original image: © maroke - Fotolia.com
暗号通貨の広告は規制されるべきだ
Cryptocurrency advertising should be regulated
2018.01.31
Updated by Mayumi Tanimoto on January 31, 2018, 22:43 pm JST
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Cryptocurrency advertising should be regulated
2018.01.31
Updated by Mayumi Tanimoto on January 31, 2018, 22:43 pm JST
Facebook がすべての暗号通貨に関する広告を禁止したこと(New Ads Policy: Improving Integrity and Security of Financial Product and Services Ad)が話題になっています。Facebookは多くの暗号通貨やICOの広告がgood faith (信義則) に反していたためだと述べています。つまり、広告の内容が消費者を欺くような内容であって誠実ではなかったということですね。暗号通貨に関する広告は、 違法薬物やペニーオークション、詐欺広告といったものと同じ扱いになっていますので、状況をかなり重く見ていると見ていいでしょう。
新たなルールでは、以下のような広告を表示させることができなくなります。
「New ICO! Buy tokens at a 15% discount NOW!」
( 新しい ICO! トークンを15%割引で書いましょう!)
「 Use your retirement funds to buy Bitcoin!」
( 老後資金を使ってビットコインを買いましょう!)
このような広告は、日本のブログの記事の中でも頻繁出てきます。日本の雑誌やテレビ、 ネット上の動画番組ではもっと強烈に煽るようなものが多いので、これだけでも禁止だという点は注目する必要があります。
ここ数ヶ月、日本のネットやメディアを見ていて大変驚いたのが、暗号通貨取引に関する広告の多さです。
明らかにスポンサーがついているだろうなと思われるようなテレビ番組もありましたし、雑誌や Web サイトにも提灯記事が出ています。これを見て、2000年前半頃に FX 広告や記事が目立ち始めたのを思い出しました。 当時は20代から30代が読む雑誌に突然 FX 関連の広告が登場し、 提灯記事やスポンサーの付いた漫画が掲載されていました。
日本の外の先進国では、暗号通貨に関する広告は日本に比べると少なめです。 少なめどころか主要メディアにはほとんど登場しませんし、街中で看板を見かけることもありません。英国だと、地上波でもケーブルでも、暗号通貨投資に関するCMは一切放送されていません。 ネットでは広告が配信されていることもありますが、 そこに有名芸能人が登場することはありません。
日本に比べると訴訟社会ですから、広告出稿企業もメディアも、さらに出演者個人も、損害賠償を請求されてしまう可能性もありますので、金融関連の広告には慎重です。タバコやアルコール、オンラインゲーム、コンプガチャの広告規制も日本よりも遥かに厳しいですから、訴訟を起こされる可能性が高い金融商品に関する広告にはさらに慎重です。大手銀行や証券会社の広告も、イメージ広告のようなものが多いです。
欧州大陸の場合は、ここ最近はリスクの高い金融商品に対する広告はもっと厳しくなっています。 例えば、フランスの金融市場庁(Autorité des marchés financiers :AMF)は、すべてのオンライン媒体でのFXやCDF(差金決済取引)の一部の広告を禁止しています。
イギリスの金融サービス機構(The Financial Conduct Authority :FCA)も、CFD取引の被害が拡大したことから広告内容や顧客に対するボーナスの提供といったプロモーション活動を規制しています。
暗号通貨に特化した広告規制というのはまだ実施されていないのですが、暗号通貨取引は恐ろしくリスクの高い「投機」ですから、 Facebook の自主規制に類似する実施される可能性は高い様に思います。
米国では、すでに暗号通貨やICO の広告に対する集団訴訟が起こされています(Class-Action Suit Targets ICO Promoted By Floyd Mayweather, Jr.)。 例えば、ICOに関する広告に虚偽の説明があったとして、フロリダ州ではCentraに対して訴訟が起こされています。同社は、引退したボクサーであるFloyd Mayweather Jr.氏やDJ Khaled氏を広告に登場させ、Facebook等ソーシャルメディアを使って大々的に宣伝を行っていました。経営者には金融業界における十分な経験がないのにもかかわらず「ある」といったり、VISAと提携していないのにすでに締結したと虚偽を記載していました。
コインチェックの件がどのように収束するのかはわかりませんが、セキュリティ対策を疎かにし金融知識が疎い人々に投機を呼びかけるような 広告に大金を使っていたこと、そのような広告が主要メディアで流され、ネットのインフルエンサーも宣伝に加担していたことは、金融市場の安定性やブロックチェーンの技術しての今後の発展を考えた場合、問題視されるべきなのではないでしょうか。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。