TCPの仕様が抱える課題を解決しQoEを確保するTCP Accelerator
2018.09.06
Updated by 特集:トラフィック可視化で変わるネットワークの姿 on September 6, 2018, 11:08 am JST Sponsored by Sandvine
2018.09.06
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データ通信トラフィックの9割以上を占めるプロトコルであるTCPは、広帯域・大容量通信におけるQoE(quality of experience)確保という観点で、大きな問題を抱えています。この問題を解決するSandvineのソリューションであるTCP Accelerator について、Kai Schröderがご紹介します。
▼Sandvine Senior Product Manager Kai Schröder
固定データトラフィックの90%以上、モバイルトラフィックの95%以上を占めるTCPは、QoEという観点から見ると、3つの問題を抱えています。
1つめは、利用可能な帯域が増えたとしても、TCPはそれに応じて素早く速度を向上させることができないということです。すなわち、ある程度のアイドル状態がなくては、QoEを確保することができないということです
2つめは、帯域が不足してきた時に、TCPはしばしば「速すぎる」ということです。これによって、ネットワークはあふれてしまい、遅延が急増してQoEは低下します。この問題は主にモバイルネットワークで発生しますが、そのほかのネットワークでも起こります。
3つめは、TCPが「自己中心的」であるということです。個別のセッションがそれぞれ最適化を目指す仕様となっており、セッション同士が協調して動作することはありません。その結果、全体の効率とQoEの両方を最適化することができません。
サンドバインが提供するTCP Acceleratorは、これらの問題を解決することで、ネットワークのパフォーマンスを向上し、加入者のQoEを向上させ、事業者の収益機会を提供し、ROIを向上させます。TCPはWi-Fi、3Gや4G/LTEなどのモバイルネットワーク、衛星ネットワーク、WiMAX、FTTx、ヶーブル、DLSなどあらゆるアクセスネットワークで問題を抱えていますが、TCP Acceleratorはアクセスの種類を意識することなく対応が可能です。
サンドバインのTCP Acceleratorにおいて、最も重要な特徴は「透過性」です。TCP Acceleratorはアクセスネットワークとトランジットネットワークの間に設置し、全てのトラフィックを通過させます。これにより、加入者側とサーバー側の遅延を分離します。そして、一方からもう一方に影響が及ばないようにトラフィックをコントロールします。TCPを終端するのではなく、透過性を実現している為、周囲の機器に影響を与えることなく機能し、エンドポイント同士が接続されて通信できます。また、新しいプロトコルが導入された場合も、接続を保つことができます。
技術的には、TCPスロースタートの改善、輻輳管理、データ再送の改善などをユーザーの状況に合わせて適用することで、高速化をはかっています。また、バッファマネジメント、バーストコントロールなどにより、オーバーフローを防ぎ、帯域を十分に使えるよう調整しています。バッファマネジメント技術はTier 1のオペレーター様との共同開発で実現した技術であり、コアネットワークインフラ投資を削減することに寄与しています。
TCP Acceleratorは、加入者ごとのプロファイルに応じたアクセラレーションが可能です。すなわち、同じオペレーターの契約者でも、料金プラン別のアクセラレーションプロファイルを割り当てることで、特定の料金プラン利用者にのみ高速モードを提供するなど、異なる速度を実現することができます。
TCP Acceleratorがアクセスネットワーク側、トランジットネットワーク側それぞれに流れるすべてのTCPトラフィック全体を最適化することで、ネットワークリソースの利用を効率化し、オーバーフローを防ぎます。その結果、アクセスネットワーク側で何らかの原因で遅延が発生しても、トランジットネットワーク側には影響が及ばず、安定した通信が可能になります。クライアントとサーバーはそれぞれTCP Acceleratorを経由して通信していますが、TCP Acceleratorの透過性により、互いに直接通信しているように見えています。
アクセスネットワークのQoEを担保するために、「クローズドループフィードバック」を利用します。基本的な考え方は、ネットワークの負荷を「遅延時間」で測定するというものです。送信されるすべてのデータパッケージについて、通信開始時のRTT(round-trip time)をモニタし、時間がかかっている=負荷が高いと判断します。
RTTが大きいということは、(例えばモバイルネットワークの場合)eNodeBキューが長くなりすぎて待ちが発生しているということなので、これを減らす必要があります。そのためには、パケットのレートを下げてデータを小刻みに送ることで、eNodeBキューを減らします。eNodeBキューが十分短くなれば、パケットのレートを上げます。こうした調整を、RTTをモニターしながら行うことで、安定したQoEを確保します。
通常であれば、TCPは、通信確立後、ネットワークの状況を見ながら徐々に送信量を増やします(TCPスロースタート)。パケットロスが発生すると、TCPはスローダウンして、また少しずつ速度を上げていくという制御を行います。TCP Acceleratorは、アクセスネットワークを常にモニタしているので、輻輳が発生しているのかどうかを判別し、低速で送る必要がなければ、最初から高速でデータを送り続けることで、TCPスロースタートを改善します。他にも、パケットの送信方法を工夫することで、パケット再送の頻度を減らすなど、さまざまなテクニックを使用しています。
TCP Accelerator導入のベネフィットは、ネットワーク効率の最大化です。従来のTCP通信でパケットロスが発生ようなケースでも、TCP Acceleratorはパケットドロップ発生直後にパケットレートを調整することで、サーバーからの再送を低減し、すぐにスループットを戻すことができます。結果として、データの送受信が早く終わるので、ネットワークリソースが早く開放されます。加入者の体感スループットが上がるだけでなく、オペレーターも効率よくネットワークリソースを使えるようになります。
TCP Acceleratorにより、オペレーターは仮想的なキャパシティを得ることができます。TCP Acceleratorを使用しない時は、60-70%のリソース使用率でも急速にeNodeBにおける待ち時間が長くなるケースがあり、ユーザーのQoEが低下します(図中の赤い点)。対して、TCP Acceleratorを使用した時(図中の緑の点)はリソース使用率が90%を超えてもそれほど待ち時間が増えません。言い換えれば、2割キャパシティを増やすのと同じ効果が得られるともいえます。したがって、オペレーターは追加投資のタイミングを遅らせることができます。
ネットワーク上で、加入者は同時にさまざまなアプリケーションを使用します。ネットワークにはさまざまな種類のトラフィックが流れています。中でも、QUICを含むUDPトラフィックは、ネットワーク内の制御装置や中継装置のキューを占拠してしまうため、他の通信逼迫させてしまいます。HTTPやHTTPSによるインタラクティブな通信は特に大きな影響を受け、QoEが下がってしまいます。
TCP Acceleratorは、一人一人の加入者のトラフィックをすべて監視し、セッションの種類を識別します。キューをすべてのセッションに対して公平に割り当て、キューの長さを調整することでバッファをコントロールします。
これによって、動画や大容量データのダウンロード中にウェブを閲覧したり、メールの添付ファイルをダウンロードしたりといった当たり前の操作をストレスなく行えるようになります
サンドバインは、異なる複数のオペレーター様とTCP Acceleratorのトライアルを開始しています。弊社の他ソリューションと一緒に展開してより高い効果をあげる事もできます。日本のお客様にも、このソリューションをお役立ていただきたいと考えています。
▼左からSE 武井、開発 Akash、製品責任者のKai、東アジア Solution Architect Sungsoo
【関連情報】
ネットワークインテリジェントを提供する サンドバイン
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