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講師 調 麻佐志(しらべ・まさし:東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院・教授)

日本の論文を増やす方法をみんなで一緒に考えよう

how to increase the number of Japanese papers

2021.11.11

Updated by Schrodinger on November 11, 2021, 13:00 pm JST

1996年(平成8年)の7月2日に閣議決定した第1期科学技術基本計画では、「若手研究者層の養成、拡充等を図る『ポストドクター等1万人支援計画』を平成12年度までに達成するなどの施策により、支援の充実を図る」と謳われ、ポスドク自体は増えました。ところが、そのポスドクに就職先がない。ポスドクを増やしても教授のポストを増やしたわけではないので、一気に就職難になってしまいました。この様子を見ていた学部生は、当然、博士課程など目指そうとはしません。一般に論文を量産するのは博士課程の学生なので、ポスドク1万人計画によって皮肉にも「論文が減り始める」という珍事が発生しました。

これに輪をかけたのが、2004年の大学法人化です。法人に相応しい事務処理(?)が教授レベルにまで求められ、計算機ではなく提出書類が爆発してしまいました。教育と研究だけに専念していられた大学の先生に「事務」という新しい仕事が加わったのです。当然、論文を書くための時間も減ることになります。

ちょうど同じ時期にイギリスで世界大学ランキングの調査が始まり、フタを開けてみると「科学技術立国」であるはずの日本の大学のランキングが不甲斐ないことに国内が騒然とします。QS(Quacquarelli Symonds)やTHE(The Times Higher Education)の大学ランキングは、調査手法に様々な問題を抱えているにもかかわらず、欧米からの情報を鵜呑みにしがちな日本文化は、これで一気に自信を失います。

これらが、現在の「日本の科学技術力の世界的プレゼンスの低さ」にまでつながっているわけです。

でも、ボヤいていても始まりません。「選択と集中」という戦略が「当たり馬券だけを買えば、必ず当たる」という荒唐無稽な発想とさほど違わないことに気付いた政府もようやく重い腰を上げ、なんとか巻き返しを図るべく10兆円規模の「大学ファンド」が創設されました。

ここで科学計量学の専門家、東京工業大学・調(しらべ)先生の登場です。科学計量学は、科学研究を論文データベースや電子メディア、研究者数、研究費などの幅広いデータを用いて数字で分析する学問分野です。調先生がこの分野を研究するきっかけになったのは、学部生時代に、当時、東大先端研の村上陽一郎研の助手だった中島秀人先生による「STS Network Japan」という科学技術社会論の団体の立ち上げを手伝ったこと、だそうです。

「エラい先生の有難いお話」を静かに拝聴する時代は終わりました。今回は、調先生の講義を素材として、みんなで「日本の論文を増やす方法」を考える一夜にしたいと思います。意見のある人もない人もぜひ積極的に参加してください。

ようこそシュレディンガーの水曜日 第六夜へ。

募集要項
11月17日(水曜日)19:30-
日本の論文を増やす方法をみんな一緒に考えよう

講師 調 麻佐志(しらべ・まさし:東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院・教授)

講師 調 麻佐志(しらべ・まさし:東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院・教授)

1965年東京都生まれ。1989年東京大学理学部数学科、1995年同大学院総合文化研究科満期退学、1998年博士(学術)。東京工業大学大学院理工学研究科助教授などを経て、2016年より現職。科学技術社会論と科学計量学を専門とする。共著に『研究評価・科学論のための科学計量学入門』(丸善出版、2004年)、『科学者に委ねてはいけないこと科学から『生』をとりもどす』(岩波書店、2013年)、『科学技術をよく考える クリティカルシンキング練習帳』(名古屋大学出版会、2013年)など。

・日程:2021年11月17日(水曜)19:30-21:00(予定):19時半からゆるゆると開講します。
・Zoomを利用したオンラインイベント:前日までに参加URLをメールでお送りします
・お申し込み:こちらのPeatixのページからお申し込みください。


「シュレディンガーの水曜日」は、毎週水曜日19時半に開講するサイエンスカフェです。毎週、国内最高レベルの研究者に最先端の知見をご披露いただきます。下記の4人のレギュラーコメンテータが運営しています。

原正彦(メインキャスター、MC):東京工業大学・物質理工学院応用科学系 教授原正彦(メインコメンテータ、MC):東京工業大学・物質理工学院・応用化学系 教授
1980年東京工業大学・有機材料工学科卒業、1983年修士修了、1988年工学博士。1981年から82年まで英国・マンチェスター大学・物理学科に留学。1985年4月から理化学研究所の高分子化学研究室・研究員。分子素子、エキゾチックナノ材料、局所時空間機能、創発機能(後に揺律機能)などの研究チームを主管、さらに理研-HYU連携研究センター長(韓国ソウル)、連携研究部門長を歴任。現在は東京工業大学教授、地球生命研究所(ELSI)化学進化ラボユニット兼務、理研客員研究員、国連大学客員教授を務める。

今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授
武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築の道を歩まず、雑誌や放送などのメディアビジネスに携わり、'80年代に米国でパーソナルコンピュータとネットワークの黎明期を体験。帰国後、出版社でネットワークサービスの運営などをてがけ、'99年に武蔵野美術大学デザイン情報学科創設とともに教授として着任。現在も新たな表現や創造的コラボレーションを可能にする学習の「場」実現に向け活動中。

増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授
東京大学大学院を修了後、富士通、シャープ、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、米Appleにて研究職を歴任。2009年より現職。『POBox』や、簡単にスクリーンショットをアップできる『Gyazo』の開発者としても知られる、日本のユーザインターフェース研究の第一人者だがIT業界ではむしろ「気さくな発明おじさん」として有名。近著に『スマホに満足してますか?(ユーザインタフェースの心理学)(光文社新書)など。

竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人
日経BP社でのインターネット事業開発の経験を経て、2004年にスタイル株式会社を設立。2010年にWirelessWireNewsを創刊。早稲田大学大学院国際情報通信研究科非常勤講師(1997〜2003年)、独立行政法人情報処理推進機構・AI社会実装推進委員(2017年)、編著に『ネットコミュニティビジネス入門』(日経BP社)、『モビリティと人の未来 自動運転は人を幸せにするか』(平凡社)、近著に『会社をつくれば自由になれる』(インプレス/ミシマ社)、など。

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