photo by 佐藤秀明
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ゆっくりと曖昧に低密化していく都市
「人口が減ると私の都市はどうなってしまうんでしょうか」
時々電話や電子メールで相談が来る。人口が減り、世帯が減っていくと、都市の中に小さな穴があくように空き家や空き地が増えていく。一つひとつの家には年をとった人が住んでおり、その人たちがだんだんとこの世を去っていくから空き家や空き地が増える。
その都市に魅力的な仕事があれば、若い人たちがその仕事に惹かれて都市にやってきて、その空き家や空き地に入り込む。かつてのように若い人たちが次々とやってくるわけではないので、ほとんどの都市では、空き家や空き地が増える速さがそれが再利用される速さを上回り、都市の中にはじわじわと空き家や空き地が増えていくことになる。
あちこちでバラバラと空き家や空き地が増え、そこにバラバラと新しい人が入り、その間にもあちこちでバラバラと空き家や空き地が増えていく、という、何ともはっきりしない調子で都市の空間はゆっくりと低密化していく。
日本は300万人分不幸になったわけではない
人口が減ること自体は、特に大きな問題ではない。日本の現在の人口は、ピークから300万人ほど減って1億2534万人であるが、では300万人分だけ不幸になったのかというとそうではない。日本の人口は1967年に1億人だったが、ではそのころの人たちが今と比べて1割ほど不幸だったのか、というとやはりそれも定かではない。台湾の人口は2360万人であるが、では彼らが日本にくらべて多くの問題を抱えているかというとそういうことではない。
問題は人口の多寡ではなく、課題を解決することができない都市になってしまうことである。社会の課題は次々と押し寄せる。人口減少によって引き起こされる課題もたくさんあるが、人口と関係なく災害は起きるだろうし、人口と関係なく政治と経済がうまく機能しなければ格差は広がる。
人口が増えている時、都市が拡大している時は、そういった課題を新しく建物を作ることで解くことができた。古い建物を壊して新しい建物をつくることで安全なまちをつくることができたし、公営住宅をたくさんつくって貧困層をすくい上げることもできた。
しかしこれからは、何ともはっきりしない調子でしか変化しない都市の空間を使って、どう課題を解決するのかを考えなくてはならない。あちこちでバラバラに、散在的に発生する開発と縮小の機会をつかって、課題を解決できる都市をどうつくっていくのかが問われているのである。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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