画像はイメージです original image: © Richard Johnson - Fotolia.com
ドローンでイギリスの空港が麻痺
Drone causing chaos in UK airport
2018.12.23
Updated by Mayumi Tanimoto on December 23, 2018, 13:18 pm JST
画像はイメージです original image: © Richard Johnson - Fotolia.com
Drone causing chaos in UK airport
2018.12.23
Updated by Mayumi Tanimoto on December 23, 2018, 13:18 pm JST
イギリスでは、今週終わりからクリスマス休暇に入る人が多いのですが、帰省ラッシュのさなかに、ロンドン南部のガトウィック空港の滑走路にドローンが侵入し、水曜日から土曜日にかけて、航空機の大半が飛行不可能という事態に陥ってしまい、14万人以上に影響が出るという驚くべき事件が起きてしまいました。
ロンドンには大小合わせて5つの空港があるのですが、ガトウィックは市の中心部から鉄道で30分くらいの郊外にあって 、若干小規模なのですが、欧州行きの短距離便やLCCがここから出ます。ヒースローが不便なので、最近は中東や北米行きの便も多いです。
この様な状況だと「不可抗力」とみなされるので、航空会社が遅延やキャンセルの保証を一切しない可能性があったり、旅行保険も宿泊施設のキャンセルや代替便の費用を保証しない可能性があり、激怒している旅客が多数です。
現在、空港近くに住むイギリス人夫婦が容疑者として報道されているのですが、ドローン飛行中に仕事中だったという証言もあって、容疑が事実なのかどうかは不明です。
今回の事件で驚いたのは、テロ対策が欧州で最も厳しいはずのイギリスですら、個人が趣味で所有するレベルのサイズのドローンを空港の滑走路に入り込ませることが簡単で、しかもたった数台が飛行を繰り返したことで、空港の機能が数日間に渡って完全に麻痺してしまったことです。
さらに驚くべきことは、これだけテロ対策に熱心なイギリスでさえ、空港のような重要インフラにおけるドローン対策がほとんど皆無だったことです。
その上、政府内で対応に関して揉めたことも衝撃的でした。
当初は、イギリス警察がドローンをスナイパーライフルで捕獲しようとしたのですが全く効果がありません。急遽、英空軍と陸軍の電子戦専門部隊が招聘され、ドローン探知機と捕獲器を以って対策に当たりますが、空港の安全対策に軍が出動することに運輸省と内務省が反対したために、対応が18時間遅れています。
実は7月に、元軍人であるガトウィックのセキュリティチーフが、ドローンのリスクをセミナーで報告していたのですが、具体的な対策が取られなかったことが明らかになっています(福島の原発で、津波による電源喪失のリスクが数年前に警告されていた件を思い出します)。
しかし恐ろしいのは、今回の件で、個人向けのドローンを飛ばすだけで、大規模な空港を麻痺させることができる、ということが大々的にわかってしまったことです。滑走路に到達するまで全く検知できなかったわけで、仮にドローンが爆薬や細菌兵器を積んでいた場合、壊滅的な破壊を行うことも可能でしょう(元々兵器なので当たり前ですが)。
これだけ警備が厳しいイギリスでこの調子なので、他の欧州各国に関しては想像するまでもありません。対策がされていないだけではなく、各国の運輸当局や空港当局がドローンの驚異をあまりにも軽く見すぎている、ということがバレてしまったのも重大事件です。
欧州は産業育成を優先するために、ドローンに関する規制は抑えているわけですが、これが裏目に出てしまったわけで、今後の欧州のドローン関連規制や製作の見直しにも影響が出るでしょう。
この件は、日本にとっても警告的な意味合いで学ぶことが多いといえます。
テロ対策に関しては、イギリスよりも日本の方がはるかに緩いわけですが、空港だけではなく主要官庁や重要なランドマークにおいて、自衛隊が出動して早急に対策できる体制や、ドローン防御装置を設置するべきでしょう。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。