photo by 佐藤秀明
photo by 佐藤秀明
日本に多かった、空気を読みあう「農村型コミュニティ」
そもそもコミュニティとは何だろうか。拙書『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書 2009年)でも述べた点だが、コミュニティには大きく分けて二つの型がある。「農村型コミュニティ」と「都市型コミュニティ」である。
日本で作られるコミュニティは、一般的には農村型コミュニティと呼べるものであることが多い。農村型コミュニティとは、同質的な人々が集団となり、情緒的な一体感をもって結びついている社会だ。ここでの人々は、空気を読み合い、互いを忖度し、同調性を重んじる。
一方で、都市型コミュニティはより緩やかなつながりで集団が形成されている。個人が独立した存在であり、人間関係は比較的ドライで、異質な個人も含まれる。集団を超えたつながりも発生し、空気を読むことよりも、言語で論理的に説明することを好む。
旧来の日本社会は農村型コミュニティが多数だった。そのために、コミュニティとは息苦しくて抑圧性が高いものだと理解されがちだったのだ。だが、都市型のコミュニティならどうだろう。これなら、コミュニティに属することへの抵抗感が随分と薄まるのではないか。だからこれからの日本においてコミュニティを考えるときは、いかに都市型コミュニティを増やしていけるかが重要になる。
しかし、まさにここが難所である。社会人類学者の故・中根千枝氏が1967年に『タテ社会の人間関係 単一社会の理論』を現したときから、日本社会はほとんど変わっていない。
『タテ社会の人間関係』によれば、日本社会はウチとソトが強く意識される社会だという。同じ集団内すなわちウチでは徹底的に気を使うし、そのために同調圧力も発生する。ところが、ソトに対しては非常に無関心であり、ときには敵対的ですらあるという。基本的には集団は内側に閉じており、それぞれの集団の孤立性が維持されやすいのだ。これはすなわち、農村型コミュニティであるといえる。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
この筆者の記事をもっと読む
「本当のDX」を考えるウェブメディア『モダンタイムズ』
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちら