【MWC 2015】エリクソンが5Gの説明会を開催、1つのインフラで多様な産業の要求に応える柔軟なネットワークが目標
2015.03.03
Updated by Naohisa Iwamoto on March 3, 2015, 12:54 pm JST
2015.03.03
Updated by Naohisa Iwamoto on March 3, 2015, 12:54 pm JST
エリクソンはスペイン・バルセロナで開催中のMobile World Congress 2015(MWC 2015)で報道関係者向けに「5G」の説明会を開催し、同社の5Gへの取り組みやビジョンを説明した。
エリクソンでは約1年前から本格的に5Gのリサーチを開始し、方向性が見えてきたという。それは、「産業が変革する中で、多様な産業が要求する事項に対応するネットワークインフラが5G」だというもの。これまで、ネットワークインフラは産業界の多様な要求に対して、個別のインフラを提供していた。今後の5Gの世界では、1つのインフラとして見ることが重要だという。それぞれの産業に、それぞれの要求事項があっても、1つの5Gのインフラを適応する切り口で「スライス」する考え方で、個別の要求に対応できる柔軟性が必要だとする。
5Gは要求条件もまだ定まっていない。ユースケースとしては、ピークデータレートの高速化だけでなく、どこでもつながることや低遅延、ウエアラブルや自動車などのマシンタイプコミュニケーション、ミッションクリティカルなアプリケーションへの対応などが考えられる。デバイスの数も4Gの10倍以上になることが考えられる。そうなったときに、インフラとして必要なのは無線アクセスだけではなく、ネットワークシステム全体としての対応が求められる。5Gへのマイグレーション、クラウド化、ネットワークアプリの対応などが全体としてシステムを形作るという考え方だ。
技術的なポイントとしては、パフォーマンスを最適化しながら、大量のデバイスやトラフィックに対応することが挙げられた。そのためには、分散したデータセンターでクラウド化したインフラが必要になるという。ネットワークの機能を仮想化することで、柔軟に機能を分散したデータセンターに割り当てたり、機能の一元化や分散をリアルタイムで制御できるようにする。
5Gの無線アクセスは、革新が必要としながらも、LTEが重要なファクターになると指摘する。それは、5Gの幅広い要求条件を満たすには、LTEなどが現在までに使ってきた周波数帯と異なる今まで使われていない周波数帯の利用が不可欠だからだ。ただし、すべてが新しい技術に置き換わるわけではなく、既存の周波数帯ではLTEを進化させた手法を使いながら、新しい周波数帯では新しい無線アクセスの技術が求められるという。LTEの進化と
新しい技術を組み合わせることで、5Gの無線アクセスが成り立つというのだ。
また、コスト効率といった経済的な側面とエコロジーの両面でエネルギー消費の低減も要求されるという。5Gになりデバイスやトラフィックが急増した場合に、効率化を進めないとエネルギー消費も急増してしまうからである。その対応策として、ネットワークの利用が低い時はエネルギー消費量を制御できるような負荷適応型のネットワークの構築や、コアネットワークの仮想化などによりハードウエアの効率化を図ることなどが考えられるという。
ユースケースの多様化に対して、エネルギーの効率化も推進し、プログラミング可能なプラットフォームで産業の要求にスライスを最適化して応える--。こうしたネットワークインフラがエリクソンの考える「5G」の姿だ。5Gは2020年に商用化開始が見込まれている。ただし、2020年に「5G」が出来上がるのではなく、「5G」の要求に向かって進むジャーニーこそが、エリクソンの考える5Gの姿とだと説明会を締めくくった。
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登録はこちら日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。