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「残酷なほど機能的」から「入学したての学生がデザインしたかのようだ」まで -Apple Watchをめぐるファッション業界の評価

2014.09.12

Updated by Eri Hosokawa on September 12, 2014, 22:48 pm JST

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9月9日(現地時間)に発表されたApple Watch 。発表会の会場となった米・カリフォルニア州クパチーノのThe Flint Center for the Performing Artsは、1984年の初代Macintosh、1998年の初代iMacと、同社の歴史を変える製品発表に使われた会場だ。

今回の会見ではこの「特別な」会場を使用することに加え、いつものIT系メディア、経済系メディアに加え、ファッション系メディアが多数招待されたことが大きな話題となった。ファッション業界はどのようにApple Watchを評価したのだろうか。

コンデナスト・インターナショナルでインターナショナル・ヴォーグ・エディターを務めるスージー・メンケスは、「『Harper's BAZAAR』や『V MAGAZINE』の関係者と集まったときに、またディスカッションするわ」と述べており、彼女自身の見解ははっきりと示されていない。

メンケスのブログによると、『Harper's BAZAAR』の編集者であるカリーヌ・ロイトフィールド氏は買わないと発言しているようだが、目立った批判的意見はまだないようだ。なお、メンケスは大英帝国勲章を持つファッション・ジャーナリストで、ファッション業界の最重要人物の一人。各国の『VOGUE』はメンケスの記事を翻訳して掲載する特設コーナーを設置している。

ファッション関連のニュースやトレンドレポートなどを発信するStyle.comでは、「芸術、ラグジュアリー、テクノロジー、そしてロマンスが融合した」と題した記事を掲載。「残酷なほど機能的であり、うっとりするほどの美しさである」と、かなり高い評価を与えた。

Apple Watchの評価は定まったとはいえないものの、いまのところ、ファッション系メディア人に好印象を与えることに成功しているようだ。

とはいえ、例外ももちろんある。Appleがスマート・ウォッチを発売したら、危機が訪れると噂されていたウォッチ&ジュエリー業界の人々は、Apple Watchに厳しい評価を与えている。

AFPによると、フランスの高級ブランドグループLVMHで時計部門を統括するジャン=クロード ビバーは、「正直に言って、入学したての学生がデザインしたかのようだ」とドイツの日刊紙『Die Welt』で痛烈に批判している。角がない四角いデザインでは時代遅れになるのも時間の問題だと指摘しており、さらに「高級品というものは、時代を超えた何かがある。それは希少価値があり、威厳を伝えるもの」だとコメント。

ビバーは、高級時計ブランドのタグ ホイヤーやゼニス、ウブロを成功へと導いた時計業界の大物で、『GQ Japan』のインタビューでは、「身につけることで価値がある『ステイタスのある時計』にしたこと」がウブロを成功させた要因だと述べている。つまり、ファッションではあるかも知れないがラグジュアリーではない、という、ラグジュアリー業界側からの批判である。

長年にわたりIT業界で注目を集め続けてきたAppleは、Apple Watchで同社として初めて時計業界に進出する。従来の時計をはるかに上回る機能を兼ね備えていたとしても、超高付加価値の"ラグジュアリー"なアイテムとは正反対の製品であるため、前出のビバーから痛烈な批判も浴びた。19世紀には世界で最も高品質な機械時計が作られていたスイスの高級時計を統括する者からすれば、たかだか数年間かけて開発された時計がただの冗談に思えて仕方がないのかもしれない。

Appleにとっては、ファッション系メディアが前向きな評価を示していることが救いかもしれないが、実際に手首に付けてみるまでは、評価が上下する可能性は多いにある。2015年春に発売されたとき、本当の評価が定まるだろう。

【参照情報】

The AppleWatch: Where Art, Luxury, Technology, and Romance Meet (Style.com)
Suzy Menkes Vogue Apple Watch review (Vogue.com UK)
Apple Watch 'too feminine and looks like it was designed by students', says LVMH executive (Telegraph)
ウブロはどうして成功した?──業界のカリスマ、ジャン―クロード・ビバーに訊く(GQ JAPAN)

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細川 依里(ほそかわ・えり)

1986年大阪府大阪市生まれ。映画「天使にラブソングを2」をきっかけに外国に憧れを抱き、15歳で渡米。高校はユタ州、大学はカリフォルニア州立大学にてグラフィックデザインを専攻。在学中にはフリーマガジンのインターンシップを経験。帰国後、女性ファション誌に編集者として携わる。趣味:ファッション、旅行、映画鑑賞。