WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

資源を探し、国を守る。雲を貫く電波の眼

2023.03.01

Updated by WirelessWire News編集部 on March 1, 2023, 06:54 am JST

大気中の二酸化炭素はどのように測られるのか

地球観測衛星は、地球を周回する軌道から地球表面を観測する。観測する手段は光、地表を照らす太陽光の反射をつかう。この時、光は大気の層を通過する。

我々は「空気は透明」と思っているが、これは我々の眼が、大気を通過しやすい波長の光を利用するように進化した結果だ。波長によっては大気は決して透明ではなく、むしろ真っ黒である場合もある。

大気を通りやすい光の波長帯のことを「大気の窓」という。可視光付近なら波長350nmから1000nm(1μm)付近が大気の窓だ。これよりも波長の短い紫外線、X線、ガンマ線などは大気を透過しない。逆に波長の長い方に向かうと、赤外線領域では、大気を構成する様々な物質による特定の波長の吸収が存在し、その隙間に小さな窓がいくつも開いている。

物質による光の吸収があるということは、逆に言えば、特定波長帯の吸収から大気の成分を観測できるということでもある。実際に、オゾンや二酸化炭素といった大気成分をこの波長帯で観測する衛星が打ち上げられ、運用されている。

大気を透過しない波長の光で宇宙を観測したければ、大気圏の外に出て観測を行う必要がある。波長によっては、気球で到達できる高度20km以上で、観測が可能になったりもする。望遠鏡を気球に積んだり、あるいは衛星に積んで宇宙に送り込んだりして観測を行うわけだ。

雲が多い地域では電波が活躍

光を使って観測する地球観測衛星には、ひとつ大きな問題点がある。雲が出ていると、その下の地表を観測できないということだ。地球上には熱帯を中心に雨がちの地域もあり、そういう場所は宇宙からの観測頻度が落ちることになる。

ところで、光とは電磁波であり、波長の長い領域のことを我々は電波と呼んでいる。電波にも「大気の窓」がある。電波における大気の窓は波長で言えば1mmから30m、周波数で言えば10MHzから300GHzと幅広い。

電波は雲を透過する。雲は小さな水滴や氷の粒の集まりだ。光は散乱されてしまうので、雲を透過できない。しかし光より波長の長い電波なら、粒を回り込んで向こう側へと抜けることができる。つまり、大気を透過する10MHzから300GHzの電波を使えば、雲が出ていても、その下にある地表を観ることができる。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
この筆者の記事をもっと読む

「本当のDX」を考えるウェブメディア『モダンタイムズ』創刊「本当のDX」を考えるウェブメディア『モダンタイムズ

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

RELATED TAG