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5G SAの用途が拡大、広がるスライシング活用、FWAにも追い風

2024.12.26

Updated by Naohisa Iwamoto on December 26, 2024, 06:25 am JST

2024年第3四半期時点で、世界の5Gモバイル加入契約数は21億件に。そのうち5G SA(スタンドアロン)契約は12億件、2030年には5G SAが36億件にまで増加する--。エリクソン・ジャパンは、エリクソンモバイルレポートの2024年11月版について報道機関に向けて解説し、その中でモバイルサービスなどの最新動向を紹介した。

エリクソン・ジャパン CTOの鹿島 毅氏は「2030年の5G契約数は63億件を見込んでおり、そのうち約60%が5G SAで接続するだろう。その先には6Gの準備が進んでいて、2030年には早期展開する事業者が6Gサービスを開始する」と予想する。

モバイルネットワークのデータトラフィックは、伸び率が落ち着いてきているものの、依然として年率21%の増加を見せている。今後の予測では、2024年から2030年で、FWA(Fixed Wireless Access)も含むモバイルネットワークの総データトラフィックは約3倍と高い伸びを見せる。FWAを除いた同期間のモバイルデータトラフィックの伸びは、約2.5倍であり、FWA用途のトラフィックの伸びが全体の成長を牽引するとの予測だ。

FWAは世界中で伸びが継続している。2024年の世界のFWA接続数は、2024年の1億6000万から2030年には3億5000万へと増加する見込み。「この1年で開始された5G FWAの73%がヨーロッパでの伸び。先行した米国ではFWAに占める5Gの割合がすでに100%に達している。ヨーロッパは急進して、FWAに占める5Gの割合が50%を超えた」(鹿島氏)。

専用スライスで特定の通信を担保、FWAのマネタイズにも

今回のエリクソンモビリティレポートでは、特集記事の1つとして、5G SAについて解説を深めた。現在の5G SAのカバレッジとしては、北米、インド、中国が先行し、ヨーロッパや日本でも5G SAのカバレッジが拡大している。「5G SAを前提として、サービスにいかに機能につなげて提供していくかが課題」と鹿島氏は語る。

レポートでは、北米のT-Mobileの5G SAの活用事例として、物理ネットワークを仮想的に分割してサービスを提供できるネットワークスライシングの導入について解説した。「企業や政府がデジタライゼーション、DXを進めるに当たり、ローカル5Gのような専用のネットワークを作るだけでなく、広域のモビリティが必要なネットワークを求めた場合にネットワークスライシングが活用できる」(鹿島氏)。

ユースケースとして、T-Mobileの4つのスライスについて説明があった。1つはイベントなどの専用スライス。「T-Mobileでは決済用のスライスを提供している。スタジアムなど人が集まるところで通信環境の問題から決済ができないと機会損失が発生する。これを防ぐため、店舗の決済端末をスライスにつないで決済を完了できるようにしている」(鹿島氏)。今後、ユーザー体感を提供する用途やユーザー端末での決済などにスライスを提供することも想定される。

このほか、救急や消防などのファーストレンスポンダーに向けたスライスの提供、ビデオ制作の現場でテレビカメラのケーブルを廃止してワイヤレス化するスライス、エンタープライズ向けにセキュアアクセスを提供するスライスなどが実際に提供されているという。

また、トピックとして掲げたFWAと5G SAとの関係についても言及した。スウェーデンの通信事業者のElisaは、5G SAのネットワークスライシングを活用し、プレミアムFWAサービスOmakaista(Own Laneの意)を提供。これは、ネットワークスライシングによりElisaの専用レーンを作って、一般ユーザーの利用でスループットが低下する夕方以降などのピーク時にも、スループット低下を防ぐ価値を提供するもの。「顧客満足度の向上につながり、明確な差から料金の差別化、マネタイズを可能にする。日本でも今後スライシングの事例が登場すると考えている」(鹿島氏)と指摘した。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。

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