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人工無脳 (読み)じんこうむのう

「無脳」というのは穏やかではないが、対話者の言葉を自分の会話の中に巧妙に埋め込むことでまるで知能があるように対話者に感じさせるプログラムで、機械学習や深層学習によって作られる人工知能とは(いまのところ)関係ない。

人間の「足りない部分を勝手に補完する癖(能力)」を利用すれば人工無脳でも人工知能に勘違いさせられる

2019.03.22

Updated by on March 22, 2019, 14:56 pm JST

AIには大別して2つのアプローチがある。一つは「人間が持っているのと同じタイプの知能を実現しようとするもの」で「強いAI」あるいは「汎用知性」と呼ばれるものを指向するアプローチ(いわば本道)。2つめが「弱いAI」で、ごく限られた特定分野でのみ使えるいわゆるエキスパートシステムでいいじゃないかというプラグマティックなアプローチ。アルファ碁なんかも作られ方は新しいものの「囲碁しかできない」という点で見れば「なんだ新手のエキスパートシステムか」と悪口を云う人もいそう。
で、実はこれ以外に「外部からそう(知能があるように)見えればそれで十分じゃないか」というアプローチもある。じゃまとめて3つにすればいいとも思うのだけど、この3番目のアプローチは「人工無脳」とか「チャットボット(おしゃべりロボット)」などと呼ばれ、ジョークソフト扱いされることが多いので、扱いが微妙というかなかなか「3番め」にならないのである。
しかし、これもチューリングテスト(人間と誤認されればオッケー)に合格可能な由緒正しいアプローチであり、また実用的に機能する場合も多い。なにしろ一番有名な、最初の人工無脳であるELIZA(イライザ)は人間だと信じた人がたくさんいたのだから、そう馬鹿にしたものではない。
なぜそんなことが起きるかというと、人間は相手の言葉を自分に都合の良いように補ってしまうようにできているからであり(だから占いもあたっているように感じる)、その意味で人工知能(強いAI、弱いAI)が、本物の薬だとすれば限りなく偽薬(プラセボ)に近い。しかしそもそもチューリングさんの人工知能の定義が「人間が知能だと思えば知能だとみなしてもいい」なので仕方ない。伝説のチューリングさんに反論するのは畏れ多すぎるし。

建設クレーンと雲

向かって右が人工知能、左は人工無脳。

恋するプログラム―Rubyでつくる人工無脳

秋山 智俊【著】
マイナビ出版 (2005/04)

|3,000円(参考価格)
|B5判
|221p
|9784839917296
▼だいぶ前の本なので紀伊國屋さんでは取扱がないようですが、復刻版が出ているみたいです。類書がないわけではありませんが、これがもっとも適切だと思われるので、探してみてください。