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海外のITエンジニアは技術革新の速さにストレスを感じる
Overseas engineers feel stress to catch up with new technology
2017.12.26
Updated by Mayumi Tanimoto on December 26, 2017, 07:10 am JST
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Overseas engineers feel stress to catch up with new technology
2017.12.26
Updated by Mayumi Tanimoto on December 26, 2017, 07:10 am JST
年末進行も一段落し、お正月休みに入られている方も多いのではないでしょうか? 年末はストレスフルな時期ですが、これは欧州や北米でもあまり変わりません。ただし、日本との違いは休暇が長いことです。
休暇は長いとはいっても、やはりストレスはあります。しかし、日本とは感じるストレスが異なるという点には注意が必要でしょう。
ビジネスの変化が激しいので、ITも変化が激しく、対応が大変なことがその一つです。仮想化やブロックチェーン、IoT、モバイルなど事業会社でも新しい技術を導入する必要が出てきているわけですが、既存のスタッフが対応するならトレーニングが必要ですし、仕事は増えます。人を増やしても追いついていないということです。
イギリスだけではなく欧州全体、北米では2014年から2015年の間のIT系予算は増加傾向で、イギリスの場合は70%の企業が予算を増やし、特に要員系の予算を増やしたという所が半分以上です。その理由は、自動化できない業務領域が増えたこと、海外(オフショア)ではスキルが不足している分野が多いことを挙げています。それだけ変化が激しいということなのです。
IT priorities 2015 – IT budgets on the rise as economy recovers
コンサルティング分野でもビジネスラインの急激な変化は起こっていて、今や花形はサプライチェーン管理やERPではなく、モバイル、IoT、ビッグデータ、データサイエンスの分野です。
日本だと、この変化の温度感が伝わりにくいかもしれませんが、英語圏は日本のように「古い開発言語で粛々とシステム運用している大規模システムを請け負うSI会社」というのはあまり多くはなく、顧客側はエイヤーと新しいものを入れてしまうので、下請け側も新しい技術をどんどん入れていかないと間に合わない、という状況です。実はコレが、日本のIT業界が世界に遅れてしまっている原因の一つなのだと思われます。
変化が激しい一方で、報酬は上がっています。IT業界は相変わらず高報酬業種の一つで、アメリカの場合は26社の大手IT企業の平均報酬は年収1400万円ほどです。イギリスの場合はアメリカより若干下がりますが、それでもロンドンで働いた場合、中堅レベルのエンジニアでも年収800万円とか1000万円以上は珍しくありません。
人材獲得が難しいですから、就労環境の改善は盛んです。有給は全部消化で定時上がりが当たり前です。時給換算にすると日本よりはるかに恵まれています。
その代わり、会社側は戦略をコロコロ変えたりしますので、リストラはわりと頻繁にあります。正社員になっても、期間限定雇用の独立系コンサルタントやエージェントから派遣される人と安定度はあまり変わりません。
ですから、最初から独立系コンサルタントで働く人も大勢います。報酬が1.5倍とか2倍上、もしくはそれ以上だったりするので、短期でわーっと稼いで、次を探すという感じです。そういう人はもちろん個人年金や不動産に投資して、引退後の生活設計もやっています。ですから、投資の勉強が必須になります。独立系コンサルタントの場合は個人事業主ですから、税金の勉強も重要です。確定申告も当然自分でやりますし、会計士や税理士を雇います。
ストレスに関しては、一般的に仕事に関するストレスについての調査を行うと、日本の働く人よりも、イギリスや欧州大陸の働く人のほうが、ストレスを感じている、という結果が出ることがありますので、調査結果を真に受けるのには問題があります。
例えば以下を読むと、ストレスを感じているイギリスの働く人は増えているのですが、日本に比べると労働環境は遥かに恵まれています。つまり、ストレスに弱い人が少なくない、ということも考えられるのですが、上記のように、新しい技術の導入や、業界全体の変化があまりにも激しいのでキャッチアップが大変だ、というのも大きいでしょう。
日本だと、業界にいる人のストレスは長時間労働、レガシーシステムのお守りで新しい技術が身につかない、報酬が安い、休みが少ない、雇用が安定しない、決済権がないということですが、その一方で、イギリスや北米のように、常に新技術や激しい変化にさらされ、報酬が高い一方で責任が重いという状況も別の意味で高ストレスなのです。桃源郷はないということなのかもしれません。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。