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ゴーンの逃亡劇からテック業界が学ぶべきこと

What Tech companies should learn from Carlos Ghosn

2020.01.27

Updated by Mayumi Tanimoto on January 27, 2020, 10:51 am JST

昨年末の日本の最も驚くべきニュースの一つはカルロス・ゴーン氏の逃亡劇でありましたが、欧州ではどのように報道されていたかということに興味がある方が多いのではないでしょうか。

一部フランスのメディアは日本の司法制度を批判するものもありましたが、フランスだけではなくイギリスや他の欧州各国もこの逃亡劇に関しては大変批判的であり、呆れている国が少なくありません。

その理由というのは、日本の司法制度には批判されるところもあるものの、各国は「日本が法治国家であり決して独裁国ではない」ということをよく知っているからです。

また、逃亡したレバノンという国は、欧州では大変悪い意味で馴染みのある国です。

この国は、後ろめたいことがある富裕層がドルを溜め込んで豪遊している国として有名であり、欧州から遠くありませんから歴史的、経済的につながりのある人々がいるわけです。国の透明性や安定性なども良い評価であるとはいえません。

中世の仕組みを残したまま独裁国家的な性格を残して回っている国ですから、国内の経済格差もひどく、投資家やテック業界の人がビジネスをしたいと思う国ではありません。

このような国に逃亡するくらいなのですから、欧州各国ではかなり呆れているという状況なのです。

ところでこの逃亡劇は、テック業界にいる人々にとって、レピュテーション・マネージメント(評判の管理)の点で教訓がある事件です。

ゴーン氏は、逃げる方法よりも自分の評判をどう管理すべきかを考えるべきだったのです。

彼には「integrity」がありませんでした。integrityというのは、日本ではあまり馴染みがありませんが、北米や欧州では大変重要視されることです。様々な事柄に対して誠実であることです。

ゴーン氏は、一時期は好意的だった日本を敵に回し、被害者であることを強調しすぎて評判が最悪になってしまいました。

北米や欧州では、自分のやったことや言ったことに対して責任を持つことを求める社会ですから、手のひらを返したように態度を変えたり、自分が有利になるように発言をコロコロ変えたり、心情を変える個人や企業というのは信用されません。

長年生き残っているテック企業を見渡すと、基本的にはintegrityがあるところです。投資家も消費者も、この辺を案外シビアに見ています。

これは、北米や欧州の個人主義というものの下地があるということを示しています。北米や欧州では、契約書や口頭で自分は何がしのルールを守りますということを宣言したりするのですが、これはまさにその人のintegrityを確認しているわけです。

例えば日本企業は、時にサービス説明に書いてあることや契約書に書いてあることをきっちりと実行しないことがあり、北米や欧州の企業の大きな反感を買うことがあります。

普段のオペレーションに間違いがあったり遅刻をしたりするようなことがあっても、それは不可抗力であり人間は間違いを犯すからということで大目に見てもらえたりするのですが、 integrityがないとなると大変なことになります。

この辺は、日本とはかなり感覚が違うといえるのではないでしょうか。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。