画像はイメージです original image: beeboys / stock.adobe.com
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日本の税制は、法人税減税/消費税増税ということで進んできた。下記のリンク先のいくつかのPDFを見ると、日本の主な税収の内訳と推移が一目で分かる。ざっくりいうと、
・所得税と消費税がほぼ同じくらいになってきた
・消費税は、2014年の8%への増税以降に存在感を増した
・法人税率は、40%台から約半分の23%まで下がった
・法人税の税収は、ほぼ一貫して所得税を下回っている
・所得税率は、微妙に所得区分が変わったりしているが概ね下がってきた
といったところであろうか。
・一般会計税収の推移(財務省)
・所得税収の推移(1p)、法人税率と税収の推移(2p)(内閣府)
・法人税収の推移(財務省)
・所得税の税率構造(財務省)
・所得税の税率推移(財務省)
ここで不思議なのが、なぜ法人税を増税して消費税を減税しないのだろうか、という点である。時限措置の軽減税率とはいえ、零細企業の法人税率は15%だったりした(地方法人税などもあるので実効税率はもう少し高いが)。誰にでも同じくかかる消費税の10%と単純に比べても、なんとなく釈然としない。
法人税減税の建前としては、
・税負担を軽くすることで、企業の雇用や設備投資などに資する
・海外と比較すると、いまだに日本の法人税率は割高感がある
・起業のしやすさや海外資本を呼び込むためには低税率が望ましい
・国内には赤字企業が多く、そもそも納税対象にならない
などが挙げられるだろうが、ちょっと違った見方をすると、
・企業は税率が低いことによって容易に利益を確保できる
・確保した利益は、雇用や賃上げ、設備投資、新規事業開発などに回さずに内部留保することができる
といった側面もあるはずだ。
もし、法人税率がもっと高かったとすると、企業は納税を回避するために新規事業開発や賃上げなどにお金を回して課税対象の利益を圧縮しようとする、ということもないとはいえないだろう。アマゾンが売上高を伸ばし続けているのに利益はほとんどない状態のまま事業開発に投資し続けたというのは有名な話だが、キャッシュフローさえあれば企業は存続するので、利益を出す(=法人税を納税する)事自体は、さほど重要ではないともいえる。
もちろん、コロナ禍のような非常事態において企業が耐えられるのは、内部留保を始めとしたキャッシュフローがあるからということは否定しない。しかし、納税を避けるために企業が使うお金が増える(=世の中にお金が回る、あるいはデジタル化が進むかもしれない)のに加えて、消費税を減税することによって消費意欲が増大すれば、現状はかなり違った景色になるのではないか、これまでの税制は増やすところと減らすところが逆だったのではないか、とも思うのである。
超零細企業ではあるが、一応、会社を経営している身としては、現在の低い税率であってもなるべく利益は出さないようにしているわけで、法人税の税率が上がることにさほど抵抗感はない。稼いだお金が使途を指定できない税金になってしまうよりは、自社のために投資する方が先のことを考えても精神的にも健全である。
雇用されていることや格差について、税制(その国のポリシーの表れでもある)とともに考えさせられたのが、1月24日に創刊した「Modern Times」に掲載された以下の論考である。零細企業経営者の雑駁な感覚ではあるが、補助線になれば幸いだ。
・ピケティが見逃した「金融社会」(Modern Times 2022/1/24)
「本当のDX」を考えるウェブメディア『Modern Times』
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登録はこちら北海道札幌市出身。システムエンジニア、IT分野の専門雑誌編集、Webメディア編集・運営、読者コミュニティの運営などを経験後、2006年にWebを主な事業ドメインとする「有限会社ハイブリッドメディア・ラボ」を設立。2014年、新規事業として富士山麓で「cafe TRAIL」を開店。2019年の閉店後も、師と仰ぐインド人シェフのアドバイスを受けながら、日本の食材を生かしたインドカレーを研究している。