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イギリスは優れた借金返済術を編み出したのちに、世界の覇権を握った

2023.04.18

Updated by WirelessWire News編集部 on April 18, 2023, 06:17 am JST

莫大な軍事支出に耐えたからこそ、イギリスはリーダーシップを握ることができた

戦争のための出費が膨大になり、17-18世紀のヨーロッパで、国家支出に占める戦費の比率が急激に上昇した。この時代のヨーロッパ諸国を形容するに際し、もっとも適切な用語はおそらく「財政 = 軍事国家」であろう。

「財政 = 軍事国家」とは、その語のとおり、国家財政に占める軍事費の割合が非常に高い国家のことであり、具体的には18世紀のイギリスを意味した。戦時においては、イギリスの国家予算に占める戦費の割合は60パーセントを超えていた。1710年においては、国民所得に占めるイギリスの軍事費は9パーセントであったが、1760年になると14パーセントにまで上昇したのである。

もともと「財政 = 軍事国家」は、1989年にイギリス史家ジョン・ブリュアの著書『権力の腱』(大久保桂子訳『財政 = 軍事国家の衝撃』名古屋大学出版会、2003年)によって提唱されたものであり、現在では近世のヨーロッパ諸国を表す用語として、広く使用されるようになった。それは、国家予算に占める軍事費の支出が増えるのは、なにもイギリスにかぎられた話ではなかったからである。

しばしば忘れられるが、ブリュアの議論が出現したのも、ヨーロッパ的規模での財政史研究の発展があったからである。かつてシュンペーターが喝破したように、「財政需要がなければ、近代国家創成への直接要因は存在しなかった」とすれば、財政史研究こそ、近代国家形成の研究といえるのである。

イギリスが「財政 = 軍事国家」として存在しえたのは、莫大な軍事支出に耐えることができたからである。「軍事革命」で最大の成功を収めた国は、イギリスだったといえよう。「軍事革命」は近世のヨーロッパ全体におよんだ現象であった。そして「軍事革命」によって各国の軍事支出が急速に増大した。

ここから考えるなら、ヨーロッパ諸国が「財政 = 軍事国家」となり、そのなかでイギリスが最大の成功を収め、やがて大英帝国を形成したのである。イギリスがヨーロッパでもっとも成功した「財政 = 軍事国家」となったこと自体に、他のヨーロッパ諸国以上に帝国主義時代にリーダーシップを握りえた理由の一つが隠されていると考えるのが当然であろう。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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