東京マラソンは、世界でいちばん安全なマラソン大会だそうだ。スタッフや救護ボランティア、沿道で応援する人々を合わせて、AED(自動体外式除細動器)の使い方の講習(消防署が行っている救命講習など)を受講したことのある人が最も多いため、競技中に万一、ランナーが倒れても迅速に対応できるからだという。
オランダのデルフト工科大学の大学院生、Alec Momont氏が作った黄色い機体の無人機(ドローン)のプロトタイプは最大時速100kmで空を飛び、心臓発作などで倒れた人を助けに向かう空飛ぶAEDだ。プロペラは6基で4kgの荷物(AED)を運ぶことができる。黄色はオランダの救急車の色だ。
こうしたドローンが作れるようになったのはAEDの小型化が進んだからで、ドイツのNPOも昨年、ドローンでAEDを運ぶコンセプト機、Defikopterを開発している。こちらは荷物としてAEDを運ぶ形状のようだが、Momont氏のプロトタイプは、AEDそのものにプロペラをつけて飛ばしてしまおうとしている。時速100kmなら、1分で1.6km、2分で3.3kmほど先の急患にAEDを届けることができる。救急車よりも速いことは間違いない。
このドローンにはカメラとスピーカー、マイクが搭載されていて、遠隔地にいる医師などが映像を見ながら現場にいる人に指示を出すことができる。患者の様子を目視した上で、救命講習を受けたことのない人にもAEDの使い方を説明することができるということだ。AEDは音声ガイダンスがあるので、講習経験者でなくても操作できないことはないが、パットを当てる位置やネックレスを外すことなどは教わらなければ知らなくて当然だ。
今のところオランダの航空法では自律飛行するドローンを飛ばすことが禁じられているようだが、2015年に法改正があると予想されているらしい。実用化に当たっては、1台15,000ユーロ(約215万円)ほどになると見積もられているようだが、救える命の値段としては高額過ぎるとは言えまい。
【参照情報】
・Alec Momont氏のウェブサイト
・AED配送用小型無人ヘリ
・Ambulance drone with built-in defibrillator 'could save thousands of lives'
・Drone Prototype Can Help Save Heart Attack Victims
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