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第三者機関の不在が生んだ日本の『プライバシー鎖国』(後編)

2015.03.27

個人情報保護法改正により設置される第三者機関の設置で何が変わるのか、中央大学総合政策学部准教授の宮下紘氏にうかがいました。

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海外からは「非常識」と見られている日本の対応例

──第三者機関が日本でもようやく立ち上がるものの、まだ経験やリソースが足りない状態です。そうした「よちよち歩き」の第三者機関と向かい合う事業者は、第三者機関に過度に依存せず、自ら海外の事例をよく見たり、これまでの法律の議論を追いかけたり、プライバシー事件の判例を見たりと、当面の間は自らリテラシーを向上させていく必要がありそうです。

宮下:その通りですね。実は、これまでもそれをやらなきゃいけなかったんです。でも、日本は個人情報保護について鎖国状態でしたので、適切な情報が入ってこなかった。

具体例を申し上げると、2012年3月にGoogleのプライバシーポリシーに大きな改正がありましたが、日本では総務省と経済産業省が連名で注意喚起の通知を出しただけでした。海外ではフランスの第三者機関であるCNILが筆頭になって共同調査を行い、最終的に15万ユーロの罰金をGoogleに科している。

この調査に関してはアジア太平洋地域プライバシー機関(APPA)のメンバーである韓国や香港も調査にあたって、違法という結論を下しています。私がAPPAにオブザーバーとして参加した際「日本ではなぜ違法ではないのか」と言われました、プライバシーコミッショナーコミッショナー会議に出席した際も欧州のコミッショナーから「うちは連名で立ち入り調査をした。日本は立ち入り調査したのか?立ち入り調査もせずに、なぜ合法と言えるんだ」と言われました。

同じくストリートビューが立ち上がったときも、日本では総務省の研究会が玉虫色の報告書を出しただけで、なにも制裁を科していない。しかし、フランスでは10万ユーロの罰金を科している。

世界中で使われている共通のサービスに対して、フランスは違法、隣の韓国も違法という結論を出しているのに、日本だけが「違法ではない」と結論を出している。このことは日本の個人情報保護の状況に対して、世界から大いに不信を招くことになってしまった。

──日本で踏み込んだ調査や判断が下された事例はないのでしょうか。

宮下:ソニーがプレイステーションネットワークにおいて、世界規模で7700万人の個人情報を漏洩したインシデントがありました。しかし日本は、経済産業省が報告、聴取と指導を2011年5月にやっただけですね。一方でイギリスは25万ポンドの罰金を科している。本来であれば、ソニーは日本の企業ですから、日本の企業の問題に、日本が国としてどういう責任を取るのかを世界中で見ている中で、報告聴取と行政指導だけ終わっている。

日本がいかに島国で、他の国とは違った非常識な対応を行ってきたのか、一連の執行の例を見ればわかるかと思います。

──事業者にとっては、日本国内で所管官庁から怒られなかったから大丈夫だと思い、そのまま海外に出たらアウトになるリスクがあったわけですね。

宮下:仰るとおりですね。EUの「忘れられる権利」は域外適応を認めているので、日本国内のみで事業を営んでいる企業、メディアの活動をしている報道機関も、ウェブ上の情報は国境を越えるため、EUからの申し立てがくれば対応せざるを得ないのです。

そういう意味では、おちおちと日本の行政だけを見ていればいいという時代は終わったわけです。今回の個人情報保護委員会が新しくでき、保護委員会がしっかりと海外の情報を日本の事業者にしっかりと伝え、ベストプラクティスを共有していくことが重要です。

これまで日本では常に、行政に怒られないように対応してきました。既にこのグローバルの時代ですから、第三者機関や行政だけを見るのではなく、外も見ながら、世界共通のサービスが行われていれば、世界でどういう風な形でプライバシー保護の水準が打ち立てられているのか、しっかり見て対応を迫られている。特にグローバル企業にとってはマストです。


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特集:プライバシーとパーソナルデータ
情報通信技術の発展により、生活のあらゆる場面で我々の行動を記録した「パーソナルデータ」をさまざまな事業者が自動的に取得し、蓄積する時代となっています。利用者のプライバシーの確保と、パーソナルデータの特性を生かした「利用者にメリットがある」「公益に資する」有用なアプリケーション・サービスの提供を両立するためのヒントを探ります。(本特集はWirelessWire News編集部と一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の共同企画です)

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