original image: © Alexi Tauzin - Fotolia.com
より健康に、より幸せに IoTがもたらすデンマーク医療・福祉の未来
2017.05.18
Updated by WirelessWire News編集部 on May 18, 2017, 07:00 am JST
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2017.05.18
Updated by WirelessWire News編集部 on May 18, 2017, 07:00 am JST
あらゆるモノをネットワークにつなげることで、私たちの生活を大きく変えるIoT。その変化は未来の話ではなく、すでに起こり始めている。IoTが人々の生活に役立つシステムとなり、より良い暮らしを実現するには、社会にどのように広がっていけばよいのか──高福祉国家デンマークで進む、個人情報の蓄積・ネットワーク基盤の整備と、医療・福祉分野のIoTへの仕組みから、そのヒントが見えてくる。
デンマークは、1950年代に社会民主主義国家として高福祉国家の実現へと舵を切り、以来、社会インフラの構築・ 維持・向上に努めてきた。高福祉国家の安定のためにはその基盤となる税収の確保が不可欠であることから、1968年には個人番号(CPR)が、1970年には中央納税管理システムが導入され、個人番号が納税記録と紐付けられた。
医療や教育といった国民が享受する各種社会保障サービスに関しても、個人番号を鍵としてデータが個人に紐付けられて記録され、蓄積されていった。医療分野においては、1977年に個人医療記録システム(NPR)を導入し、導入以降に電子化された個人医療情報が活用可能な状態に整備されている。
IoTを個人に幸せをもたらす技術として適切かつ効果的に活用するためには、個人データの適切な管理と、その活用のための情報インフラが整備されていることが前提となる。デンマークはすでに数十年をかけてこれらを実現しており、IoTの時代を迎えるいま、世界の中でもより進んだ立ち位置にいると言えるだろう。
デンマークでは高齢化率が23%(2016年デンマーク統計局。日本は25%)に達しており、労働者不足、国庫の逼迫が懸念されている。そして、この解決策として、また福祉の質を維持するための施策として医療・福祉技術の活用が注目されている。中でもより効率的で効果的な医療・ 福祉サービスを提供する起爆剤として導入が進み、大きな期待が寄せられているのが、IoTを活用して個人情報と連結することでパーソナライズされる医療・福祉の提供である。
デンマークでは1982年に定められた高齢者三原則(生活の継続性、自己決定、残存能力の活用)に基づき、自助努力を基盤とした在宅介護の方向性が形づくられた。現在、高齢者は、週に数回、介護士などの訪問を受け、介護・掃除・食事などの生活支援を受けている。在宅介護では、転倒などの危険性とは背中合わせのため、腕時計型やペンダント型のアラーム発信器が活用されてきた。
現在は、スマートフォンやウェアラブル端末を活用し個人のバイタル・データをリアルタイムで介護施設に送信する仕組みや、患者が自分の意思でダウンロードできるアプリを活用し、電子カルテと連携することで、個人のバイタル・データを医療関係者が必要な時に確認できるシステムの構築が試みられている。データが個人番号に紐付けられているため、患者の家庭医や家族が病歴を照会することも可能だ。
IoTに寄せられる期待は大きいが、複雑性、不確実性の高い現代社会において、新たな技術をいかに既存のシステムやニーズと融合させられるか、いかに採算性を測るかは難しい課題である。
また技術が社会に浸透するためには、技術自体の実現可能性だけでなく、時間の経過や利用者の実感という社会性が不可欠であり、状況を把握しながら適切に導入しなければならない。そのような技術と人との難しい関係に橋渡しをするための興味深い試みが、デンマークをはじめとした北欧諸国、また欧州で活発化している。
情報ネットワークを強みとし、新技術の実証の場を持つデンマーク。医療福祉分野におけるIoTの活用は今後さらに加速し、世界をリードしていくだろう。
著者:安岡美佳(やすおか みか)
コペンハーゲンIT大学 アシスタント・プロフェッサー
北欧研究所主宰
※本稿はファーウェイ・ジャパンの広報誌「HuaWave Issue 23」に掲載の「より健康に、より幸せに IoTがもたらすデンマーク医療・福祉の未来」を一部編集し、転載したものです。原文では、デンマークが国を挙げて推進する、技術と社会を結びつける取り組み『リビング・ラボ』の内容を紹介しています。全文はこちらでお読みください。
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