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2010年代、レーダー衛星事業にベンチャー企業が参入。絶え間なく地球を観測できるようになった人類は植物を空から見る

2023.04.04

Updated by WirelessWire News編集部 on April 4, 2023, 06:06 am JST

世界中に実害をもたらした旧ソ連の原子炉付きレーダー衛星

レーダーという道具は、電波を発射し、対象物で反射してきた反射波を受信して対象物を観測する。この時反射波の強度は、レーダーのアンテナと対象物との距離の4乗に反比例する。

電波の強さは、距離の2乗に反比例して弱くなっていく。その電波が対象物で反射すると、今度は電波は対象物からの距離の2乗に反比例して弱くなっていく。つまりレーダーの送り出す電波と、対象物で反射して帰ってくる電波を比較すると、2乗のそのまた2乗で、距離の4乗に反比例することになるわけだ。

だから、レーダーの送信出力はなるべく大きくしなくてはいけないし、また受信アンテナも大きくて感度が高いものを用意しなくてはいけない。でないと、受信電波が弱くなりすぎて、システムとして成立しなくなる。

レーダーを搭載した衛星の場合、衛星は高度数百キロメートルの軌道から地球表面を照射することになる。この距離で十分な受信波の強度を得るのは、かつてはなかなかの難事だった。

一番単純な解決策は、衛星の軌道高度を低くすることだ。とはいえ、あまり高度を下げすぎると、今度は希薄な上層大気の空気抵抗を受けるので、衛星は短期間で地球に墜落してしまう。

1960年代から80年代にかけて、旧ソ連は、「US-A(Upravlyaemy Sputnik Aktivnyy:西側の呼称はRORSAT)」という船舶を監視する軍事用レーダー衛星を、高度250キロメートルという非常に低い高度に打ち上げて運用したことがあった。この高度だと、普通は空気抵抗でじきに衛星が落ちてしまう。そこでソ連は、衛星から大きな空気抵抗を発生する太陽電池パドルを取り去ってしまった。

その代わりに、なんと衛星にウラン燃料を使う原子炉を搭載し、レーダーが必要とする大電力を賄ったのである。RORSATの衛星は寿命が2-3カ月程度だった。寿命が尽きると、原子炉部分を分離する。分離した原子炉はロケットエンジンで高度800キロメートル以上の、空気抵抗がずっと小さな軌道へと送り込まれる。そこで何百年も地球を回っているうちに放射性同位体は半減期を繰り返して消えていき、地球に落下するころには無害になっているという設計だった。

確かに設計の筋は通っている、しかし、それはトラブルが発生しなければの話だ。1977年9月18日に、打ち上げられたUS-A衛星「コスモス954」は軌道上で故障を起こし、原子炉が分離できなくなった。同衛星は1978年1月24日に大気圏に突入して分解、放射性物質を含む破片は、差し渡し600キロメートルに渡って分散してカナダに落下した。発生した放射性物質汚染の除去作業には大変な手間を要し、カナダは旧ソ連に対して損害賠償を請求。1981年4月、旧ソ連はカナダに対して300万ドルを支払った。

1968年から88年までの20年間に旧ソ連は33機の「US-A」衛星を打ち上げたが、その中には打ち上げに失敗して北大西洋に落ちたものあり、故障で落下寸前に原子炉をなんとか分離して高い軌道に押し込んだものありで、様々な実害を世界に及ぼし続けた。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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