original image: © chombosan - Fotolia.com
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「サイバーテック東京 2017」のサイドイベントとして開催されたパネルディスカッション「INVESTMENTS IN ISRAELI INNOVATION - BUSINESS & LEGAL LANDSCAPE | SPECIAL SEMINAR」では、イスラエルのイノベーションを支える三つの要素が紹介された。
イスラエルは、人口約800万人の小さな国ではあれど、人口当たりの投資家の数は世界一、企業家の数も世界一、NASDAQにIPOした企業数も世界一、といった数字が物語るように、ビジネスの成功とイノベーションに溢れている。
これらの数字的な結果は、イスラエルにはビジネスとイノベーションを支えるエコシステムがあるからだという。
ベンチャーキャピタル「Vertex Ventures」のDavid Heller氏(写真の中央)は、次の三つの要素を挙げてイスラエルのビジネス環境とイノベーションの背景を説明した。
1)優秀な人的リソースを育てて活用する
2)大学(アカデミズム)と産業の強固な連携
3)企業に対するインフラ的なサポート
第一の「人的リソース」は、軍隊と兵役の存在が大きな役割を果たしているという。兵役期間にさまざまなトレーニングと研究開発を経験し、技術そのものや研究開発の手法を身に付ける。
さらに、兵役終了後は民間企業に移り、軍隊で開発したノウハウなどを使ってビジネスをすることに制約がない。軍隊で開発した技術などに対するロイヤリティも不要なのだという。イスラエルがサイバーセキュリティに強い背景には、こうした技術移転のパスがあることが大きい。
例えば、セキュリティソフトウエアの「チェックポイント・ソフトウエア・テクノロジーズ」は、こういった製品開発で最も成功した例の一つ。また、小さなカプセルを飲み込んで患部を直接撮影できる「メディカル・カプセル」は、ミサイル搭載のカメラの技術を応用した医療機器だ。
第二の大学と産業の連携は、日本でイメージする産学連携とはかなり異なるものだ。イスラエルの大学では、産学連携が当たり前のことであり、大学発の技術でコマーシャル分野で成功する例が多い。
教授は学生を教えながら、企業の出資者や共同設立者になるのが普通のことだという。技術やノウハウを研究するだけではなく、リスクを取って資金を出し、本気で事業化に取り組むのがイスラエルの大学だ。例えば、インテルが買収した自動運転技術の開発会社「Mobileye」の共同創業者はヘブライ大学の教授である。
第三の企業が活動しやすいインフラについては、イスラエルに存在する世界各国の企業のR&Dセンターの数の多さが物語っている。ちなみにR&Dセンターの人口当たりの数も世界一だという。
実際には、グローバル企業がイスラエルのローカル企業を買収して、ノウハウとIP(知的財産)を得ながらそこを開発拠点にする、というアプローチが多いという。
イスラエルは、小さな国、小さな市場なので、「外部とのコラボレーション」がビジネスの大前提となる。そのため、外国人や外国資本を積極的に受け入れる(受け入れざるを得ない)メンタリティがある。買収後の企業運営がスムースに進むのもこのためだという。
これらのエコシステムの要素が積み重なった結果、「シリアル・アントレプレナー」呼ばれる成功者が生まれる。シリアル・アントレプレナーとは、創業して成功し、その事業を売却し、また新しい事業で創業することを何回も繰り返すビジネスのヒーローだ。
まず、起業家精神を支えるイスラエル人気質と日常を知る必要がある、として次の4点を挙げた。
・組織の一員というよりも他者との違いを強調する
・ミスを恐れない、恥じない、ミスは回復可能
・リスクを取ることに躊躇しない
・資源も市場もなく、常に戦闘中という非日常が日常
この結果、率直な(時に過ぎるくらいの)意見交換、スピードが命で細かいことを気にしている余裕はない、というビジネススタイルにつながり、常に変化する状況への柔軟な対応力が組織の中に埋め込まれるのだとういう。
日本企業から見ると、なぜそんなに急かすのか、なぜしっかりした事業計画がないのか、なぜ条件やストラクチャーをよく変えるのか、といった印象になりがちだが、ここにイノベーションをスポイルしない要因があるようだ。
田中氏は、日本企業がやってはいけないことをいくつか挙げたが、中でも「挨拶や顔合わせだけのミーティング」、「持ち帰って検討」の2点が印象に残った。現場に意思決定できる責任者を張り付け、即断即決できる態勢でビジネスに臨むことが、特にイスラエル企業との間では重要なアプローチとなる。
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