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携帯電話端末市場の「見取り図」- Asymco

2011.11.02

Updated by on November 2, 2011, 21:37 pm JST

これまでに入手できたすべてのデータを組み合わせて、新しいグラフをつくってみた。過去3年間にわたる携帯電話端末市場の変貌ぶりがわかるかと思う。

201111022130.png
[メーカー別・タイプ別の出荷=販売台数推移(四半期毎)/ 縦軸単位:百万台]

上記のグラフのうち、青系統の色で塗りつぶされた部分はスマートフォン以外の端末、茶系統の部分は他社製OS(具体的にはほぼAndroid)を搭載するスマートフォン、そして緑系統の部分は自社製OSを採用するスマートフォンメーカーの出荷台数をそれぞれ示している。スマートフォンと非スマートフォンの両方に顔を出しているメーカーもいくつかあるが、右側の凡例で示すように、メーカー名の順番はいずれの場合も同じようにしてある。

このグラフから簡単に読み取れる点を以下に書き出してみる。

  1. スマートフォンの販売台数は急激に増加している。ただし、携帯電話機市場全体も同時に拡大している。全体に占めるスマートフォンの割合は、この3年間に14%から31%前後へと2倍強の増加を記録。いっぽう、スマートフォンの出荷台数は4000万から約1億2000万へと3倍に増えている。この3年間には非スマートフォンの販売台数は2億5800万台から2億7200万台へとほとんど増えておらず、市場全体の伸びの大部分がスマートフォンの増加によるものとなっている。
  2. 非スマートフォンの販売台数は、スマートフォンのそれに比べて季節変動の幅が大きい。全体に占めるスマートフォンの割合が高まり続けるなか、非スマートフォンの販売台数の変化がそのまま市場全体での増減につながっている。
  3. スマートフォンの市場では有名(ブランド)メーカーの数が大幅に増え、「その他」(Other)に分類されるメーカーの割合が小さくなっている。いっぽう、非スマートフォンの市場ではそれと反対の傾向がみられる。こちらの市場はノキア(Nokia)、サムスン(Samsung)の2大メーカー、それに「その他」の3つによる寡占傾向が強まっている。この対極的な流れは、携帯電話機市場における価値の在処の変化を示すとともに、どの領域で競争が激化しているかを示すものでもある。こうしたシフトを業界の成熟度を示す指標と捉えることもできる
  4. スマートフォン・メーカー各社にとっての事業の伸びしろ(成長の余地)は、青系統の色で塗り分けられた部分 -- つまり、まだスマートフォンを使っていない残り約70%の携帯電話ユーザーと考えられる。ただし、新規のスマートフォンユーザーが増えるなかで、ノキア(Symbian端末)とRIMのシェアは大きく減少している。またQ3(7-9月期)に低下したアップルのシェアは、iPhone 4Sが投入されたQ4(10-12月)には回復する可能性が高い。携帯電話機市場全体のなかでアップルが占めるシェアは2008年に比べて5倍に増えているが、それでもいまだに5%以下にとどまっている。
  5. ノキアがSymbianからWindows Phone OSに軸足を移したことで、ハードウェアとOSの両方を自社で開発するメーカーが(アップルとRIMの)2社だけになる。携帯電話市場の価値の在処がソフトウェアやサービスの領域へとシフトしているなかで、これはとくに気がかりな点に思える。ただ、ソフトウェアベンダーによるこの市場破壊(disruption)はまだ完全には終わっておらず、ハードウェアメーカーにもいくつかの打ち手がまだ残されている。たとえば、サムスンやノキアには非スマートフォンのユーザーが大量にいる。これらのユーザーをスマートフォンに乗り換えさせる際に、他社製OS(サムスンの場合はAndroid、ノキアの場合はWindows Phone)搭載製品を提供するのか、それとも自社製OS(サムスンはBada、ノキアは将来的に投入の可能性があるLinux)搭載端末を使うのかについてはまだわからない。

今後数週間かけて、携帯電話機市場に関するさまざまな指標を詳しく紹介していくつもりだが、その第一弾として今回説明した「見取り図」("landscape")で全体の感じはうまく伝わったかと思う。なお、このデータはAsymcoのクラウド(インタラクティブチャート)でも公開している。

(執筆:Horace Dediu / 抄訳:三国大洋)

【原文】
The Mobile Phone Landscape

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