通信業界目線で楽しむ「東京・春・音楽祭」

Come and join us for the spring music festival in Tokyo!

2015.04.18

Updated by Yoshiko Kano on 4月 18, 2015, 13:26 pm JST

毎年、上野公園に桜が咲く時期になると開催される「東京・春・音楽祭」。今年は3月13日から4月12日までの約1ヶ月に渡っての開催となっていました。

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初期は「東京のオペラの森」という名前で、小澤征爾氏を中心に新演出のオペラが上演されたり歌曲のコンサートが行われるといった内容でしたが、徐々に規模が拡大され、内容もオペラだけでなく実に様々な企画コンサートが開かれるようになり、現在では約一ヶ月間という長い期間となりました。会場はコンサートホールだけでなく、上野にある美術館・博物館の講堂やエントランスホールに偏在するのが特徴的な音楽祭となっています。

コンサートホールは、ちょっとかしこまっちゃうよねぇ、っていう方にも、ミュージアム・コンサートは、とっても、おすすめ。例えば、東京国立博物館法隆寺宝物館のエントランスホールが会場になることもあります。もちろん、開演は夜。まず「美術館に、夜入れる」というのがちょっとした特別体験ですし、モダンでスタイリッシュな宝物館で、国宝級の仏像達の厳かな雰囲気を感じ取りながら、高い高い天井に響き渡るチェロの深みのある音に耳を傾ける春の宵・・・なーんて、ちょっと格好良いシチュエーションじゃないですか?

いやいや、会場まで足を運ぶのが億劫で・・・という方のために、この音楽祭、ストリーミング配信で楽しめるプログラムも用意してくれているんです。http://harusailive.jp/ja/

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朝11時から夜20時過ぎまで、ほとんどまる一日をかけて開催されるマラソン・コンサート。今年のお題は「《古典派》〜楽都ウィーンの音楽家たち〜音楽興行師ザロモン(没後200年)と作曲家 ――ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン」全5回公演。公演内容はもちろんのこと、インターミッション中にも出演者インタビューや歴史的背景の解説、プログラミングの謎解きがみっちり詰まった、充実した配信内容となっていました。

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わたしは今回初めて、この企画公演に足を運び、配信内容を見ることになったのですが・・・フと配信ページのヘッダを見ると、見覚えのあるロゴマークが鎮座しております。

「あれ、IIJさんじゃないですか・・・」

改めてスポンサー企業を見てみますと、IIJさんが筆頭に登場。続いて、株式会社IIJグローバルソリューションズ、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)、日本電信電話株式会社(NTT)、NTTコミュニケーションズ株式会社、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社NTTデータ、株式会社NTTドコモ、KDDI株式会社、TIS株式会社、トレンドマイクロ株式会社、株式会社日本レジストリサービス、、、

ええとあの、随分見慣れた名前が並んでますけど、これ、音楽祭のスポンサード、ですよね?どこのデータソリューション系コンペティションですか?と、ハテナマークが100個くらい付いたところで、蓋を開けてみて驚きました。

この音楽祭は2005年にIIJの鈴木幸一会長が、なんと、私費で立ち上げた音楽祭であったのです。

――音楽祭を上野で開催している理由は?

高校時代から、いつも学校をさぼって上野の博物館や美術館に通っていた。世界的にもこれだけ文化施設が集まっているのは珍しいし、愛してやまない場所だ。どの施設でもコンサートを楽しめるようにすることで、東京に住む人や働く人がみんなで楽しめる音楽祭をやりたかった。裾野を広げるため、料金を安く設定し、半分以上の公演を無料にしている。地域の小学校でも演奏する。子供たちも「初めてバイオリンの音を聴いた!」なんて喜んでくれる。若い演奏家を育てるための、いい場になってきたと感じている。

――08年で小澤氏とのオペラ制作を終了しました。

その後も質を落とさずに続けようと、音楽祭の規模を拡大してきた。博物館や観光連盟など多くの関係者の協力を得て、手作りでやってきた。

それまでは全収入を運営費につぎ込んできたが「鈴木さんが破産するんじゃないか」ということで、周囲の支援も広がってきた。大手企業にも、継続的に支援してもらえるよう、お願いを重ねている。勝(栄二郎社長)さんには「音楽祭の営業も結構ですが、お仕事の営業もやってください」なんて怒られているけど(笑)。

◎上野の音楽祭が10年目、散財を厭わないワケ
インターネットイニシアティブの鈴木幸一会長に聞く(東洋経済、2014年2月27日)
http://toyokeizai.net/articles/-/31779

さてそんな中、2013年からスタートしたのが、コンサートのストリーミング配信です。2015年の新たな試みとして、通常のステレオ収録と同時に、バイノーラルマイクを利用した収録も行い、更に配信に際しては「ステレオ」「サラウンド」「バイノーラル」という3種類を視聴者が選べるようにするという、半端でない「音」へのこだわりが見えるプロジェクトでした。その配信の中枢部分で尽力しているのが、レコード業界ではなく通信業界に働く技術者の方々なのが、とても印象深く、嬉しく思えました。

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林 岳里:2回目のライブストリーミング配信が終わった2014年の4月、冨米野、福田、私の3人で今後の方針を話し合いました。そこで互いに確認したのが「音を良くしたい」という方向性です。昨年の春祭でH.265による高精細な映像配信は経験しましたが、当時はまだ私たちの中で「良い音」の定義さえ曖昧な状態でした。

福田一則:映像の解像度は細かく数値で指定できるのに、音の精細度を示すパラメーターはありません。絵に比べて音はおざなりにされ、自分たちがこれまでいかに音を意識していなかったかを見つめ直すことになりましたね。

林 岳里:そして私たちは、インターネットがいくら進化しても、会場で聴く音が最高の音であることは変わらないだろうという結論に至ります。空間や時間の制約を越えて、より多くの人に体験の機会を提供するのがIIJの仕事だという原点に立ち返ったのです。

◎究極の臨場感はどこにある?(東京春祭LIVE2015)
http://harusailive.jp/ja/story/

VoLTEリリースをはじめ、ハイレゾで再生出来る端末が続々投下されるなど、音という側面に対して多少、通信業界でも意識が向き始めたのではないか・・・と思う流れがきているわけですが、超一流の音楽家達が一堂に会するこのような音楽祭を通して、本当にいい音ってなんだろう、気持ちいい音ってなんだろう、ということを業界の中の人たちが本気で考えてくださっているということを(遅まきながら)知りまして、とても嬉しくなりました。今後も「音」に関わる通信業界の技術、そして通信業界の意識がどう変化していくのか、ますます注目していきたいと思います。

「東京・春・音楽祭」のライブストリーミングは、来年の機会を座して待つのみとなっておりますが、IIJさんは大手町のオフィス街で「ゆうべの音楽」をテーマにした「TWILIGHT CONCERT(大手町コンサート)」も開催されており、こちらもインターネット中継及びオンデマンド配信を随時行っているようです(http://www.iij.ad.jp/news/concert/2015/index.html)。2015年4月8日現在、オンデマンド配信期限ギリギリの、川本嘉子さんの艶のある音色で素晴らしいラフマニノフとブラームスをたっぷり聴かせて頂き、中低音スキーとしてはIIJさんに感謝感謝です。

そして、スポンサー企業さんの羅列に「やたら親近感あるなぁ・・・」と思った皆様! 是非とも「東京・春・音楽祭」に足を運んで、千差万別の溢れ出る音の色彩の豊かさに、耳を傾けてみてください。わたしたちの、ひとりひとりの音への欲求が、明日の通信の音環境を変えていくことに、なるのですから。

撮影:堀田力丸/提供:東京・春・音楽祭

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かのうよしこ

青山学院大学史学科、東京藝術大学声楽科、京都造形芸術大学ランドスケープデザインコースを卒業。通信キャリアにてカスタマサービス対応並びにコンテンツ企画等の業務に従事、音楽業界にてウェブメディア立ち上げやバックヤードシステム開発、コンサート制作会社での勤務を経て、現在はフリーのヴォーカリスト、ヴォイストレーナー、ライター。たいとう歴史都市研究会会員。サウンドスケープ協会庭園ワーキンググループに参加。2015年より京都造形芸術大学大学院芸術環境専攻(日本庭園分野)修士課程に在籍。
http://kanoppi.jp

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