未来の生活を変える技術にGPUはどう影響しているのか〜GTC 2015(GPU国際技術カンファレンス)レポート・後編〜
GPU Technology Conference 2015
2015.04.27
Updated by Yuko Nonoshita on April 27, 2015, 11:47 am JST
GPU Technology Conference 2015
2015.04.27
Updated by Yuko Nonoshita on April 27, 2015, 11:47 am JST
コンピュータの画像処理や描画に使われるGPU(Graphics Processing Unit/グラフィックスプロセッサ)をテーマにした、NVIDIA主催による国際技術カンファレンス「GTC 2015」(GPU Technology Conference)のレポート後編では、会場および展示ブースを中心に紹介する。会場内の展示エリアでは、様々なメーカーが出展する技術や製品、研究開発の成果が出展されており、GPUを利用した先端事例やデモを実際に見ることができた。
▼サンノゼのマッケナリー・コンベンションセンターで3月17日から4日間開催されたGTC2015ではGPUに関する最先端の話題を見ることができた。
▼展示会場ではNVIDIA以外にDellやCiscoなどの企業が出展し、技術関連のセミナーも開催されていた。
NVIDIAの展示コーナーではディープラーニング技術を使った自律運転自動車のシステムなどが注目を集めていた。自動運転車両用に開発されたコンピュータ「DRIVE PX」は、最大で12台の高解像度カメラからの入力信号に対し、最高で1.3ギガピクセル/秒もの処理が行える性能を持ち、ADAS(先進運転支援システム)に必要とされる画像処理を効率良く行う。障害物の検知ができるほか、すれ違う車種を認識するところまで技術開発が進められている。
▼NVIDIAの展示コーナーはディープラーニングやVR、ロボット、3Dプリンティングカーなどの展示で注目を集めていた。
▼数十日かけてパーツを出力して製作された3Dプリンティングカーは実際に運転することができる。
▼自動運転車両用に開発されたDRIVE PXで車体に取り付けられたられた複数のカメラの映像を同時に解析するデモなどが紹介されていた。
車載用コンピュータのNVIDIA DRIVEは、256コアで1テラフロップスという高い処理能力を持ち、省電力性に優れたTegra X1を2基搭載することができる。コクピット内の車載ディスプレイをはじめ、メータパネルやナビゲーションでリアルなCG表現も可能で、デジタルメーターのデザインツールなども合わせて提供されている。
▼省電力で計算パワーの高いGPUの搭載でディスプレイやナビの描画処理能力が向上し、テーマデザインの変更も自在にできるようになっている。
▼会場ではディスプレイシステムを搭載した車両が展示されていたほか、実際に運転できるプログラムも用意されていた。
GPUの高い計算能力はシミュレーションの世界でも活用されているが、特に都市建築物での応用が期待されている。建築物による日照計算をはじめ、反射率の高い建材によって駐車中の車が溶けるといった問題を起こす死の光線(Death Ray)を事前に知ることができるのだが、そうした計算をするために、建材会社が協力して事前に自社製品のシミュレーションデータをライブラリーに登録するという動きもあるという。
▼建築物シミュレーションではGPUを使ってほぼリアルタイムに求める計算結果が出せるようになり、結果的に使用できる建材のバリエーションが拡がったという話もあるという。
オートパイロット機能が必要なロボットやドローンなどにもGPUが採用されており、ParrotはInternational CESで発表していたGPUドローンの実機を展示。立体撮影用に小型カメラを2基搭載しており、撮影した対象物をリアルタイムで画像解析するデモを披露した。
▼Parrotがデモ展示していたGPU搭載のドローン。活用事例として飛行中に撮影した画像を3Dでリアルタイムレンダリングする機能が紹介されていた。
会場には、Googleの主催で民間による初の月面無人探査を行う「Google Lunar XPRIZE」の開発コンテストで、書類審査を勝ち残ったカーネギー・メロン大学のアストロボティック社が開発した月面着陸船「Griffin」と探索車両(ローバー)「Andy」も展示されていた。AndyにはNVIDIAのTegra K1が2台搭載されており、自動着陸システムで高い性能が発揮されることが期待されているという。他にも、様々な自律ロボットが展示されており、ロボット開発のジャンルでもGPUの搭載が今後主流になっていくことが伺われた。
▼Googleの月面無人探査機コンテストで運用が決まったアストロボティック社のローバー「Andy」にもGPUが搭載されている。
▼会場では複数の自律ロボットが出展されていた。
今回、初めての取材で全体的に感じたのは、学術的な難しい話題で多くが占めているものの、テーマそのものは意外に生活に身近なものが扱われているということ。会場では展示以外にポスターセッションのコーナーやワークショップ、ハングアウトのコーナーが設けられていたが、それらを見るとビッグデータや医療などの幅広い分野でGPUが使われ、特に自動運転や人工知能といった、注目を集めている分野ではGPUの性能が影響を強めているように感じられた。
▼会場ではその他にもポスターセッションのコーナーではGPUに関連する研究成果が各テーマ毎に展示されていた。
▼最終日前日の夜には参加者を対象としたパーティも開催され、開発者コミュニティの交流が深められていた。
NVIDIAは日本でも関連イベントの開催を予定しているほか、来年のGTCの会期もすでに発表している。GPUは参加業界やジャンルが拡がっており、これらのイベントが新しいビジネスやイノベーションのヒントを見つける場にもなっていきそうだ。
【参照情報】
・GTC 2015
・セッション資料
・NVIDIAジャパン ブログ
・Google Lunar XPRIZE
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登録はこちらフリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。