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金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

金沢工業大学×白山比咩神社 デジタルアートに結実した、地域と学生の共創のかたち

2017.09.06

Updated by SAGOJO on September 6, 2017, 07:00 am JST Sponsored by 金沢工業大学

大学と連携した地域活性化事例は数多くある。しかしそれが本当に地域の活性化につながっているか、また学生がそこから学びを得ているか、というと別問題だ。

2017年8月9日(水)〜8月11日(金・祝)の3日間、石川県白山市(いしかわけんはくさんし)にある白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)にて行われた「白山開山1300年記念奉祝大祭」で、金沢工業大学の学生プロジェクトチーム「KANAME」によるデジタルアート「未来への結び」が特別展示された。

学生の学びになり、地域のためにもなるプロジェクトはどのようにして可能なのか、当イベントの取材を通じて考えた。

舞台は開山1300年を迎える日本三名山「白山」の奉祝大祭

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

日本三名山の一つに数えられる白山は、養老元年(717年)に初めて泰澄大使(たいちょうたいし)が登頂してから2017年で1300年の時を迎える。

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

そんな白山開山1300年を祝して、全国白山神社の総本宮であり白山の本宮である「白山比咩神社」にて、白山の恵みに感謝を捧げる祭典や、白山信仰に関わる伝統芸能を中心とした神賑行事などが3日間行われた。

境内にITテクノロジー×プロジェクションマッピングを駆使したインタラクティブアートを展示

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

今回、金沢工業大学の学生プロジェクトチームがデジタルアートの特別展示を行ったのは、この「白山開山1300年記念奉祝大祭」の一環。白山比咩神社本殿の奥に位置する参集殿横の禊場沿道を、ITテクノロジーとプロジェクションマッピングを駆使した、インタラクティブアートで彩った。

作品は参集殿横の建物天井に、天空から見守る神様たちをイメージした5色の「LEDライトによる装飾」と、禊場の滝から流れる川の流れをイメージした沿道の「プロジェクションマッピング」、短冊を投函する人感センサーを搭載した「灯りオブジェ」の3つから構成される。

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

訪れた人はまず、入口に設置されたテーブルにて、5色の短冊から好きなものを選び、願い事を記す。ちなみに赤は「恋愛運、家庭円満」、青は「知識、仕事運」、黄緑は「健康運、良縁、人間関係」、黄色は「金運、成功」、紫は「才能、センス」というように、短冊の色にはそれぞれ意味が込められている。

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

その後、沿道脇に設置された「灯りオブジェ」に短冊を投函。

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

するとBGMが流れ、天井のLEDライトの色が変化。沿道に投影されている川の中に、花のつぼみが浮かび上がる。

その後、一定数の短冊が投函されると(もしくは一定時間が経つと)、沿道の映像に馬が歩いているかのような蹄の跡が、鈴の音とともに出現。先ほど浮かんできた花のつぼみに、馬の蹄が当たると、花が咲き、そして花びらが散っていく、という仕掛けになっている。

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

神社で開催されるお祭りとしては珍しい光と映像の演出に、子供から大人まで幅広い人たちが大注目。立ち止まって写真を撮るだけでなく、子供たちは変化する映像に触れたり、投影されている川を泳いでみたりと大はしゃぎ。多くの人で盛り上がりを見せていた。

地域の人が行動を生み、“未来の白山”について考えるきっかけを作る

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

本作品「未来への結び」は、その名の通り白山の未来がテーマ。訪れた人が“願いを投函する”という「行動」を取ることによって、白山の未来が作られていくことを表現している。

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

白山の伝説では、白馬に乗った白山比咩大神が泰澄に「私は白山に住む女神である。私の真の姿を見たいのならば、白山の頂上まで来なさい」と告げたという。短冊を投函すると現れる馬の蹄は、この白馬をモチーフに、投函された願いをきちんと神が受け取ったことを表現した。

そして、縁結びの神様で知られる白山比咩神社のご祭神「菊理媛(くくりひめ)」にあやかり、「何か結びを残してくれれば」という想いを込め「未来への結び」という名前を付けたという。

技術やテクノロジーを詰め込むだけじゃない。「訪れる人になにができるか」

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

今回この作品を企画・制作したのが、金沢工業大学の学生有志によるプロジェクトチーム「KANAME」。「Make a fun, Make a massage.」というスローガンのもと、建築系、情報系の学生たち5名とサポートメンバー陣が集まった。今回の作品制作と展示は、エンターテイメントを中心としたモノづくりを行うプロジェクトチームとしての初舞台だ。

メンバーの大半は、学部時代から様々なプロジェクトに参加してきた大学院1年生。デザインやセンサー制御、サーバー制御、音源作成やCG作成など一人ずつ役割を分担し、それぞれの分野において、独自のスキルを活かしながらチームで制作に取り組んだ。

リーダーの寺島悠希氏は、作品制作について「技術やテクノロジーを駆使する、というよりも訪れる人に対して自分たちは何ができるか?を考えていきたい」と語る。今回も、単に高度な技術を詰め込んだクリエイティブに終わることなく、人々の生活の豊かさに還元できるよう、白山の未来を考えるきっかけとなる作品のストーリー構成、コンセプト、デザインの概念をプロジェクトマネジメントに組み込んだ。

分野横断のプロジェクトチームを組むことで、新たな表現に挑戦

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

「KANAME」は異なる専門分野を持ったメンバーが集まるプロジェクトチーム。しかし作品のメインでもあるプロジェクションマッピングについてはチーム内に経験者がいなかったため、同大学で都市、建築空間におけるアートデザインを専門とする建築デザイン学科の川崎寧史教授に教えを乞い、学習と実践を重ねたという。

テクノロジーに頼りすぎない作品制作、「訪れる人みんなに楽しんでもらいたい」という軸はぶらさないようにしながら、デザインスキルやセンサーの技術、映像の技術などメンバーそれぞれの専門スキルを集結し、1つの分野では達成できない可能性に挑戦した。

一方、メンバーの専門分野が異なることで、お互いの「当たり前」が通じずコミュニケーションミスが生じたり、そのためにスケジュールを予測して組めなかったりと、不測の事態に悩まされた。チーム内での情報連携や円滑なコミュニケーションは、今後作品制作をしていくうえで学生たちの課題となりそうだ。

今後は今回の反省を活かしながら、よりパフォーマンス性やエンターテイメント色、ライブ感を強め、鑑賞者参加型のインタラクティブなアートを作っていきたいという。

学生の「やってみたい」創造力を引き出す大学のサポート体制

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

作品の取材を通して、学生たちの「面白そうだからやってみたい!」という意欲と行動力を感じたが、彼らに話を聞いていくと「やりたいと思ったことや自発性を大学が尊重してくれる」と口々に話しているのが印象的であった。今回の「未来への結び」が展示にこぎつけられた陰にも、所属研究室以外の教授が指導を行ったり、大学職員の方々が協賛を取ってきたり、先輩や後輩に手伝ってもらったりと、多方面での手厚いサポートがあったようだ。

また、運営面でのサポートだけでなく、金沢工業大学では最新技術やテクノロジーが身近に触れられる技術面でのサポートも充実している。レーザーカッターや3Dプリンターが自由に使える施設や、IBMのワトソンが全学に導入されるなど、身近にモノ・コトづくりができる環境が整えられていることで、学生たちの自発的な創造力が引き出されているようだ。

地域連携・産学連携の新たな実験場 学びと創造の里山リゾート「白山麓キャンパス」が誕生

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

そんな金沢工業大学は、産学連携・地域連携の拠点となるKIT Innovation Hub(教育研究・研修棟)や国際高等専門学校の校舎や学生寮を含む「白山麓キャンパス」を2018年2月にオープン予定。高専と大学の教育研究活動を基盤とし、積極的に地域の人や地元企業との共創を図る地域連携・産学連携の教育研究プロジェクトを推進し、地域創生に寄与する実証実験キャンパスを目指している。

金沢工業大学 デジタルアート「未来への結び」

学生だけでなく、地域の住民や企業が連携し、アイディアを出し合い新たな創造を行う──金沢工業大学が仕掛ける“学びと創造の里山リゾート”という構想に、地域発のイノベーションの未来があるのかもしれない。

(取材/文/写真:中森りほ)

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プロフェッショナルなスキルを持つ旅人のプラットフォームSAGOJOのライターが、現地取材をもとに現地住民が見落としている、ソトモノだからこそわかる現地の魅力・課題を掘り起こします。