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上座とは、時間を流す装置である

2023.01.13

Updated by WirelessWire News編集部 on January 13, 2023, 06:43 am JST

現代の意味とはややずれる上と下の概念

建築において、日本は中国とは違う国から深い影響を受けている。私はこれを言葉の来た道から考察してみた。

例えば、「上「 と「下」という言葉。これには、ウへとシタ、カミとシモという二つの読み方があるが、平安時代までの言葉の意味を調べられる『上代用語辞典』という辞書によると、「ウヘ」という言葉の意味は1番目に上部と書いてあるが、2番目には表面とある。カミも1番目は土地の高いところで、2番目に川の上流と書いてある。

他にもいくつか意味はあるが、解説を見てみると、「ウヘ・シタのほうがものの表・裏を表すのに対して、カミ・シモのほうはひと続きのものの初めと終わりを意味する点において異なる」とあり、ともに1番目の意味である上部と高いところが入っていない。

これはどういうことかを探るために、奈良時代の記録である古事記、日本書紀、万葉集、風土記、それから幾つかの宣命体から、ウヘ・シタとカミ・シモという言葉を使っている例を探し出し、それぞれの言葉がどのような位置関係を表しているのかを調べてみた。

すると、見つかった202例の「ウヘ」のうち、9割がものの表面か、見えるところで、上部を示す確実な例はなかった。シタのほうは、裏面のことを指しているのが3割弱。6割近くが見えないところをシタと呼んでいる。カミ・シモのほうは、川や潮流の上流と下流のことを指しているのが8割程度で土地の高いところを示す例はなかった。すると、ともに2番目に書かれている意味こそが本来の意味ではないのか、という気がしてくる。

私の推測では、ウヘ・シタに使われる漢字、すなわち、上と下という漢字はもともと中国において基準よりも高いところや低いところを指していたから、天は高いところにあり、地は下にあるというような上下の感性は、上下という漢字の中に反映されていた意味が後から入ってきて、それまでの日本で使われていた言葉の意味に乱れを生じさせたのだと考えている。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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