写真:Everett Collection / shutterstock
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ポスト万博の物語だった仮面ライダー
今回は、仮面ライダーに目を向けてみよう。大阪万博が登場するのは、第7話の「死神カメレオン 決斗!万博跡」(1971年5月15日放送)だが、このエピソードも第6話との前後編で構成されている。そのストーリーを手短に紹介しておこう。
世界征服計画のために多額の資金を必要としていたショッカーは、ヒトラーが生前に日本に送った時価数兆円の財宝を強奪する計画を立てる。死神カメレオンは財宝の秘密を知る元海軍軍人の砂田を脅迫し、彼の娘を誘拐して秘密を聞き出そうとするものの、本郷猛によって阻止されてしまう。
その後、本郷は財宝の秘密が記された「ナチスの鉄箱」を一足先に入手するが、カメレオンは本郷が立花藤兵衛(ライダーの協力者)に預けた鉄箱を奪い取り、さらにショッカーのアジトに潜入した本郷を「ライダー殺し」の罠に陥れる。しかし、カメレオンが奪った鉄箱は実は偽物であり、本物のありかを聞き出すために、瀕死の本郷を解放する。
本物は、本郷の恩師である阪神工業大学の大山博士が所持していることを知ったカメレオンは、博士を襲撃して箱を手に入れようとするが、箱は既に開けられた後で、研究室にいたのは博士に扮装した立花藤兵衛と助手の緑川ルリ子であった。カメレオンは2人を拉致し、解放してほしければ万博跡まで宝のありかが書かれた地図を持ってこいと本郷を脅迫、地図と人質を交換した後、揉みあいの末に本郷をタワーから突き落とす。これで宝は俺のモノだ。
カメレオンは地図に書かれていた場所から棺を掘り出し、蓋を開けるが、棺に入っていたのはライダーであった。
激しく交戦するカメレオンとライダー。戦いの途中でカメレオンが宝のありかを問うと、ライダーが「人間に悪の心が生まれる汚れた必要のない宝は太平洋に捨てた」と答えたことでカメレオンは戦意を喪失、最後はライダーキックからライダーチョップの連続技を食らって絶命する。
今日であればコンプライアンスの観点から槍玉に挙げられそうなストーリーだが、半世紀も前の作品を今日の価値観で問題視することはやめておこう。ここではただ、大阪万博に引き寄せて考えてみたい。
ウルトラマンとの最大の違いは、やはり放映時期である。「決斗!万博跡」が放映された1971年5月15日は、前年9月13日に大阪万博が終了して約8か月後(収録されたのは3月23日とさらに以前である)、クライマックスの決斗シーンは文字通り多くの遺構が残る「万博跡」で展開された。
これは、メイン視聴者であった子どもの多くが前年に大阪万博へと足を運び、この会場がどのような場所であったかを知っていることを前提としたものである。プレ万博の物語であったウルトラマンに対して、仮面ライダーはポスト万博の物語であったと言えようか。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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