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時価総額の推移からみたアップルの「スティーブ・ジョブズ時代」 - Asymco

2011.09.29

Updated by on September 29, 2011, 13:14 pm JST

アップル(Apple)が10月4日に開催する特別イベントでは、ティム・クック(Tim Cook)CEOが発表の壇上に立つ。今年8月まで足かけ14年間CEOを務めてきたスティーブ・ジョブズ氏が、同社取締役会会長に就任したことを受けたものだが、この機会にジョブズ氏の指揮下でアップルがどう復活を遂げたかを、時価総額の面から改めて見てみたいと思う。

下の2つのグラフは、ジョブズ氏のCEO在任期間中(1997年第1四半期〜2011年第2四半期)のアップルと競合各社の時価総額の推移を四半期単位で表したもの。上のグラフが金額の絶対額で比較したものであるのに対し、下のグラフは各社が占める相対的な割合の変化を示している。

201109291310.jpg
[企業別時価総額の推移 (1997-2011) - 絶対額]

201109291311.jpg
[企業別時価総額の推移 (1997-2011) - 相対的な割合]

こうした比較分析は以前にもしたことがあったが、今回は新たに次の3社を比較対象に加えてある。

・コンパック(Compaq / 2002年にHPが買収)
・パーム(Palm / 2010年にHPが買収)
・アマゾン(読者からの要望が多かった)

この結果を踏まえ、私はジョブズ氏の在任期間を3つに時代に分けることができると考えている。

1. リストラ期(1997〜2000年)
1997年のはじめには、アップルの時価総額はどの競合企業よりも少なかった。同社の時価総額は1999年頃からほんのわずか増加し、そして2000年には一瞬大きく増えた場面もあったが、しかしこの頃の競合各社の増加ぶり -- その筆頭はなんと言ってもマイクロソフトだろう--と比べれば、とるに足らないほどの増え方である。この期間中の特に前半では、組織再編と経営の効率化が最優先されていた。またオリジナルiMac(1998年)やiBook(1999年)が投入され、製品のデザインや品質、"thinking different"の姿勢といった点についてその後に続く基本的なトーンが定まったのもこの時期のことである。

2. iTunes全盛時代(2001〜2006年)
中核事業を安定させ、黒字回復に成功したアップルは、2001年10月にオリジナルiPodを投入。iPodは、それ以前にリリースしていた音楽再生ソフト「iTunes」を補完するハードウェアだった。その2年後、アップルは「iTunes (Music) Store」をMacとWindows PC向けにリリースし、楽曲のダウンロード販売を開始。この時期の時価総額の変化には、音楽配信や携帯音楽プレーヤーという新分野への参入成功や、その波及効果によるMac関連事業の改善などが反映されている。大幅に増加したアップルの時価総額はその後HPやノキアのそれを追い抜くことになる。

3. モバイル端末/iOSの時代(2007〜2011年)
アップルの時価総額は、2007年のスマートフォン市場参入以降、さらに増加を続けた。ここで注目したいのは、2007年後半(CQ3/2007)に、比較対象となっている各社の時価総額の合計が2000年前後の「ネットバブル期」とほぼ同水準まで回復している点、そしてそのなかでアップルの占める割合がふた桁(10%以上)まで増えている点である。2008年から2009年にかけては、金融危機の影響で各社の時価総額が大幅に減少しているが、その2009年から2010年前半には急回復。アップルは2010年3月にiPadを投入したが、その後まもなく同社の時価総額はマイクロソフトを追い越して、いっきにIT関連業界トップに躍り出た。そして今年はエネルギー業界最大手のエクソンモバイル(Exxon Mobil)をも抜いて、時価総額で世界一の公開企業となった。

スティーブ・ジョブズ氏のCEO在任期間中、アップルの時価総額は年率平均42%のペースで増加したが、これは前例のない記録といえる。ジョブズ氏自身も認めているように、同氏がCEOに返り咲いた当時、アップルの手元には90日分の資金しか残っていなかった。その後14年間にわたって同社を率いたジョブズ氏は、この間にアップルを時価総額世界一の企業に育て上げた。株主価値の創出という点で、このジョブズ氏の業績にかなうほかの例を見つけるのは難しい。

(執筆:Dirk Schmidt / 抄訳:三国大洋)

【原文】
Visualizing the Steve Jobs era

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