「サイバースペース」と表記される。カタカナばかり……と非難されそうだが、無理やり翻訳して混乱するぐらいならそのままのほうがいいようにも思う。

マイナス×マイナスがプラスになるように、スマホの中の日常の光景を別の日常の中に置くと全体として非日常になる。

仮想空間計画

ホーガン,ジェイムズ・P.【著】/ 大島 豊【訳】
東京創元社 (1999/07)

|1,400円(本体)
|1,400円(本体)
|文庫判
|553p
|9784488663216
▼ここにSF小説を持ち込んでいいものか少し迷いましたが、テーマがテーマなのでまぁいいかと。しかし、この作品、タイトルと中身が乖離しているようなのでこの本を読んでも「仮想空間とは何か」がわかるわけではないと思います。作品自体はハードSF第一人者、J・P・ホーガンなので一級品のはずです。