capture image: Drone Cell Tower inspection osprey problems Phantom 3 Pro(Brian Morris)
「空飛ぶ目」となったドローンと携帯通信基地局をめぐる米国での取り組み
2016.10.20
Updated by Hayashi Sakawa on October 20, 2016, 12:41 pm JST
capture image: Drone Cell Tower inspection osprey problems Phantom 3 Pro(Brian Morris)
2016.10.20
Updated by Hayashi Sakawa on October 20, 2016, 12:41 pm JST
NTTドコモによるドローンを使った買い物代行サービスの実験などが発表され、国内でも少しずつドローン活用の試みが本格化しつつあるようだが、米国では災害時の携帯通信インフラ復旧やふだんの基地局点検などにドローンを使って成果をあげる例が出始めているようだ。
10月はじめに米大西洋岸を襲ったハリケーン(Hurricane Matthew)の影響で、ノースカロライナ州にある一部の基地局が稼働停止となったが、基地局鉄塔周辺の一帯が水没してしまったために、ベライゾンでは設備や非常用発電装置の状態を確認したくとも、作業員を送り込んで点検するといったやり方が簡単には採れない状況だった。そこで同社は、ドローンを使って撮影した映像や画像などを頼りに、通信設備が水没していないことや目立った被害がないこと、鉄塔に近づいても危険でないことなどを確認。その上で、発電機用の燃料を積んだゴムボートを鉄塔に乗り付け、稼働停止から数時間で通信サービスを復旧できたという。上掲の動画はその際にドローンが撮影した映像。ベライゾンは従来なら数日かがりの可能性もあった被害状況の確認作業がドローンを使ったことで数時間に短縮できたと声明の中で述べている。
ハリケーン、洪水、大雪、竜巻、山火事など、米国のニュースを見ていると、一年中どこかで自然災害が起こっているという印象を受けることがある。災害時の被害状況確認などないに越したことはない利用目的だが、災害を減らす手段が見つからない限りは、こうしたドローンの活用例が今後もさらに増えていくのだろう。
なお、ベライゾンが今月初めに発表した「Airborne LTE Operations (ALO)」という取り組みのなかには、4G LTE通信機能を搭載したグライダー型の無人機を飛ばして、被災地にいる救助隊員などに携帯通信サービスを提供するといった利用例も含まれている。ドローンが仮設の基地局になるというイメージか。
ちなみに日本でもKDDI研究所が災害時にドローンを利用して通信途絶地域にメールを「配達」する実験を2015年に行っているが、実用化までには法制度の見直しなどさまざまな課題があるようだ。
ベライゾンと競合するAT&Tでもドローンを基地局の点検に利用する取り組みを始めている。10月から始まったこの取り組み、主な狙いは点検にかかるコストの圧縮にあるようだがーーーAT&Tは全米約6万5000箇所に基地局を設置しているというーーーそれ以外にも例えば絶滅危惧種に指定された鳥の巣の有無を確認する作業などでの時間短縮などのメリットもあるとRecode記事には記されている。
またドローンの活用が、以前から指摘されていた鉄塔に登る作業員の死亡事故減少につながる可能性も期待されている。
6月下旬に公開されていたCNN記事には、基地局鉄塔に登る作業員の死亡事故が2014年には13件発生していた(作業員の人数は米国全体でも1万5000人足らずであるにもかかわらず)という米政府職業安全健康局(Occupational Safety and Health Administration)のデータが引用されている。またNational Association of Tower Erectorsという業界団体の幹部の話として「ドローンの導入により、人間が鉄塔に登って行う作業を約3割減らせる」という見方も紹介されている。「米国でもっとも危険な仕事」(PBS)とされるタワークライマーの事故抑制につながるとなれば、ドローンの活用は単なる経費圧縮にとどまらない効果をもたらすことになろう。
【参照情報】
Verizon uses drones for cell site inspections in the Carolinas in wake of Hurricane Matthew, another tool for reliability - Verizon
Air: the next frontier for the Internet of Things - Verizon
Drones are playing a new role in the recovery efforts after Hurricane Matthew - Recode
AT&T technicians use drones to test signal strength and find birds’ nests - Recode
Drones could help with disasters like Hurricane Matthew - Computerworld
AT&T sees cost savings with drone inspections of cell towers - Verizon
Feds to Look Harder at Cell Carriers When Tower Climbers Die - PBS
New drone rules could curtail cell tower deaths - CNN
・報道発表資料 : 日本初、セルラードローンを活用した買い物代行サービスの実証実験を開始(NTTドコモ)
・被災地域で空からメールを送受信、KDDI研究所が無人機による実証実験
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登録はこちらオンラインニュース編集者。慶應義塾大学文学部卒。大手流通企業で社会人生活をスタート、その後複数のネット系ベンチャーの創業などに関わった後、現在はオンラインニュース編集者。関心の対象は、日本の社会と産業、テクノロジーと経済・社会の変化、メディア(コンテンツ)ビジネス全般。