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AIが絵画の鑑定士になる

AI identifies famous paintings

2023.02.28

Updated by Mayumi Tanimoto on February 28, 2023, 12:00 pm JST

イギリスのアートコレクターであるジョージ・レスター・ウィンワード氏が1981年に入手した『de Brécy Tondo』は、長年ラファエロの作品ではないかと思われてきたのですが、この度、大学の研究者がAIによる顔認識技術を使用し、ラファエロ作の可能性が高いという結果を得ました。

Hassan Ugail教授が開発したAIを使用し、ブラッドフォード大学のチームがこの作品とラファエロの『システィーナの聖母』の中の人物の顔を比較したところ、聖母の顔の95%、子供の顔の86%が似通っているという結果になりました。ちなみに、75%の類似性があれば、二つの作品は同じ作者のものと断定するに充分だとされています。

非常に興味深いのが、このAIは元々は犯罪捜査や治安維持、個人認識に使用することを想定したものなのです。つまり、人間対象に使用される顔認識の技術は、絵画の中の人物像の判定にも使用できるということが分かったのです。蓄積されたデータは人間の顔ですが、動画や写真をある意味でデフォルメした人物像の判定にも使えるわけです。

もちろん、最終的に絵画の真贋の判断を下すのは人間ではあるのですが、Ugail教授によれば、「AIを使用すると、人間の目では判別不可能な類似点や相違点を洗い出しての判別が可能となり、蓄積された膨大なデータを使用するために、より精度の高い判断ができる」といいます。

これは、熟練度の高い匠の知識や勘を、データベース化し、照合と判断を自動化したのと同じでしょう。医療系の画像データの判断と似たような状況ですね。

絵画でもこれが可能になるということは、伝統建築や伝統的な染色、伝統工芸などの分野でも匠の知識や判断を機械化し、補助的な判断ツールとして使うことが可能になるでしょう。

高齢化で継承者がいないために、知識がどんどん失われつつある日本の伝統的な文化や技術の世界にこそ導入が必要です。

しかし問題は、データ収集の部分です。これは労働集約的になるので、どの様に開発の原資と人手を調達するかが課題になりますね。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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