写真:Laiotz / shutterstock
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「データの民主化」がもたらす具体的なメリットに、健康状態を把握し疾病の予防に役立てることができる点が挙げられる。住宅IoTプラットフォームの開発を手掛ける村上知久氏が解説する。
スマートホームを取り巻く状況は、発売当初の自動車とよく似ている
言うまでもなく、私たちの生活は常に技術の進歩に助けられている。現在では当たり前のように走っている自動車も、18世紀に発明されて以来、進歩に進歩を重ねて、なくてはならないものとなった。
そして今、人々の生活を支える技術の一つにIoTが挙げられる。実は、発明当初の自動車と現在のIoT、特にスマートホームの立ち位置は非常によく似ている。
36年前にNHKで制作された番組「コンピュータの時代 第1回」には和製OS「TRON」の生みの親である坂村健氏が登場した。坂村氏は番組内で「T型フォードが発売された頃の車はアクセルやブレーキの位置、エンジンの掛け方までメーカーや製品によってバラバラで誰もが使えるものではなかった」と話していた。
現在、スマートホームをとりまく状況も、これとよく似た状態にある。メーカーや製品毎にアプリがバラバラで利便性が非常に低いのだ。
スマートホーム・システムは、その便利さは世に知られていながらも、国内での普及率は2023年3月時点で約13%弱にとどまっている(ちなみにスマホの普及率は約90%)。しかも、この13%という数字には、AmazonEcho等のスマートスピーカーだけが家にある、という状態も含まれている。スマートスピーカーを除いた機器の普及率はたったの2%で全く普及していないといえる。
アプリやデバイスがまったくバラバラであるということだけが、スマートホームの普及率を抑え込んでいるとは言い切れないが、大きな要因になっていることは間違いないだろう。
エアコン一つ動かすのにいちいちアプリをダウンロードしなければならないのであれば、従来のリモコンで十分だということになる。テレビや照明をコントロールするために、いちいち別のアプリを立ち上げることは、果たして人の生活を便利にしているのか。IoTがもたらすものが利便性の追求なのであれば、いくつものアプリを導入し、いちいち人間が操作性を考慮しながら頭や指を動かさなければならないのはまったく理に適っていない。
求められるオープンプラットフォーム
では、どうすればこの課題を解決できるのか。方法の一つは、開かれた一つの環境に全てを集約することだ。言い換えると「オープンプラットフォーム」の存在が必要だということだ。前述の坂村氏も、基本的にはこの考えを軸にTRONや「ハウジングOS」を開発している。
民間企業の中にも、住宅特化型のオープンプラットフォームを自ら開発し、提供するプレイヤーが出てきており、スマートホームを単なる「ガジェット」ではなく、一般でも広く利活用できるインフラとして捉え始めている。スマートホームがオープンなプラットフォーム型のシステムに支えられれば、いよいよ誰もが使えるものへと変貌していくことになるだろう。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の前半部分です。
(超高齢化社会を救済する為のデータの続きを読む)
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