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日本人はなぜオリンピックの問題に大騒ぎするのか?

Why Japanese make a fuss about Tokyo 2020 issues

2021.07.29

Updated by Mayumi Tanimoto on July 29, 2021, 07:00 am JST

今回の東京オリンピックでは、開催前の様々なスキャンダルが日本では話題になっておりました。

開会式直前にプロデューサーが辞任、東京湾が汚染されている、選手村のバブル方式が機能していない、など多くの問題があるわけですが、そういった細かい問題は海外では大騒ぎされているわけではありません。

日本人は、完璧主義なので少しでも問題があると大騒ぎをしますが、北米や欧州は日本ほどは騒ぎません。

それはなぜかといいますと、普段から些細なことには日本ほどこだわらないというおおらかさ、悪くいえば大雑把さがあるからです。あの几帳面そうなドイツでさえ、日本と比べると恐ろしく大雑把です。

これは普段の仕事でも同じで、例えば間違った書類を送ってしまった、スケジュールを勘違いしていた、ミーティングの時間を間違えた、などという事は割と頻繁にあるのですが、細かい間違いを責めたり非難しません。

大雑把な人が多く、自分も気にしないのだからあなたの間違いも気にしないというノリだからです。

二点目にコミュニケーションのやり方が違うというのがあります。

日本と違って他の国では、かなり強めに意思表示をしたり、表現をしないと相手に意図が伝わりません。ですから、日本式の意思表示では先方にとってはちょっとした雑音くらいにしか聞こえないのです。

これはニュースに関しても同じで、選手村のベッドが段ボールだったというようなニュースがあっても、そんなものは過激さが全く足りないので重大なニュース、大問題として扱われることがありません。なにせ他の国では、路上でナタで襲われるとか、暴動で街が破壊されるというニュースがさらっと報道されているわけで、段ボールだからなんだという話です。

とにかく日本と比べコミュニケーションの強さが桁違いで、日々強いメッセージにさらされているので、オリンピックの些細なトラブルをトラブルとして扱わないのです。

これは、ロンドンで2012年にオリンピックがあった時も同じで、当時のロンドンのオリンピックは日本だと考えられないような失敗や意味不明なことが連続していました。。

  • 開催のたった10日前に警備会社が2万人以上の警備員を雇うことを忘れ、それをシステムにエラーがあったからとシステムのせいにした
  • 入場券を大量に売り忘れて席がガラガラになってしまったため、急遽、アフガニスタンから兵士を飛行機で連れてきて座らせた
  • 住民の苦情も何も無視をして、テロ対策の対空ミサイルを民家があるところに設置してしまってスタジアムに向けた
  • 会場まで向かう高速道路に盛大にヒビが入っていた
  • 会場に行くバスが道を間違えて、20分で着くところを5時間も6時間もかかってしまうということが起こった
  • 開催の1年以上前から、地下鉄や電車で延々とオリンピックの最中は街が大変なことになると構内アナウンスで脅しまくったので、オリンピック時期には人々が国外や地方に脱出してしまいゴーストタウンになって、店がどんどん潰れてしまった

このようなことが起きまくりましたが、誰の責任を追及するといった事はなく、問題は問題だが仕方がない、ということで皆忘れてしまいました。日本の感覚だと、非常に驚くべきところではあります。

しかしこういう感覚があるからこそ、ビジネスの場でもとりあえず最も重要なところだけ押さえておいて、目的を達成して、細かい部分は後で何とか帳尻を合わせればいいやと考えます。

そういうところは、日本人にはあまりないところです。

よくいえば臨機応変、悪くいえば非常に雑ということでありますが、終わったことにはくよくよしないというところは、大いに見習うべきだと思います。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。