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人間らしさからロボットらしさを考える展示会ーROBOTINITY ロボットらしさとはなんだろう展ー

How to live with robots

2015.08.03

Updated by Yuko Nonoshita on August 3, 2015, 12:08 pm JST

人間性を意味する”Humanity”という言葉に対し、ロボットらしさという意味で作られた、”Robotinity(ロボティニティ)”をテーマにしたアートイベント「ROBOTINITY ロボットらしさとはなんだろう展」が、大阪ナレッジキャピタルのショールーム「The Lab.」の特設エリアで開催されている。

本イベントは、グランフロント大阪を拠点とするナレッジキャピタルと、オーストリアのリンツを拠点とするクリエイティブ機関アルスエレクトロニカによるコラボレーション企画の第4弾。会場では、アルスエレクトロニカの研究・開発部門であり、アートを制作するアトリエでもあるフューチャーラボが進める、ロボット関連のアートプロジェクト「Spaxels(スペクセルズ)」や「Oribotics」、プレンプロジェクトコミッティが開発する小型ヒューマノイドロボット「PLEN(プレン)」<http://plen.jp/>、そして、ヨーロッパを中心に活動するアートユニットのエレクトリック・サーカスが手掛ける話題のホームレスロボット「Dirk(ディルク)」が紹介されている。さらにオープニング特別企画として、7/30〜8/1の3日間だけDilkの実物が登場し、来場者を驚かせた。

開催にあたり来阪した、フューチャーラボの設立者でディレクターを務めるHorst Hortner(ホースト・ホートナー)氏は、「ロボットは時代と共に技術や捉えられ方が変化し、ドローンや自動車、そして家全体もロボットといえるような機能を持つようになり、生活に寄りそう存在になっている」と言い、「ラボでは、ロボットの機能そのものより社会との関わりに注目しており、PLENやDirkのようなヒューマノイドタイプ以外も含め、人々がロボットに対してどのような反応やフィードバックを見せるのかを研究している」と説明する。コメント。ロボット先進国である日本では、街中にロボットがいても違和感がなくなりつつあるが、そうした中でラボの作品がどうように受け取られるのかが興味深いところである。

▼アルスエレクトロニカのフューチャーラボを設立したHorst Hortner氏は「PLENやDirkを見た大阪の人たちがどのような反応を見せるのか、たいへん興味を持っている」と語る。
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▼LEDを搭載したドローンを使って夜空に光の絵を描くインスタレーション作品「Spaxels」は、ドローンの存在を世界に拡げると同時に見方を変えた作品として知られている。

▼折り紙とロボットから名付けられた「Oribotics(オリボティクス)」はの手をかざすと生き物のように光や形を変える。
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大阪を拠点にするプレンプロジェクトコミッティが開発するヒューマノイドロボットのPLENは、国内外のテック系スタートアップイベントで度々展示され、多くのメディアにも取り上げられているが、実は開発が始まったのは2009年で、アルスエレクトロニカのセンターが新設されたのに合わせて1年間展示されていたという。当時は2足歩行型のロボットがまだ珍しかったことから大きな注目を集め、ラボの研究にも少なからず影響を与えてきた。その後もPLENは、小型化やスマートフォンやキネクトで操作できるなど、新しい技術を次々と取り入れ、最新の「PLEN 2」は、ユーザーが3Dプリンターでボディを出力し、仕様もオープンソースで公開されるという、メイカーズ時代を反映したロボットへと進化している。今年3月に開始したKickstarterキャンペーンを見事に成功させ、11月からいよいよ実物が支援者の元に届けられる予定だ。

開発を手掛けてきた赤澤夏郎氏は、「ロボット技術の変化もさることながら、モノづくりの環境が大きく変化し、メイカーズブームなどの影響によって多くの人がロボット開発に参加するようになり、それに合わせてPLENも進化してきた」と語る。PLEN 2の発売でロボットがさらに身近になり、自分だけの存在になることで、人との関係性にどのような影響を与えるのかが注目されている。また、ラボからはロボットの定義そのものを変える存在になるかもしれないと期待されている。

▼プレンプロジェクトコミッティの赤澤夏郎氏が2009年から開発続けているヒューマノイド型ロボットのPLEN(プレン)は、スマホアプリ『PLEN Connect』でカンタンに操作でき、動きも軽快だ。
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発明家のFred Abels氏(フレッド・アベルス)と人形遣いのMirjam Iangemeijer氏(ミリアム・ランゲマイヤー)の2人組アート・ユニットのエレクトリック・サーカスは、特別展示されたホームレスロボットのDirkや猿型ロボット「Mono(モノ)」などを、公共空間に展示するパフォーマンスを行い、世界各国で話題になっている。ショッピングカートを押してゆっくり歩くDirkは、ロボットならではのつたない動きと、なんとなくユーモラスが漂う風貌のためか、見れば見るほど人に近い動きに見えてくることから、ドイツのショッピングモールでは人間と間違えて逮捕されたこともあるという。

人の声に反応して動いたり、手にコインを乗せると手回しオルゴールを演奏するなど、動きのほとんどはあらかじめプログラミングされているが、自然に見えるのはパペットを扱う”poppenspeler”であるIangemejer氏の演出によるもので、「あえてローテクにすることで人とコミュニケーションが生まれ、アート作品としても成立している」と言う。リモートコントロールで糸が見えない状態であやつれるDirkは、人の反応がよりダイレクトに見られるのも大きな特徴だとしている。なぜホームレスという外観を選んだかについてAbels氏は、「清潔で商業的なものがあふれる中、ホームレスは社会を映す真逆の鏡であり、Dirkと向き合った時の人々の反応や許容度などを通じて、社会のあり方を表面化させようとしている」と説明しており、アート作品と位置づけられていることがわかる。

▼ホームレスロボットのDirk(ディルク)と制作を手掛けたエレクトリック・サーカスの人形遣いのMirjam Iangemeijer氏(左)と発明家のFred Abels氏(右)。
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▼会場にゆっくりと姿をあらわしたDirk(動画)

ロボットという言葉は、チェコスロバキア(当時)のカレル・チャペックという作家が、機械文明を批判する戯曲のために考えた造語で、強制労働を意味している。戯曲が発表されたのは1920年だが、当時と今の状況はよく似ており、人々がロボットに仕事を奪われないか、真剣に議論が始まっている。作品のキュレーションを務めたアルスエレクトロニカの小川秀明氏は、「ロボットは常に人の考え方や望みが投影されてきており、今回の作品はアートであると同時にリサーチの対象であると」説明する。また、「現在はロボットにとってのカンブリア紀であり、様々な形や技術が生まれている時期なので、研究対象としてますます興味深い存在になってきていることから、ラボ全体の活動にも注目してほしい」としている。

▼フューチャーラボに所属する小川秀明氏は、アルスエレクトロニカにおいてロボットはアート作品であり、研究対象でもあるとコメントした。
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▼会場にはアルスエレクトロニカの企業コラボレーションの事例として、アプリで撮影した画像で紙製のクルマの模型が作れる「くるまっち」も展示されている。
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今回もこれまでと同じく展示は無料で公開され、10月4日まで毎日10時から夜9時まで入場できる。これまでは主に技術的な側面で見られることが多かったロボットという存在を、この機会にアートや社会的研究という視点から捉えてみるのも面白いかもしれない。

「ROBOTINITY ーロボットらしさとはなんだろう展ー」
日時:7月30日(木)〜10月4日(日) 10:00〜21:00
会場:グランフロント大阪北館 ナレッジキャピタル The Lab. みんなで世界一研究所 2階
入場:無料
主催:一般社団法人ナレッジキャピタル
URL:https://kc-i.jp/arsinkc/robotinity2015/

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。

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