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欧州では現金取扱が減っているという話

Cash transaction decreasing in UK and Europe

2016.09.18

Updated by Mayumi Tanimoto on September 18, 2016, 08:00 am JST

前に欧州はキャッシュレス社会なのでFin Tech が盛り上がっているという話をしましたが、今回は、そのキャッシュレス化はどんな感じなのか、という件です。

ノルウェーの大手 銀行DNBは現金の取り扱いを一切やめることを提案してますし、同じく大手のNordeaはオスロの支店1件を除き、窓口で現金を受け取ってくれません。ただしATMからは下ろせるようです。

このように北欧は大手銀行さえ現金取扱を辞めたい、というほど過激な方向に進んでいるわけですが、そもそも北欧の銀行や、欧州大陸の銀行の場合、自分の口座からまとまった現金(100万円とか200万円とか)を下ろす場合に、手数料をとられる場合があります。手間暇かかって面倒だからです。一方、日本はそんな手数料がないというと驚かれるのですが。

現金の取り扱いは手間暇がかかる上に儲からないので、イギリスの銀行も嫌がります。例えば、大手銀行だと自分の口座から200万円ぐらい下ろすのに、数日前に窓口に行って予約しないとダメですし、銀行によっては 100万円程度でも降ろさせてくれないことがあります。自分のお金なのにダメです。OKされても窓口でものすごく嫌な顔をされます。

自分の口座に現金数万円を入金するのさえも、ものすごく嫌な顔をされます。(数えるのが面倒くさい)しかも、ドラッグディーラーか何かではないのか、みたいな胡散臭い顔で見られることもあります。こちらは銀行であっても、客は客扱いしてもらえません。預金を一千万円ぐらい放り込むプレミアム口座にしても扱い変わりません。(そんな金額では雑魚客には変わりないわけですが)

現金を直接入金してその場で口座に反映されるATMというのも数が限られています。何を言っているかわからないかもしれませんが、こっちには日本のような高性能ATMがないので、大半のATMというのは、現金を下ろすのと、残高確認、プリペイド携帯のチャージ、ぐらいしかできません。

入金できるATMというのもありますが、現金はいちいち封筒に入れて、いくら入っていると書いて、それを機械に放り込むという方式です。銀行の人が確認してから口座に反映するので、反映には時間がかかります。銀行が間違える可能性があるので、機械に入れるのはウイークデーの昼間じゃないとダメです。機械もよく壊れます。壊れてもすぐに治りません。

このように現金だと色々不便です。ですから、ビジネスだけではなく、家族や友人間でも現金手渡しは嫌がられます。アプリでピュッと払ったほうが便利です。

G4Sの調査だと、欧州における現金支払いの割合は、オランダは37%、デンマークは37%、スウェーデン38%、フィンランド36%、フランス44% 、ルクセンブルグ29%です。つまり主要国は、キャッシュレスの支払いが60-70%を占めていることになります。キャッシュレスの支払いは2009年以後、年に4.3%増えています。EU加盟28カ国のキャッシュレスの支払いのうち45%はクレジットカードかデビッドカードです。

日本では北欧諸国のキャッシュレス化が話題になりましたが、フランスもキャッシュレスが進んでいるというのが意外ですね。欧州における金融センターであるイギリスの場合は北欧ほどは進んでません。2015年は支払いの48%が現金、52%がキャッシュレスです。The Payments Councilは今後10年でイギリスにおける現金の流通量は30%減ると予測しています。現在現金取引が行われているところは、コンビニやパブが80%程度、チャリティーショップ(非営利団体が一般の人に寄付してもらった中古品を販売して運営資金を稼ぐ店舗)が65%ほど、ディスカウントストアは68%、スーパーは48%なので、高齢者や銀行口座の持てない人が使うサービスほど現金取扱が多い、という傾向です。

ちなみに銀行口座を開けない人というのは、不法滞在だったり、住所不定だったり、クレジットスコアがブラックだったりという人で、結構いるんです。こちらの銀行口座は、普通預金講座でもオーバードラフトと言って、預金残高が足りなくなると自動的にお金貸してくれたりするので、クレジットスコアが真っ黒だと口座開けなかったりします。移民してきたばかりの人や、住宅ローン持ってない人などの場合、お金借りて返しました、という履歴の蓄積が足りないので開けない場合もあります。

スウェーデンのKTH Royal Institute of Technologyの調査でスウェーデンは2030年ごろまでに世界最初のキャッキャッシュレス社会になるという結果が世界中で驚かれましたが、欧州の感覚だと現状がこんな感じなので、それほど驚かれなくなっています。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。