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多幸症的な幻想を振りまくことのできない時代に万博を開催するということ

2023.01.16

Updated by WirelessWire News編集部 on January 16, 2023, 07:18 am JST

「万博」は時代遅れか

「万博思考」と聞いて、多くの人々は「何だそれは?」と怪訝に思うに違いない。それも当然だろう。これはどんな辞書にも載っていない、私自身の造語なのだから。では人々は、この造語から何を感じ取るだろうか。

一般に万博というと、だだっ広い満艦飾の会場に多くのパビリオンが林立し、参加各国による観光と物産の展示や大手企業による最新技術の展示が繰り広げられている光景を連想する人が多いだろう。ただ率直に言って、現在万博と聞いて是非とも家族や友人と一緒に足を運びたいと思う人はそれほど多くなく、むしろどこか時代遅れに感じられ、あまり食指が動かない人の方が多いのではないだろうか。

もちろん、かつてはそんなことはなかった。万博と聞くと多くの人が心躍らせ、我先にと会場に詰め掛け、人気パビリオンに長蛇の列をなしたものだ。日本で万博といえば、誰しもまず1970年の大阪万博を思い起こすに違いない。日本初であったこの万博は、当時史上最高の6140万人もの観客を動員した未曽有の国家事業であり、1964年の東京オリンピックと並んで戦後復興を象徴するイベントであった。

その成功体験は多くの関係者の心に刻まれ、その後の日本では「夢よもう一度!」とばかりに日本では沖縄海洋博(1975)、つくば科学博(1985)、花と緑の国際博(1990)、愛・地球博(2005)と4度の万博が開催された。「万博」を名乗っていない地方博まで含めたら、その数はさらに増大する。だが、その一つとして大阪万博の熱気を再現するには至らず、会場で繰り広げられる数々の見世物は、回を重ねるごとに飽きられていった。

数年にわたるプロモーションの結果招致にこぎ着けた2025年関西万博が、開催まであと3年となった現在もあまり盛り上がっているようには見えないのも、そうした既視感のためだろう。1年遅れで開催された2020東京オリンピックは、大半の競技が無観客で開催されたためイマイチ盛り上がりに欠けた感が否めなかったが、コロナ禍の影響が依然として不透明な昨今、関西万博に同様の危惧を抱いている人も少なくないのではないか。

すでに一度終わっている万博の時代

2025年関西万博の成否がどうなるのか、もちろん現時点ではわからない。ただ同じ大阪が舞台ではあっても、そこに出現する風景が半世紀前の万博のそれとはまったく異質なものとなるであろうことは間違いない。夢洲(ゆめしま)を舞台とした万博で、果たしていかなる実験が繰り広げられるのだろうか。私がここで「万博思考」と呼びたいのは、様々な実験のベースとなるであろう思考のことである。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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