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AIの実装はビジネスのバリューチェーンで考える必要がある

original image: © j-mel - Fotolia.com

AIの実装はビジネスのバリューチェーンで考える必要がある

AI to be introduced based on business value chain

Updated by 谷本 真由美 on September 27, 2018, 08:52 am JST

谷本 真由美 mayumi_tanimoto

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

AIがビジネスを効率化する、産業を変革すると言われてしばらく経ちますが、いまだにイメージが先行するばかりで漠然とした印象の方が多いのではないでしょうか。

多くの企業ではAIが実装される段階ではありませんが、実際に普段の仕事にAIが使われた場合、実際企業活動にはどんな影響があるんでしょうか?

また働く側としては自分の雇用が維持されるのかどうかというのが心配事ですね。

マッキンゼーが最近出した報告書には具体的な姿がわかりやすく説明されています。

企業は、自社のビジネスの運用部門にAIを積極的に使用することで、コストを大幅に削減することが可能になります。

つまりこれはビジネスプロセスの側面から考えた場合大変わかりやすいことで、業務をプロセス別に分析し、コンピューター処理に置き換えられるステップを抜き出す、ということです。

業務プロセスのマッピングや適正化をこまめにやっている企業であればおなじみですが、要するに従来のシステム導入と基本は同じです。

例えば、紙に印刷して保存していた情報を、デジタル化してデータベースで保存するようなものです。

わかりやすい例は、イギリスのバージントレインがやっていることです。

この会社はイギリス国内でも遅延がものすごく多く(ちなみにイギリスの電車が予定通りに運行する確率は大体80%でKPIがゆるいのです)、遅延によるチケットの払い戻し申請が多いです。

従来は乗客がメールやサイトのフォームから申請を送ってきたのを、オペレーターが目視で確認し、メールを振り分けていたのですが、それをAIが読み取りして自動的に担当部署に振り分けるようにしました。

文章が読み込めないものは人間が目視で再確認したりエラーを修正するわけですが、手間が大幅に削減されました。

つまりこれを業務プロセスで見てみると

 

プロセス名:払い戻し申請プロセス

顧客の申請→受領→内容確認→振り分け→処理分類→審査→支払い

 

というプロセスの中の「内容確認」「振り分け」というステップがAIに一部置き換わったわけです。

 

製造業の場合は、例えばAIの自動処理によって、機械の電源のOn/Offを自動化したり、最も効率的なエネルギーソースから動力源を確保するようににAIをプログラミングすることで光熱費等のコストを削減することが可能になったりします。

つまりそれまで無駄にしていた資源を適切に割り振るような仕組みを作るわけです。

つまり普段の業務のどこで、どんなAIシステムを導入するかということを具体的に検討してみると、システム導入やデジタル化と大きく変わるところはない、ということです。

ただ違いは、従来より処理できる作業が大幅に広がったとか高度化した、ということです。

またここで重要なのは、ビジネスにおけるバリューチェンをじっくりと検討し、一体どの作業をAIに置き換えた場合、そのビジネスのバリューチェーンが最適化されるのか、ということです。

例えば、前述した製造業の光熱費節約に関しても、熱源の割り振りに実装するのか、電源設備の監視に導入するのか、オペレーターの監視作業の効率化に実装するのか、で最終的に生み出される価値は変わってきます。