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インテルが5G対応2in1 PC出展、スマホ新製品は映像・音で競う

2018.02.27

Updated by Naohisa Iwamoto on February 27, 2018, 06:30 am JST

スペイン・バルセロナで開催されているMWC 2018(Mobile World Congress)で出展されている、端末系のトピックを見ていこう。

5Gのプロトタイプでは、インテルブースに5G対応の2in1のコンセプトPCの展示があった。タブレットPCにプレ5Gのモデムとアンテナを搭載したもの。アンテナは2基まで搭載が可能で、タブレットPCの背面に90度のねじれの位置で開くようになっている。タブレット型で利用するときに、どのような角度で持っても電波を十分に受信できるようにするため。

デモは、28GHzの周波数帯を使って動画のストリームを受信するもの。現段階では「100Mbps程度のスループット」(説明員)と5Gを強くアピールする速度には達していないが、実際の利用イメージは十分に伝わってきた。インテルはマイクロソフト、デル、HP、レノボとともに、Windows PCで5G接続を実現する取り組みについてアナウンスしており、2019年の市場投入に向けたステップの一部を公開した形だ。

▼インテルブースの5G対応2in1 PCのデモ。上部に基地局アンテナがあり、中央のPCで動画をストリーミング再生していた20180226_device001

メディアテックのブースでは、28GHz帯のmmWaveアンテナモジュールを搭載したスマートフォン型の端末のデモがあった。ミリ波帯に近づくと、電波は様々なものを障害物として遮蔽されてしまう。デモでは、フェーズドアレイ構成のアンテナをスマートフォンに組み込むことで、基地局のアンテナに対して角度を回転させても受信感度が落ち込まないことを示していた。

▼スマートフォンを回転させて、安定した受信ができることを示すメディアテックの5G mmWaveアンテナモジュールのデモ20180226_device002

現実のスマートフォンなどの新製品も多く発表、展示されている。ソニーモバイルコミュニケーションズは、Xperiaシリーズのスマートフォンの最新モデルとして、Xperia XZ2と同 XZ2 Compactを発表した。従来の製品からデザインコンセプトを変更し、流れるような曲面と、18:9の縦長のディスプレイを採用した。XZ2は5.7型、XZ2 Compactは5型のディスプレイを搭載している。いずれも、4K HDRビデオの撮影に「世界初」(同社)で対応、広い色域と高いダイナミックレンジのビデオの撮影を可能にした。

960fpsのスーパースローモーション撮影は、従来はHD(0.2秒撮影を6秒で再生)だったが、フルHD(0.1秒撮影を3秒で再生)のオプションも選択できるようにした。3Dモデリングを手軽に楽しめる3Dクリエーターにはセルフィーモードを追加した。XZ2のみの新機能としては、Qi方式のワイヤレスチャージ、再生する映像や音楽、ゲームなどに合わせて触感を刺激するダイナミックバイブレーションシステムがある。チップセットにはクアルコムのSnapdragon 845を搭載し、XZ2では最大1.2Gbpsのダウンリンク速度を得ることができる。

▼Xperia XZ2は、デザインコンセプトを従来から大きく変えて3Dガラスを使った曲面で表現20180226_device003

サムスン電子は、Galaxyシリーズのフラッグシップモデルの最新モデルとなるGalaxy S9、同 S9+を発表、展示している。筐体のサイズやデザインは基本的に前モデルのS8、S8+を踏襲したもの。The Camera. Reimagined.のキャッチコピーがあるように、カメラ機能をブラッシュアップした。最大の特徴は、機械式の絞りで2段階に切り替えられるデュアルアパチャーを搭載したこと。明るいところではF2.4の絞りでシャープな映像、画像を撮影する一方、暗いところではF1.5の明るいレンズ性能を生かして多くの光を取り込んだ明るい映像。写真を撮影できる。

またGalaxyもスーパースローモーション撮影に対応し、960fpsのスローモーション撮影(HD、0.2秒を6秒で再生)が可能になった。撮影したスーパースロー映像は、音楽を追加したり、ループや逆再生などの特殊再生を設定したりしたファイルを作成し、簡単にSNSなどでシェアできる。セルフィーで絵文字スタンプを作れる「AR絵文字スタンプ」も新しいコミュニケーションを加速させる新機能。自撮りの写真から3Dアニメーションのスタンプを作成でき、さまざまな表情をアニメの絵文字スタンプで伝えることができる。S9+はデュアルカメラ構成となり、2倍の光学ズームなどGalaxy Note 8と同様の機能が利用できるようになった。

▼Galaxy S9/S9+のAR絵文字スタンプを作ったところ。表情も豊かで新しいコミュニケーションの楽しみ方が期待でき20180226_device004

カメラの機能にAIを組み込んだ新製品がLG電子の「LG V30S ThinQ」。ThinQは同社がCES 2018で発表したAI機能サービスの総称で、V30/v30+の光景となるLG V30S ThinQに搭載したものだ。新機能の「AI CAM」は撮影時にフレーム内の被写体をAIが分析して、ポートレートや食べ物、ペットなどの8つのシーンから選択する。撮影時にシーンを認識するおまかせ機能は多くのスマートフォンが搭載するが、AI CAMは被写体の内容をAIが分析した上でAIが最適なモードを判別する。このほかにも、商品を撮影するとAIが分析して商品情報を得られる「QLens」、AIの処理によってノイズを増やさずに写真を明るくする「Bright Mode」も備える。

▼LG V30S ThinQの「AI CAM」。画面右下に食べ物として認識したことを示すアイコンが表示されている20180226_device005

音を重視する製品が多いのも特徴だ。Xperia XZ2、XZ2 Compactでは、本体のステレオスピーカーからの再生音圧を従来比で約20%アップさせたほか、S-Forceフロントサラウンドシステムにより立体感のある音を再現できる。Galaxy S9/S9+は、これまでのモノラルスピーカーからステレオスピーカーへと進化させ、AKGによるチューニングやDolby Atmos対応による映画音響の再現など、音のエンターテイメントも楽しめるようになった。音へのこだわりでは、ファーウェイが発表したWindows PCの「HUAWEI MateBook X Pro」、タブレット「HUAWEI Media Pad M5」も、クアッドスピーカーの搭載によって低音から高音までを満遍なく再生することで音楽や映像をより楽しめるようにしている。

▼HUAWEI Media Pad M5の音質をアピールする、バーチャル楽器の演奏を楽しめるデモ20180226_device006

5Gが現実のものとして見えてきた中で、スマートフォンやPCなどのモバイルデバイスの訴求点として、さらに美しい映像や音をエンターテイメントとして楽しむシーンが重要視され、現実の製品にもその一端がフィードバックされているようだ。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。