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ロンドン電波事情

ロンドン電波事情

日本でプログラマが少ない理由は正当な対価を支払わないからである

2015.03.03


「日本史なんかより、プログラミングを教えるべき」三木谷浩史氏と夏野剛氏が日本の技術者不足を嘆く

この対談がテクノロジー界隈の怒りを買って大炎上しております。三木谷氏と夏野氏曰く、日本史なんか教えなくていいからプログラミングを教えろ、日本でプログラマが足りない理由は工学系とかプログラム系を学ぶ学生が少ないから、だそうであります。つまり、それらを学ばない若い人が悪い、ということの様です。

しかし日本と欧州や北米の現場をみて来た自分からすると、お前ら一体何言ってんだということを申し上げたい。

日本で通信系やIT系の技術者が増えない理由は、ずばり、それら業界がエンジニアを大事にしないからでしょう。

このブログでも再三書いていますが、欧州だと、弱小ベンダーだって日本の様なデスマーチとは無縁です。就労環境の良さは比較になりません。インフォメーションアーキテクトなら年収2千万を軽く越える人だっています。

ワタクシの友人達は、インディペンデントコントラクタとしてロンドン、パリ、バンクーバー、ボン、フランクフルトなどを点々として移動していますが、アナリストで日給500ポンド(9万円)なんて珍しくありません。それで週末は休み、夏は3週間位休み、勤務は9時から5時、たまに在宅勤務が当たり前なのです。常時在宅勤務だという人もいます。日本の大手企業でここまでの条件で働ける職場はありますか?

三木谷氏と夏野氏に伺いたい。

楽天とドワンゴは技術者に一体幾らの報酬を払っていますか?御社では彼らは夏に3週間の休暇を取れますか?なぜ日本に海外のエンジニアがやってこないのかわかりますか?なぜ日本の通信やITの世界では、多重請け負い構造が当たり前で、単に仕事を投げるだけの、技術も何もわかっていない人達が、末端のエンジニアの何倍もの報酬を得ているのですか?

ワタクシは、通信やITの世界の人々も歴史学などの人文系の知識は重要だと考えています。かつての日本の製造業を担って来た技術者達の少なからずは、大変な教養があり、その教養を下地として製品を設計開発していました。それは車でも家電でも同じです。ワタクシがなぜその様なことを知っているかと言うと、自分の身内を通して、メーカーや大学で研究開発に従事していた人達を知っているからです。

そして戦前、戦争中の軍の技術者達というのも、実は大変な教養のある人々でした。教養があったからこそ海外の製品を研究し、技術書を読み解き、材料をどこから仕入れてどうやって加工すれば良いかを知っていたのです。それは例えば海軍機関学校の回顧録などを読めば良くわかるのです。

歴史、心理学、文化人類学、国語、社会学、そういったものは想像力を醸成し、共感する力を付けるのに本当に大事なことなのです。どんな生活環境の人にはどんなものが好まれるか、どうやったら使いやすいか、その製品名は歴史的にどんな意味があるか、そのサービスは世の中をどのように変えて行くか。ユーザーはどう感じるか?偉大な製品やサービスを産み出して来た技術者や起業家は、こういうことを理解しています。

共感力がないからこそ、パチンコ台の様なサイトを設計し、ヘイトスピーチが山盛りになるサービスを展開して何も感じないエンジニアになってしまうのです。


谷本 真由美(たにもと・まゆみ)
NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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