現実路線に方向転換したグーグルの自動運転車プロジェクト

capture image: Say hello to Waymo（Waymo）

現実路線に方向転換したグーグルの自動運転車プロジェクト

2016.12.14

Updated by Hayashi Sakawa on December 14, 2016, 18:49 pm JST

今日はアルファベット（グーグル持株会社）に関する多くのニュースが出ていた。自動運転車関連のプロジェクトをグーグルの開発研究部門「X」から独立させ、ウェイモ（Waymo）という新しい事業会社を立ち上げるという話、同プロジェクトでハンドルやペダルのない完全自動運転車輌の開発を一時断念したのではないかという観測、そしてウェイモがフィアット・クライスラー（FCA）と協力して開発中のミニバンを使ったライドシェアリング・サービスを来年中に開始する可能性があるといった話である。

自動運転車プロジェクトの独立分社化については、昨年秋にジョン・クラフチック（John Krafcik）自動車業界出身者をCEOとして雇い入れていた時からほぼ想定されていたものと見ればさほど意外性も感じられない。反対に、具体的にどんなビジネスで売上を上げるのかという点を明らかにしないまま分社化だけを発表というのはやはり不可解なことと思える。Bloombergが報じたライドシェアリング・サービスの話は結局発表されなかったが、グーグルとしてはやはりこのサービスの計画発表と分社化の発表とを一緒にするつもりでいた、ところがFCAとの間で未解決の点が残ってしまい、とりあえずライドシェアリングの発表は先送りした、という可能性も思い浮かぶ。

アルファベット関連ではこのところCFOのルース・ポラットとそしてXの責任者であるアストロ・テラーに焦点を当てた話を見かけることが多い。大手投資銀行のモルガン・スタンレーでCFOまで務めたポラットは、いわゆる金庫番として投資家に対する経営の透明性向上に尽力し、ウォール・ストリートからの受けがいい（実際に株価も上昇した）。また持株会社性への移行もポラットのアイデアではなかったかと思うが、いずれにせよ以前は湯水のように資金を使えていた新規の取り組みでも、ポラット加入後はコスト意識を求められるようになったり、実現の難易度が高いプロジェクトでも早めに何らかの結果を出すように求められるようになった・・・先週出ていたBusinessweek記事にはそんなことが書かれてある。この記事からは、アルファベットで今年に入って幹部の交代や退社や続いている、その背景にある事情が何となく伝わってくる。

今回、完全自動運転車の開発中止という観測を報じていたのはThe Informationだが、この記事を紹介したThe Verge記事の中には、「ハンドルもペダルもない自動運転車を開発するという計画は実際的でないとしてラリー・ペイジCEOとポラットが反対、それに対してXの初代責任者でも会ったサーゲイ・ブリン（共同創業者）はこの計画を支持」といった記述も見られて面白い。

8月に退社を発表していたクリス・ウルマン（同プロジェクトの元責任者）やブリンなどは、おそらく「ハンドオフ」の必要がない「コアラカー」のような完全自動運転車を自前で作りたかったのかもしれないが、CEOやCFOとしては「いつ頃事業化のめどがたつのかもわからないまま、だらだらと走行実験を続けさせておくわけにもいかない」などと考えたのかもしれない。

ウェイモが想定しているライドシェアリング・サービスの開始時期についてBloomberg記事では「来年中」となっている。それに対して、ライドシェアリング最大手のウーバーは、ピッツバーグに続いてサンフランシスコでも自動運転車を使ったサービスの実験をまもなく開始するという話も報じられている。またGMと（同社が出資する）リフトも来年前半には同様の試みを開始する計画だが、この取り組みでの利用も想定されている電気自動車「Chevrolet Bolt」の納車も始まったようだ。来年はこれらのライドシェアリング事業者を軸とした自動運転車関連の話題がさらに増えそうでもある。