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アフリカ編(2)生活に密着したアフリカの携帯電話端末

2011.01.27

Updated by WirelessWire News編集部 on January 27, 2011, 20:30 pm UTC

○前回の通信事情の概況に続き、今回は携帯電話の端末とサービスについて、その特徴やトレンドを追ってみたい。

○アフリカの携帯電話と一言で言っても、前回述べた通り先進地域と発展途上国の間では端末のラインナップや価格に大きく差が開いている。例えば南アフリカ共和国では、iPhone 4に始まり各主要メーカーの最新ハイエンド端末がラインナップに並び、先進国と比較してほぼ遜色のない製品が揃っている。しかし一方では、機能を抑えた低価格な端末がずらりと並ぶ市場もある。

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(cc) Image by Bernard Goldbach

ノキアが圧倒的に強いアフリカの携帯端末市場

携帯電話メーカー別で見ると、2010年第三4半期では、アフリカ・中東地域ではノキアのシェアが5割を超え、さらに第二位のサムスンが17%と、上位2社で7割以上を取る寡占市場になっている。さらにZTE、フアウェイなどの中国系メーカーが躍進する傾向にある。【図表1】

▼図表1:アフリカ・中東市場における携帯電話のメーカー別シェア
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出典:Strategy Analytics

なお、調査会社ストラテジー・アナリティクスによれば、アフリカ・中東地域の携帯電話販売台数のうち、エントリーレベルとULCH(後述)の端末を合わせた100ドル以下の端末は約7割にも及ぶ。

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機能をそぎ落としたULCH

ULCH(Ultra Low Cost Handset)は文字通り超低価格の端末である。徹底的にコストを抑えることを念頭に開発されており、端末自体の価格も2,000〜5,000円程度と低い。日本で販売される端末は通常5、6万円程度であることを考えると、まさに20倍の開きがある。

ULCHは端末価格を最大限に抑えるため、音声通話やSMS機能に特化させ、対応する通信方式はGSMでかつデュアルバンドのみ、カメラはなし、ディスプレイもモノクロ、インターネット機能はなく、せいぜいついていてもFMラジオ程度となる。その一方で、新興市場における人々の生活に密着させる工夫も見逃せない。一般的に電気設備が充実していないことから端末が充電しにくい環境を考慮し、電池の長寿命化を図っており、待受けだけなら1カ月充電しなくても使える。農業など屋外での仕事に従事する人々も多いことから、耐水性や耐衝撃性を強化したものも多い。

アフリカで売れ筋のULCHとその特徴を紹介しよう。

Nokia 1202

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「Nokia 1202」はもっとも販売台数の多い端末の一つである。ナイジェリアでの販売価格は3,700ナイラ(NGN)、円換算すると約2,000円となる。(1ナイラ=0.54円)エントリー/ローエンド向けの製品で、初心者でも操作しやすいこと、端末を低価格に押さえることに注力している。カメラやインターネット機能はなく、ディスプレイもモノクロ。もっぱら音声通話やショートメッセージ機能に特化している。端末は80グラムと小型で手にすっぽりと入る大きさだ。その一方で、市場の特性に注目し先進市場ではあまり一般的でない機能も見られる。電気のない所で懐中電灯の役割を果たす「フラッシュライト機能」を搭載、耐水性、耐衝撃性を強化し、通話や待ち受け時間を延ばすため、電池の超寿命化を図っており、待ちうけ時間は860(約36日)時間と長い(参考:Nokia 1202)。

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Vodafone 150

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キャリアブランドの低価格端末も登場している。アフリカ各地に展開するボーダフォンは2010年2月、新興市場向けの携帯電話「Vodafone 150」を発表した。この端末は、端末販売奨励金なしの価格で15ドルと抑えた。この製品発表に際し同社端末部門長のPatric Chomet氏は「アフリカ等新興市場の人々が携帯電話を使う最大の障害の一つになっているのが端末コストである。低価格端末が市場に出回り、携帯電話が利用できるようになれば、人々の生活は変化しよい方向へと向かう」と述べ、この製品を新興市場における戦略的製品と位置づけている。

莫大な初期コストが必要な販売網構築

さらにULCH市場の特徴として、流通網やアフターケア体制の拡充が特に重要な点があげられる。新興市場では通常携帯電話の販売店は大、中都市に集中するが、多くの潜在的ユーザーが過疎地に存在するため、こういった地域にも販売網を整備する必要がある。また初めて携帯電話を手にするユーザーも多く、その使い方を教える体制を整えたり、端末故障の際のアフターケアを提供できる数多くの拠点を一気に整備する必要がある。つまり、参入には莫大な初期コストが掛かることになる。

しかし新興市場向け端末は一般的に価格が低くマージンが低い上、これを構築することは多くの企業にとって多大な出費であり、特に過疎地域での販売網が手薄になってしまう。2000年代中ごろには多くの携帯電話メーカーがその成長を期待し新興市場に参入したものの、その大半が撤退を余儀なくされた。これは、販売網や拠点の整備が遅れ、結局は地域のユーザーから支持を得られなかったという側面が大きい。新興市場では比較的体力のある企業が勝ち残っているが、これにはそんな市場の特性が大きく影響している。

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SIMやSMSで実現するサービス「M-Pesa」

それでは、現地ではこのような低機能な端末でどのようにサービスを提供しているのか、その一例を挙げてみよう。

これまで説明したとおり、特にアフリカの新興地域ではローエンド/エントリーレベルの端末が多く、携帯電話サービスもその限られた機能の中での提供が必要とされる。そこで、携帯電話のSIMカード側にアプリケーションを搭載させることで実現するサービスが広がりを見せている。まずはこの一例を紹介しよう。

ケニアのボーダフォン傘下の携帯電話事業者サファリコムは、2007年から携帯電話を活用した決済サービス、「M-Pesa」を提供している。このサービスでは、携帯電話を利用して送金と支払い、携帯電話の通話時間購入が可能となる。M-PesaのMはMobile、つまり携帯電話、Pesaはスワヒリ語でお金を意味する。つまり、携帯電話が現金や金融口座の役割を果たすということだ。このサービスは次のような手順で利用できる。(参考:M-Pesa

  1. 口座開設:
    ユーザーはM-Pesaの代理店となる「Mobile Money Shop」で携帯電話番号や名前、誕生日をIDカードで証明し、サービス登録を行い、自己の携帯電話でM-Pesaをアクティベートし口座を開設する。
  2. 現金の預け入れ:
    送金のため「Mobile Money Shop」へ行き設置されたキオスク端末に現金を入れると、自己の口座にその金額が登録される。
  3. 送金手続きと通知:
    自己の携帯電話を利用し、その口座から送金手続きを行う。手続きが完了すると、送金先の携帯電話ユーザーにSMS(ショートメッセージ)で送金があったことが知らされる。
  4. 現金受取り:
    送金のメッセージを受け取った側は、最寄りの代理店で現金を受け取る。

アフリカ全体では、銀行口座を持たない人々が75%を占めるとも言われ、銀行関連のインフラは十分に整備されていない。その一方で貧困層も大きく出稼ぎに出る人々が送金する需要は大きい。M-Pesaはこのような現地のニーズと携帯電話の環境を上手くマッチさせたサービスとも言える。M-Pesaの利用者は1千万を超えさらに広範する兆しを見せている。

このようなサービスを実現するため、M-Pesaでは、SIMにSTK(SIM Tool Kit)と呼称されるツールを活用し、SIM側にアプリケーションを搭載さている。この方法を活用すれば、SIMの抜き差しによりどの端末でも利用できるというのが最大の利点である。

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中国勢の勢力拡大とモバイルブロードバンド台頭の萌芽

これまで主要携帯電話メーカーの寡占状態であったアフリカ市場にも、変化が見られるようになってきた。ローエンド市場では、中国系メーカーによる低価格な製品が市場を席巻する勢いを見せている。さらに「山寨機(さんさいき)」と呼ばれるノンブランドの携帯電話がアフリカにも流入してきた。もともとローエンドやULCHを利用するユーザー層は、携帯電話に関するブランド意識が薄いとも言われている。さらに低価格な端末が流入した場合はとびつくことも予想され、これまで巨大な勢力を持っていた端末メーカーの構図も変容する可能性もある。

その一方で、スマートフォンやLTEといった現状では先進市場での話題とも言えるようなキーワードがアフリカ市場でも期待されているのも事実である。昨年からスマートフォンの低価格化の傾向が見られるが、ノキア昨年9月、ケニアにおいてスマートフォンの最新機種「C3」の提供を開始した。端末の価格はKSH10,000(約123米ドル)と価格を抑えており、販売店では大きなにぎわいを見せた。こちらの記事に、販売店の様子が紹介されている。2011年には多くのメーカーが低価格化したスマートフォンを発表しており、アフリカを含む新興市場をそのターゲットにしている。ここ数年でアフリカの中間層を中心にスマートフォンが広がることが予想されている。

さらにアフリカで固定通信環境の整わない地域では、ブロードバンドといえば携帯電話により実現するシナリオが一般的である。GSMから3G(W-CDMA)を通り越し、LTEを導入する計画を進める新興国もある。このため、インターネットを活用するためのスマートフォンやタブレットPCなどの需要が急増する可能性も大きく、この潜在性は注目に値する。

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