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2020年のモバイル契約は92億、アプリごとのカバレッジが重要に--エリクソン

Without mobile device, more likely to be left out in 2020

2015.06.29

Updated by Naohisa Iwamoto on June 29, 2015, 23:38 pm JST

エリクソン・ジャパンは2015年6月29日、エリクソンが6月3日に発行した「エリクソン・モビリティレポート」(以下、モビリティレポート)の報道機関向け説明会を開催した。エリクソン北東アジア地区 カスタマー・エンゲージメント本部 モバイル・ブロードバンド・プラクティス シニアディレクターの小里直哉氏がモビリティレポートのハイライトと、今後のモバイル通信のあり方について説明した。

まず、モビリティレポートのハイライトとして小里氏は、2020年の予測としてモバイル契約総数が92億件に、スマートフォンの加入契約数は現在の2倍を超える61億件に、そして動画のモバイルデータトラフィックは現在の9倍に伸びることを紹介した。「モバイル契約数は、2015年上半期までに世界の総人口を超えると見られる。2020年にLTEは37億契約になり、人口カバレッジで世界の70%を占める。LTEの急速なカバレッジの拡大は、GSMやW-CDMAが長く利用されると考えていた先進国以外の地域でも、従来の予測よりLTE化が早く進展すると考えられるため」(小里氏)という。

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モビリティレポートなどの調査結果から分析した、モバイル業界の今後について、説明会で解説があったポイントを紹介する。

通信事業者に対してユーザーが持つロイヤリティーは、「ネットワークのパフォーマンスと最も相関が高い。端末の価値は何年も調査していても、あまり事業者に対するロイヤリティーとは相関が高くない。これは、どの事業者からも同じような端末が手に入るようになったことが原因ではないだろうか」(小里氏)。

また小里氏は、「App Coverage」(アップカバレッジ)という指標が重要になると指摘する。App Coverageは、アプリケーションごとに実用に耐えるカバレッジが異なることを意味するもの。小里氏は「バーが3本立っているというカバレッジと、ビデオを快適に見られるカバレッジは異なる。アプリケーションに適したカバレッジをどのように提供するかをApp Coverageの視点から考えなければならない」と説明する。

その際に、指標になる数値として小里氏は、「グーグルの分析で、Webページが表示されるまでに4秒待たされると、4分の1の利用者がそのページを離れるという数値がある。この4秒ルールは、大事な数字だ」という。例えばビデオのコンテンツの場合に、4秒ルールを満たすための必須速度が計算できる。720pの場合は5Mbps、1080pの場合は7.6Mbpsのスループットが得られないと、4秒ルールを達成できない。「さらに4秒ルールを90%のユーザーが達成するためには、720pで20Mbps、1080pで30Mbpsのスループットが必要。4Kではさらに高く80Mbps以上のスループットが要求される」(小里氏)。

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App Coverageの視点で、現状の各国のLTEのダウンリンクのスピードを見た結果も紹介した。SpeedTestのアプリを利用して速度を計測した統計を、国別、事業者別で整理した数値だ。これによると、日本の3大事業者では、1080pの4秒ルールを満たすスループットを得られている達成率が69%~78%だった。「中国、台湾はLTEが始まって間もないこともあり、80%以上の高い達成率を示している。韓国やシンガポールも達成率が高い。日本では、統計の数値を見るとセルエッジや屋内などでスピードが出にくい傾向があり、今後の改善が必要だろう」(小里氏)。

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また、小里氏は、ユーザーニーズの多様化に対する通信事業者の事業の位置付けを、3つのレイヤーに分けて整理した図を紹介。「今後、通信事業者やモバイル業界のプレーヤーが何をするべきか、マトリックスで考えると良いだろう。日本の通信事業者には、インフラからプラットフォーム、サービスまで一気通貫で提供する“サービスクリエーター”の位置付けにいる。これは収益性を考えると最も良い立ち位置。一方で、多様化するサービスへの対応は一気通貫のサービスクリエーターでは追いつかない。OTTなどのサービスプロバイダ、MVNOなどのサービス、プラットフォーム開発者とパートナーとなって、ネットワークをマネタイズする方法も併せて検討する必要があるだろう」(小里氏)と語った。

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【報道発表資料】
エリクソン・モビリティレポート: 2020年までに世界人口の70%がスマートフォンを使用

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。