画像はイメージです original image: littlewolf1989 / stock.adobe.com
商用車のIoT化を加速するBLUE-Connectとタイヤマネージメントサービス
~車載IoTプラットフォームのご紹介と住友ゴム工業の取り組み事例~
2020.03.23
Updated by WirelessWire News編集部 on March 23, 2020, 14:15 pm JST
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~車載IoTプラットフォームのご紹介と住友ゴム工業の取り組み事例~
2020.03.23
Updated by WirelessWire News編集部 on March 23, 2020, 14:15 pm JST
▼トライポッドワークス 代表取締役社長 佐々木 賢一氏
トライポッドワークスはIoTや映像技術を使って、運輸業の業務効率化、建設業の現場の見える化や保育業における安全対策の実現などに取り組んでいる。日本は今、人手不足が大きな社会課題になり、企業の課題でもある。センサーデータや映像データをネットワーク経由でクラウドに集めて分析することで、より少しでも課題の解決に近づけていきたい。その一つの提案が、トライポッドワークスの車載IoTソリューション「BLUE-Connect(ブルーコネクト)」である。
物流業はEC(電子商取引)の発展によって、特に宅配を中心に荷物が増え、今までの人数では業務が回らなくなりつつある。さらに、配送員の高齢化が進んでおり、今後ベテランのドライバーがリタイヤするというリスクも抱えている。その解決方法を考えた場合、人手で補うのは難しい。そこで徐々にITを活用して効率化を図っていきながら、自動化も検討していくことが必要であろう。
ところが、商用車の分野はコネクティッドカーの広がりで車がIT化することによって、物流業がメリットを享受できるのかというと、必ずしもそうではない。物流業では、メーカーや車種をまたいだ大量の車両を保有しながら事業展開をすることが多い。自動車メーカーが商用車でコネクティッドカーを作っても、囲い込みなどによるメリットが物流業には得られないのだ。
また、自動車メーカーが用意したコネクティッドカーの仕組みでは、車はブラックボックス化されてしまう。複数のメーカーや車種をまたいだ大量の車両を利用する物流業では、メーカーが用意した車独自のIoTの仕組み以外の手段を使って、どうやって車や運転手の情報を独自に入手するかが課題になっている。そのため、外付けのIoTの仕組み、外付けのセンサーの引き合いが増えている。
「BLUE-Connect」は、車載のセンサーと車載のエッジサーバー、クラウドからなる車載IoTプラットフォームである。管理画面やドライバーと接するアプリも用意しており、拡張性もある。今後はデジタルタコグラフなど既存の車載装置との連携も考えており、運転の状態やドライバーの生態情報なども一緒に集める予定だ。
運輸業の業務デジタル化に関しては、運行前の点呼業務のデジタル化のニーズが高い。朝一番の点呼、運行後の点呼、整備といった業務はデジタル化がされていない企業が多い。また、アルコールチェックもニーズがある。BLUE-Connect では、Bluetoothでつながるセンサーをプラットフォーム上に収容できるので、事務所でのチェックだけでなく、出先でもアルコールチェックができる。こうした仕組みにより、なりすましや、すり抜けをなくし、クラウドにデータを蓄積していく。「私たちの提供するサービスだけでなく、他のITベンダーがエンドユーザーに様々なサービスを提供する際のプラットフォームとして使っていただきたい」と佐々木氏は述べた。
佐々木氏は、BLUE-Connectの具体的なサービス展開例として、TPMS(Tire Pressure Monitoring System)を紹介した。
現在、タイヤの破損事故(パンク)は非常に多い。日本自動車連盟(JAF)の統計データからみても、タイヤパンクを原因とした出動件数は右肩上がりで増えている。タイヤは高性能になっているので、タイヤ自体が弱くなっているわけではない。ガソリンスタンドがセルフ化になってしまったことから、タイヤの運用があまりにも手つかずになってしまっているためにパンクが増えていると考えられる。
▼出典: JAF 2019年03月08日付けプレスリリース(※2 バースト(タイヤの破裂)、エア圧不足含む)
商用車でも、特に後方の二重の内側のタイヤはほとんど検査できていない。実際には、叩いたり、蹴飛ばしたりして、空気が抜けていないかを感覚的に調べている程度である。安全面を考えたら本当にタイヤが適正な空気圧になっているかのモニタリングが必要である。さらに、適正な空気圧にしていれば燃費が良くなる効果も上がる。
そこで、TPMSが必要となってくる。「TPMSの歴史は古い。しかし、コンセプトとしてはけっこう認められていたにもかかわらず、タイヤの中への装着が面倒であるためにあまり実用化されていなかった。試験的に数台であればまだしも、数百台、数千台といった車に対して、それぞれ10輪や12輪の全部に装着するとなると、運用に耐えられないからだ」と佐々木氏。そこで、トライポッドワークスは、外付けできるキャップ型のセンサーを開発した。
昨今では、世界的な流れとしてTPMSの法制化が進んでいる。欧米や韓国では新車にはTPMSを義務づけている。日本もやはりそういう流れになると考えられる。「こうした背景の中で、私たちのようなベンチャー企業だけでは、巨大な車の業界にTPMSを広く推し進めていくのは難しい。そこで住友ゴムと、ここ数年一緒にサービス開発をしている」と佐々木氏はコメントした。
佐々木氏の説明を、住友ゴム工業 経営企画部 西本 尚弘氏が引き次いだ。
▼住友ゴム工業 経営企画部課長代理 西本 尚弘氏
住友ゴム工業は、2年ほど前からデジタル関係の開発を推進しており、MaaS、CASEに対応していくような推進チームを部門内に設けた。「今後タイヤ事業にも新しい価値観が生まれてくるだろうと考えている。そこでタイヤメーカーだけではなく、他のメーカーと一緒になってイノベーションに取り組み、新しいビジネスを探し、構築していくことが大事だ」と西本氏は述べた。
「住友ゴム工業は2年前の東京モーターショーで、SMART TYRE CONCEPTという新しいモビリティに対応するタイヤの新しい技術を発表した。今回のモーターショーでは、2年経ってもウェットグリップ性能があまり低下しないアクティブトレッド技術を採用したタイヤを発表。雨や雪などによって路面条件が変化した際にもタイヤそのものが適応、変化していく未来のタイヤなどの材料研究を進めている。こういった未来のタイヤ技術にデジタルを使ったソリューションサービスを新たに付け加えていくのが今年の我々の発表、コンセプトになる」(西本氏)。
さらに西本氏は「交通機関の運営効率の向上に貢献するための安全・安心なソリューションサービスを備えたタイヤづくり、サービスづくりをこれから進めていく」という。そのため、2019年5月に3社の基本業務提携を発表した。トライポッドワークスとはMaaSにおける新しいソリューションサービスのプラットフォーム部分で、台湾のSYSGRATIONとはセンサー部分でそれぞれ提携する。
住友ゴム工業は2020年、まずは法人向けにタイヤ空気圧管理ソリューションサービスを展開していく予定だ。このサービスは空気圧などを検知するセンサーから温度、空気圧、位置情報などの情報をクラウドに送って、遠隔で車両を監視できるようにする。従来のTPMSというのは、ドライバーだけにアラートなり異常を通知するものが主流であり、新サービスでは遠隔からもタイヤの状態を検知、監視できるようになる。「将来的には個人ユーザーにもサービスを提供していきたい」と西本氏は展望を語った。
最も重要と考えられるのは、新サービスとして提供されるTPMSクラウドを介して自動車が発信するデータが、さまざまな外部サービスと連携することによってどのような価値を提供できるかであろう。西本氏は「空気圧のデータがどのような価値になるのか。こうした側面でのユーザーバリュー、可能性は、まだ深く探られていない。例えば、空気圧が減ったら1キロ先に充填できるスタンドがあるなどの情報を伝えるサービスも検討できる。この他にも多くの可能性が広がると考えている」とコメントした。
最後にトライポッドワークスの佐々木氏が再び登壇し、「タイヤの新しい仕組みをどんどんサービス化して、安全性、効率化、コストダウンに寄与していくつもりだ。このサービスは日本市場だけではなくて、グローバルにも広めていきたいと考えており、センサーも非常に暑い国から寒い国までいろいろなところでテストしている。IoTの仕組みの部分はより進化させる余地がある。安全性も含めて、技術を進化させ、世の中の動きに必要とされるようなサービスを作っていきたい」と講演を締めくくった。
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