翻訳技法としてのアートで物質科学と接続する
Connecting to Material Science through Art as an Approach to Translation
2021.11.02
Updated by Schrodinger on November 2, 2021, 07:07 am JST
Connecting to Material Science through Art as an Approach to Translation
2021.11.02
Updated by Schrodinger on November 2, 2021, 07:07 am JST
「翻訳」と聞くと、「ある言語の文章を別の言語の文章に変換する行為」と単純に捉えがちですが、実は全く違います。妙な創作よりも遥かにクリエイティブなのです。
まず、「何を翻訳しようか」と考えるところから、翻訳者自身の世界観・価値観が起動します。「これは日本人に読ませたい、これは読ませる必要はない」という戦略的な想いですね(何しろ世界の首脳外交を実際に動かしているのは同時通訳者だという関係者は少なくありません)。それに加えて、原著者と翻訳者のそれぞれの意味の掛け算が行われるので、原書にはない価値の増幅が実行されます。
言語が異なる以上、「直訳」は原理的にありえません(やりたくてもできない)。大げさにいえば、Aという文化とBという文化を融合させてCなる文化を作る、という行為こそが翻訳なのです。これは極めて学際的(interdisciplinary)な行為で、例えば物質科学の専門家が脳科学を学ぶことで、ある種の創発的研究になるという話と同じなのですね。
野原先生は、翻訳学(translation studies)の専門家ですが、翻訳技法のひとつに「アート」があるのだそうです。アートとはそもそも「問いを立てるための技法」なのだとか。自らがインタフェースに徹して、サイエンス・テクノロジーとアート・デザインの融合の創出にチャレンジしている、というわけです。「量子(quantum)を軸に全ての分野が再接続されるのではないか」という考えから「シュレディンガーの水曜日」を始めたわけですが、この根本原理の解説が今回行われる、と考えていただいても良いかと思います。
「シュレディンガーの水曜日」には、これまでに話題を提供していただいた先生、あるいはこれから話題提供いただく先生に聴講生として参加いただいています。これによって質問のレベルもぐっと上がって、妙に面白い展開になるわけです。それが参加者の皆さんにも楽しんでいただける理由になっていると確信しているのですが、今回の講義は特にいろいろな大学の様々な学部の先生に聞いて欲しい、と思います。「新教養主義宣言」に登場した先生達も、今回はご招待しようと思います。
ようこそシュレディンガーの水曜日 第五夜へ。
講師 野原 佳代子(東京工業大学 環境・社会理工学院 教授)
・日程:2021年11月10日(水曜)19:30-21:00(予定):19時半からゆるゆると開講します。
・Zoomを利用したオンラインイベント:前日までに参加URLをメールでお送りします
・お申し込み:こちらのPeatixのページからお申し込みください。
「シュレディンガーの水曜日」は、毎週水曜日19時半に開講するサイエンスカフェです。毎週、国内最高レベルの研究者に最先端の知見をご披露いただきます。下記の4人のレギュラーコメンテータが運営しています。
原正彦(メインコメンテータ、MC):東京工業大学・物質理工学院・応用化学系 教授
1980年東京工業大学・有機材料工学科卒業、1983年修士修了、1988年工学博士。1981年から82年まで英国・マンチェスター大学・物理学科に留学。1985年4月から理化学研究所の高分子化学研究室・研究員。分子素子、エキゾチックナノ材料、局所時空間機能、創発機能(後に揺律機能)などの研究チームを主管、さらに理研-HYU連携研究センター長(韓国ソウル)、連携研究部門長を歴任。現在は東京工業大学教授、地球生命研究所(ELSI)化学進化ラボユニット兼務、理研客員研究員、国連大学客員教授を務める。
今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授
武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築の道を歩まず、雑誌や放送などのメディアビジネスに携わり、'80年代に米国でパーソナルコンピュータとネットワークの黎明期を体験。帰国後、出版社でネットワークサービスの運営などをてがけ、'99年に武蔵野美術大学デザイン情報学科創設とともに教授として着任。現在も新たな表現や創造的コラボレーションを可能にする学習の「場」実現に向け活動中。
増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授
東京大学大学院を修了後、富士通、シャープ、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、米Appleにて研究職を歴任。2009年より現職。『POBox』や、簡単にスクリーンショットをアップできる『Gyazo』の開発者としても知られる、日本のユーザインターフェース研究の第一人者だがIT業界ではむしろ「気さくな発明おじさん」として有名。近著に『スマホに満足してますか?(ユーザインタフェースの心理学)(光文社新書)など。
竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人
日経BP社でのインターネット事業開発の経験を経て、2004年にスタイル株式会社を設立。2010年にWirelessWireNewsを創刊。早稲田大学大学院国際情報通信研究科非常勤講師(1997〜2003年)、独立行政法人情報処理推進機構・AI社会実装推進委員(2017年)、編著に『ネットコミュニティビジネス入門』(日経BP社)、『モビリティと人の未来 自動運転は人を幸せにするか』(平凡社)、近著に『会社をつくれば自由になれる』(インプレス/ミシマ社)、など。
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちらオンラインイベント「シュレディンガーの水曜日」の運営事務局です。東京工業大学・物質理工学院・原正彦研究室の協力の下、WirelessWireNewsが主催するオンライン・サイエンスカフェです。常識を超えた不思議な現象に溢れた物質科学(material science)を中心に、日本の研究開発力の凄まじさと面白さを知っていただくのが目的です。