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ロンドン 夜 治安 イメージ

海外でUberが流行る値段以外の理由(2)

2017.06.26

Updated by Mayumi Tanimoto on June 26, 2017, 07:04 am JST

前回は、海外でなぜUberの様なシェアリングサービスが流行るかを、インフラの脆弱性やストが頻発する例からご紹介しましたが、その他にも理由があります。

その理由は治安です。

イギリスの場合、暗くなったら比較的安全な住宅街でも、独り歩きは危ないことがあるのでタクシーで帰宅です。夜9時とか10時をすぎたらタクシーにします。

ナイトバスという深夜バスに乗る人もいますし、夜遅くに地下鉄に乗る人もいますが、公共交通機関では酔っぱらいによるナイフ犯罪、追い剥ぎ、薬物中毒者に襲われるというリスクがあります。

よくある例は、後ろから付け狙われて、ガツンと殴られてカバンを取られる。スマホをとられるというケースです。歩きスマホなど絶対にしてはいけません。殺して下さい、とってくださいといっているのと同じです。

暗闇で一人で歩いていて、茂みや公園に引きずり込まれてレイプされて殺される人もいます。ただそういう事件は数が多すぎるので、ローカルニュースで報道されて終わりです。

ローカルニュースというのは、県レベルですらなく、町や村の地元の無料新聞で報道されて終わり、というレベルの話です。

それだけ事件が多いということです。

私が以前ヨーロッパというバンドのコンサートに行った帰りには、ナイトバスで家にかえりました。その光景は惨憺たるものでした。

乗り換えのためにバスを降りたらそこは東ロンドンの某危ない地区で、再開発されていてアーティストが住んでいるから良くなったとか何とかいわれているのにもかかわらず(日本の旅行雑誌やファッション雑誌のかくことウソだらけです)、路上では泥酔者が乱闘していて頭から血を流している。

バス停は破壊されてガラスの破片が飛び散っている。周辺はゴミだらけ。顔から血を流したカリブ海系の男に金をくれとせびらた上に追いかけられました。近くでは殴り合っている人達、ホームレス、泥酔した人々がいました。

バス停が破壊されていたのは、日本のファッション雑誌やおしゃれグッズ雑誌で「いまロンドンで最もエッジーなエリア」と紹介されているところです。

車内には薬物中毒と思われる女性(服装はまとも)がいて、運転席(分厚いプラスチックの板で密閉されている)を「ファックユー、ァック、ファックオフ!!!!」と叫びながらどんどん叩いています。

バスの二階では嘔吐する人がいて床はドロドロ。家人は周囲の人間の目を絶対にみるな、といいました。

こういう状況なので、ブラックキャブやミニキャブを捕まえられない場合、Uberの様なサービスですっとタクシーに乗ることができれば助かるわけです。単に安いとか便利という理由だけではありません。死にたくないから使うんです。

イタリアの場合、流しを捕まえるのはほぼ不可能に近い地域が多いです。治安の悪い所が多いので、ちょっと暗くなったら公共交通機関は使いたくありません。

車内にはスリや追い剥ぎがいます。スリは刃物を持っていることもあります。カバンを引き裂いて中の物を取り出すためです。だから自家用車やバイクの普及率が高いんです。治安の問題からバスや電車に乗りたくないからです。

地方の裕福な町や村はこんなに危なくありませんが、私が住んでいたローマやその他の大都市は、路線によってはこの様に危険です。ローマにいた頃は、地元の人のほとんどはバイクか車で通勤でした。面倒くさいからではなく身を守るためです。バイクに乗るから華奢なヒールでは通勤できません。

私が住んでいたローマの場合、白タクも大問題でした。単なる白タクならまだいいのですが、暴力タクシー、追い剥ぎタクシーもあります。ちょっと前までは空港で公式のタクシーに乗ったと思ったら偽タクシーで、数万円を請求される例もありました。

長く住んでいてイタリア語が流暢でも、公式のタクシーで遠回り、お釣りのごまかし等々あります。私も何度も嫌な思いをしています。

こんな調子なので Uberの様なサービスは需要があるわけですが、アメリカの数都市や、イタリア、デンマーク、ブルガリア、ハンガリーではUberが禁止になってしまいました。

タクシーのように既存のサービスの質が悪かったり、供給が需要に追いついていないとうビジネスは結構あるので、シェアリングサービスの様な隙間を埋めるビジネスのチャンスはまだまだあるのではないか、と思います。

日本の場合は、既存のサービスの質が値段の割には異様に高かったり、それが労働者の賃金のダンピングで成り立っているので(しかも働く側が拒否しない)英語圏に比べるといまいち盛り上がりに欠けているのかなという気がします。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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